【弁護士監修】老後に破産をせずに生活をおくるために、今知っておくべき現実と、対策とは?

老後破産という言葉がメディアを中心に、よく見聞きされるようになりました。一説によると、4割が老後破産状態にあると言われています。(http://biz-journal.jp/2015/02/post_9053.html)では、このような現実を踏まえ、一体、どのような対策をとっておくべきなのか?弁護士の音羽宏昭先生に聞いてきました。

1.老後破産に陥らないための対策とは?

1-1 老後に破産をしないためには?【貯蓄をすること】

現代において、老後に必要な生活資金は、1人当たり3000万円になるともいわれています。貯蓄が無い場合、生活費の不足、突然の出費(ケガ、病気など)に対応できず、借金に頼らざるを得ないケースが見受けられます。

1-2 老後に破産をしないためには?【生活水準を下げること】

老後においては、収入が減少するケースがほとんどです。しかし、破産をする方の中には、収入が減少してもそれまでの生活水準を下げられず、次第に貯蓄等を減らしていってしまう方が見受けられます。

1-3老後に破産をしないためには?【住宅ローンの返済を急ぐこと】

住宅ローンは、少なくとも毎月数万~数十万の負担となることから、家計において大きなウェイトを占める支出です。老後においてこのような支出を続けていかなければならない状況にあると、収入が一時的に途絶えたりケガ、病気による突然の出費があった場合に、家計が破たんするリスクがあります。

1-4老後に破産をしないためには?【資産形成を行い年金と退職金頼みにしない】

少子高齢化社会において、年金については受給年齢の引き上げ、支給額の引き下げが予想されることから、将来の生活資金としては非常に不安が多いといえます。また、退職金については、勤めていた会社が倒産したり、何らかの理由で支給されない可能性もあります。資産形成の為には、生命保険、不動産、株式など様々なものが考えれますが、リスク回避のためには、確実性の高い資産形成を考えることが重要です。

1-5老後に破産をしないためには?【生活設計を綿密に行い老後の費用を見積る】

老後に破産をしないためには、借金に頼らないことが重要であり、そのためには、収入の減少や不測の事態に備え、あらかじめ、必要な生活資金を見積もり、確実性の高い資産形成を行っていくことが重要といえるでしょう。

 

2.老後に破産をしてしまう現実

2-1 老後に破産をする現実は病気や雇用条件による給与所得の低下が原因

老後になって債務が高額化し破産をする方の多くは、給与所得が低下したにもかかわらず、十分な資産を形成できておらず、生活水準を下げられなかったり、キャッシングやクレジットカードでの購入に頼ってしまう傾向があるように見受けられます。

2-2老後に破産をする現実は住宅ローンの返済が完了していないこと

老後に住宅ローンの返済が完了していない場合、ローンを契約した当初に考えていた給与所得水準を維持できず、返済が滞り、生活費等をキャッシングで補うようになることがあります。

2-3 老後に破産をする現実は生活設計の見積もりを立てていない

老後破産に至る方は、老後を見越した生活設計をしていなかったり、不測の事態を考慮した生活設計をしていない場合が多いと考えられます。
介護費用等を含めた老後に必要な生活資金、ケガや大病への備えを含め、余裕をもって生活ができるような生活設計をしておかなければ、何か不測の事態が起こったときに、借金に頼らざるを得ず、破産に至る可能性があります。

3.老後に破産するしかない現実に直面したときの対策

債務が高額化し、返済が困難となってしまった場合、裁判所で破産手続きの申し立てを 行い「免責決定」を受けることによって返済を免れることができます。法テラスという機 関を活用し、民事法律扶助契約を結ぶことによって、弁護士費用の立替えを受けることも 可能です(立替えられた弁護士費用は、原則として後々返済する必要があります)。
ただし、破産申立ての直前に一部の債権者にのみ弁済を行ったり、支払いができないことを知りつつ借り入れを行ってしまうと「免責決定」をうけることができない場合もあります。
債務の返済が困難となった場合には、まずは弁護士会が運営する法律相談センターや法 テラスにて、弁護士に相談をし、適切な対処方法を知ることが重要です。

4.生活福祉資金貸付制度の利用をして、老後の破産対策を行う

様々な理由により経済的に困窮した方に向けて、一定の資金を貸し付ける「生活福祉資  金貸付制度」という制度が存在しています。貸し付け対象は、65歳以上の高齢者の属 する世帯、その他低所得者世帯、障害者世帯となっています。資金には様々な種類があり ますが、基本的な利息については、連帯保証人を立てる場合は無利子、連帯保証人を立て ない場合は年1.5%です。
65歳以上の高齢者の属する世帯では、生活資金等が不足したときに、民間の金融機関 から高額の利息で貸し付けを受けるより、無利息又は低利息の生活福祉資金を利用して生活資金を確保する方が、債務の高額化を回避しやすいと考えられます。

 

5.生活保護を申請して老後の破産対策を行う

収入が不足し、生活に困窮している場合は、生活保護を申請し、国から生活保護費を受給することが可能です。
生活保護は、多重債務に陥って破産をしなければならない状況であっても受給することが可能ですので、生活に困窮している場合には、例え借金があっても、迷わずに受給を検討してください。

【弁護士監修】相続に必要な遺産分割協議とは?相続争いを回避方法とは?

1.モメがちな遺産分割協議で相続争いを避ける方法とは?

相続争いが起きる原因は、以下のように整理できます。

・相続財産の範囲がはっきりしない
・私が被相続人の面倒を見てきた、あなたは財産をせしめているなどの過去の人間関係
(取り分についての過去の約束)

相続財産の範囲や約束した内容がはっきりしないなどの原因に対する一つの解決策として、遺産分割協議書という書類を作成し、この書類をもって合意とする方法があります。

2.早期に遺産分割協議書を作成することで無用な相続争いを回避

このように、遺産分割協議書の作成が有益なわけですが、特に、早期に作成することがトラブルを予防するためには大切です。
時間が経つほど、相続財産の範囲、内容、約束の内容などがあいまいになるし、争いが長引いてしまうからです。

3.遺産分割協議書とは

遺産分割についての合意内容を記載した書類のことです。

先ほど述べたように、トラブルを防ぐために作成しますが、このほかに以下の目的もあります。
・相続税申告書の資料とする
・相続登記の際の資料とする

そこでは、主に以下の事項を記載します。
・相続人と相続財産の確定
・どの相続人が、どの相続財産をどれだけ取得するか
・金銭で調整を図る場合など、遺産分割の方法

4.遺産分割協議書の作成の仕方

通常の文書で作成することもできますが、公正証書とする方法もあります。
相続人全員の協議が必要で、その手順などの詳細は、これからご説明します。

5.相続人を確定する

相続人の確定については、戸籍を取得し、その情報を用いて調査する方法をとります。
被相続人の戸籍については、出生から死亡するまでの全ての戸籍を取得する必要があります。
転居している場合、戸籍の附票が作成されますので、それを辿って様々な役所に取得の手続をしていくことになります。
これには相当な手間がかかりますし、容易でない場合もあり得ますので、専門家に依頼することも考えられます。

6.相続財産を確定する

代表的な相続財産についての調査方法をご紹介します。

不動産に関しては、管轄の役所で、いわゆる名寄せを行うことで、被相続人名義の不動産を全て洗い出します。
その上で、その不動産を管轄する法務局で、不動産謄本を取り寄せ、正確な情報を収集します。
預貯金については、銀行が分かっていて、支店や口座番号を調べたいという場合、相続人であれば、銀行に問い合わせをすることで、確認できる場合があります。

ただ、被相続人の死亡により本人名義の銀行口座は凍結されますし、通常、相続人を示す資料が必要だったり、複数の相続人がいる場合には全員の同意が必要となることも考えられます。
これは、銀行によっても取扱いが異なる可能性があるので、実際に銀行に問い合わせてみることが必要です。

7.相続する財産の目録を作成する

財産の調査がひととおりできたら、相続財産の一覧表を作ります。
これを目録といいます。

8.遺産分割協議書作成は相続人全員の同意が必要

遺産分割協議で、どの相続人が、どの財産をどれだけ取得するかについては、相続人全員で合意することが必要となります。
そのために、粘り強く話合いを続けることが大切です。

話合いを少しでもスムーズに進めるためのヒントになりそうなものを記載します。

・連絡役を決める
・司会進行役を決める
・書記を決めるなど、話合いの記録を残し、共有する
・基本的には、話合いは決まった期日に、全員で行う

最後の点は、期日以外で、一部の相続人の間だけで話してしまうと、出し抜いているのではないかといった疑念を持つ人が出てくるおそれがあり、そうなるとかえって話合いが混乱し、うまく進まなくなる可能性があるためです。

9.遺産分割協議書以外で遺産分割をする方法

こうして、粘り強く話し合ってみたものの、全員の合意にまでは至らないこともあります。
その場合、もう遺産分割はできないのかというと、そのようなことはありません。
手間や費用がかかってしまいますが、家庭裁判所で手続をすることで、遺産分割を進めることも可能です。
その手続の概略を次にご紹介します。

10.調停と審判

家庭裁判所での手続としては、基本的に、まず、調停をすることとなります。
調停というのは、話合いですが、調停委員という方々が調整役をしてくれることと、必要な時に、裁判官が務める調停官が関わることが、単なる話合いとは異なります。
この関わりにより、単に話し合っていた際と比べて、多少なりともスムーズに進むことが期待できます。
審判というのは、調停が成立しない場合に行われる手続です。
ここでは、お互いの立場からの主張、立証が行われ、判断が下されますので、この点では、訴訟に近い手続となります。
ただ、調停が成立しない場合、当然に審判に移行するもので、申立てをする必要はありません。

11.遺言書

これまで、協議による遺産分割や、調停や審判といった家庭裁判所での手続による遺産分割についてご説明してきました。
これらとは別に、遺言書があれば、遺言書で、どの相続人が、どの相続財産を、どれだけ相続するのかも明らかになり、基本的に、その定めによることになります。
もっとも、相続人全員が遺言書に反対している場合には、遺言書と異なる内容の遺産分割協議を行うことも可能です。

12.相続財産に土地や建物が含まれていた場合の遺産分割方法

相続財産に土地や建物が含まれている場合、遺産分割の方法としては次のものがあり得ます。

・現物分割:不動産それ自体について、誰が相続するかを決める方法です。
・代償分割:不動産を分割しつつ、価格のばらつきを金銭で調整する方法です。
・換価分割:対象の不動産を全て売却処分し、その代金を分割する方法です。

13.遺産分割をするときに注意するポイント

先ほども述べましたが、相続人全員の合意がないと遺産分割をすることができないという点には注意が必要です。
また、協議に当たっては、相続財産の一部だけについて合意することも可能ですので、全体的にまとまらなくても、まとまりそうな点から話合いを進めるという方法もあり得ます。

14.遺産分割協議書の作成を弁護士に相談する際のポイント

このように、遺産分割協議の進め方や、遺産分割協議書の作成については専門的な知識が必要です。
ご自身の利益を守るために、代理する権限がある、弁護士に依頼することが望ましいでしょう。
その際には、以下の点を押さえてご相談いただけると、より良いと思われます。
・相続人、相続財産、これまでの経緯など、分かる範囲で事実関係をまとめておく
・ご自身が望む条件をまとめておく

【弁護士監修】相続財産に不動産がある場合の遺留分の計算方法とは?

1.相続ってなに?遺留分ってなに?

人が死亡したとき、例外なく、相続が発生します。
相続とは、亡くなった人の財産が誰にも承継されず宙に浮いてしまうことを防ぐための、法律上のシステムです。
「誰に財産を譲り受ける権利があるのか」、「どのような割合で承継されるのか」といった相続に関するルールは、法律で定められています。

相続が発生した場合、まずは、相続の権利を有する人(相続人)同士で話し合いがされることになります。
この話し合いで財産の分け方が決まらず、事件が裁判所に持ち込まれた場合、裁判所は、最終的に法定相続分という割合によって財産の分け方を決めることになります。
亡くなった人の最後の言葉である「遺言」が存在している場合には、手続きの流れ方が異なります。
法律上、遺言には大変強い効力が与えられているため、原則として、その遺言の内容に従って財産は分けられることになります。
ただ、この遺言によって配偶者や子どもが全く財産を受け取れなくなる場合、法律は、生前の家族としてのつながりを重視して、配偶者や子どもに、一定の割合の財産を保証する制度を用意しています。それが、「遺留分」です。

 

2.不動産と遺留分

遺言等によって遺留分額をもらえなかった相続人は、遺言によって多く財産をもらった人に対し、「足りない分をよこせ」と請求することができます。これを、遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)といいます。

この請求によって、遺留分権利者は、遺言等によって他の人の手に渡ってしまった財産のうち、遺留分に足りない金額(遺留分侵害額)に相当する部分を、自分のものにすることができます。

この「自分のものにする」ということの意味ですが、まず、預貯金は1円単位で分けることができますので、遺留分額に足りない金額の支払いを求めることができます。

他方、不動産は簡単に分けることのできないものですので、遺留分の割合に従って、その共有持分を取得するということになります。
しかし、実際にその不動産を利用していない人にとって、共有持分はお金に換えられない、全く魅力のない財産です。
他方、実際にその不動産に居住している人にとっては、誰か別の人が共有持分を持っている家で生活していることに、少なからず気持ち悪さを感じるでしょう。

そこで、不動産に対して遺留分減殺請求がなされた場合も、その不動産の価値を評価して、その不動産を使いたい人が、遺留分を持っている相続人に対して、相当額を渡すという方法で解決が図られるのが実情です。法律上も、遺留分減殺請求を受けた側が、金銭を支払って解決できることが定められています。

遺留分は単なる「割合」にすぎませんので、それ単体から具体的な金額が導けるものではありません。
不動産を含む相続財産に遺留分割合をかけることで、初めて、具体的な遺留分の金額が出てくるのです。
不動産に対する遺留分減殺請求も金銭の支払いによって解決されているという実情に照らすと、不動産の価格の決定を避けて、相続紛争を解決するのは難しいということになります。

 

3. 遺留分の計算には時価を使う

前提として、相続財産の評価は時価にて行うとされています。
たとえば、亡くなった人の死亡時の預貯金残高を相続財産額の基準とする、といえば、お分かりいただけるかと思います。
問題は不動産です。

不動産には、預貯金残高のような絶対的な基準価格はありません。
不動産も、時価が財産評価の基準となるのですが、この時価というものが大変見えにくい点に大きな問題があります。
相続財産に不動産が含まれている事案で、解決まで時間がかかる大きな要因の一つが、この不動産の価格を巡る問題なのです。

 

4.不動産にまつわる様々な金額

先ほど、不動産価格に絶対的な基準はないと述べましたが、目安になる金額はあります。
相続税の計算に使われる国税庁の「相続税路線価」や、毎年の固定資産税の計算に使われる自治体の「固定資産税評価額」、不動産鑑定士が算出した国土交通省の「基準地価」といったものです。

これらは、いずれも、公的な機関が算出した金額なので、裁判所での手続きにおいても、信頼のおける金額として価格決定の参考にされることになります。

 

5.不動産の時価の評価方法

「相続税路線価」や「固定資産税評価額」は、税金計算に使われる金額であるため、時価よりも低い価格となっています。「相続税路線価」で時価の7割程度、「固定資産税評価額」で時価の8割程度とされています。「基準地価」は時価を超えるものもあるされています。

結局のところ、不動産の時価は実際に売ってみないとわからないのですが、実際に住んでいる人がいるなど、売ることができない場合には、先の公的な価格を踏まえて、時価を推測するほかありません。

不動産業者に簡易査定を依頼することもありますが、幅のある金額が示されることが大多数です。多くのケースでは、その幅の中で、互いが金額を合意し、遺留分額に歩を進めるということが行われています。

互いに、不動産価格の合意ができない場合には、裁判所が選任した不動産鑑定士が鑑定を行うということもありますが、この費用は、当事者の負担となります。

 

6.不動産を含む遺留分の計算方法は?

このようにして不動産の価格が決定すると、遺留分額の計算というステージに進むことができます。

遺留分額の計算では、概要、預貯金や株式の金額と不動産の価格をあわせ、そこから負債を控除し、相続財産全体の価格を決定することになります。
そうして決まった相続財産全体の価格に、遺留分権利者の遺留分割合を乗じて、遺留分額が決定されることになります。
この遺留分額のうち、実際に請求できるのは、遺留分額と取得できている財産額との差額(これを遺留分侵害額といいます)ということになります。

 

7.遺留分の割合は相続人の人数と関係によって異なる

法律上、誰が相続人となるかというパターンに応じて、遺留分の割合が定められています。法律で定められているパターンは以下のとおりです。

ご注意いただきたいのは、兄弟姉妹です。
兄弟姉妹は、遺留分を有していませんので、たとえば、「妻に全財産を相続させる」という遺言が存在している場合には、兄弟姉妹が相続人となるケースであっても、妻に対し、遺留分減殺請求を行えないということになります。

 

8.遺留分が侵害されていたときの対処方法

まずは、遺言等によって財産を取得した人に対し、遺留分減殺請求を行う旨の書面を送ることになります。

弁護士がこの通知する場合、①相手にいつ配達されたか、②どのような内容の通知が送られたかということを、日本郵便において記録してくれる「内容証明郵便」という方法を利用することが多いです。

なぜ、このような方式の郵便を使うかというと、遺留分減殺請求には、時間制限があるためです。
遺留分減殺請求は、遺留分侵害の事実を知ったときから1年間以内に行わなければならならないとされています。たとえば、「他の相続人にすべての財産を相続させる」旨の遺言(当然、有効であることが前提です。)を確認した日から1年以内です。

この期限を過ぎて行った遺留分減殺請求に法的効力はなく、遺留分侵害額の支払いを求めることができなくなります。
つまり、いつ通知が届いたかということが、法的効力の要となっているため、いつ配達されたかがわかる内容証明郵便を使うことが多いのです。

 

9.弁護士に相談するメリットとは?

自分の遺留分が侵害されているかどうか、侵害されているとしていくらが相当かという点を明らかにすることができます。
遺留分の侵害が明らかとなった場合、その後の通知の発送、交渉、(必要に応じて)訴訟提起を依頼することができます。
法律上、弁護士には、依頼者の代理人として訴訟手続きに関与することが認められていますので、相手が遺留分減殺請求に応じない場合や金額面で折り合えない場合に、速やかに次のステージに移ることができるという点は大きなメリットだと思います。

 

10. 弁護士には、いつ相談したらいい?

揉める揉めないにかかわらず、相続が発生したら、ひとまずご相談されることをおすすめします。
今回取り扱った遺留分の問題が生じていなくとも、相続には、他にも、自分にいくらの法定相続分があるのか、特別受益や寄与分の問題は発生するのか、といった難しい問題が内包されています。
相談のみであれば初回無料で行っている弁護士もいますし、相談したからといって必ず依頼をしなければならないわけでもありません。
今後の方針、見通しを固め、安心を得るためにも、早い段階で、専門家である弁護士のアドバイスを聞いておいて損ということはないでしょう。

【税理士監修】相続で信託を活用すると何ができる?具体的な活用事例

1.現行法規以上に、自分たちの想いを形にしやすい信託の活用事例

(1)資産運用と節税効果

相続対策として何をしておくべきか、お悩みの方は多いと思います。誰に何を渡すべきか、相続税がかかって遺族に十分な資産が残らないのでは、など悩みは尽きません。そこで生前対策に有効な信託についてお話しさせて頂きます。

信託とは、委託者が財産を第三者(受託者)に移転させ、その第三者が資産を運用することを言います。そしてこの信託から生じた利益を受け取る権利が信託受益権です。所有権はどうなるかというと、名義上は受託者に移り、委託者の財産から外れることになります。不動産を例にするとわかりやすいですが、信託財産として登記を行うと登記簿謄本に信託された旨が記載されます。

課税関係に関しては、相続税の計算対象外になるため税金はかからない、と耳にしたことがあるかもしれませんが、実際には信託受益権に対して贈与税または相続税がかかってきます。かからないのではなく、資産が受益権に変わったために評価方法と課税されるタイミングが変わってくる、と認識されるとよいかと思います。委託者自身が受益者となる自益信託の場合は、信託の設定時には課税関係は生じませんが、相続が発生した際に受益権が相続人に移ることになりますので相続税の対象となります。対して、委託者以外の者が受益者となる他益信託については、信託の設定時に委託者から受益者へ贈与があったとして贈与税の対象となります。

ただ、全く節税効果がないわけではありません。評価方法と課税時期が変わることを利用して相続税と贈与税の合計額を減少させることもできますし、一般社団法人を利用する節税スキームも存在します。さらに不動産を信託する場合は、信託登記に係る登録免許税がかかるものの、固定資産税評価額の0.4%と相続による所有権移転と同じ税額であり、かつ、その後の権利の移転も受益者を変更するだけで済み、変更登記費用も不動産1個につき、1,000円と低くなっています。不動産取得税もかかりません。設計さえ間違えなければ、効率的に資産を家族に移すことができます。

(2)子どもが小さなうちでもなどでも安心な財産管理としての信託

判断能力が十分に備わっていない子に財産を残したいという場合、信託は有効な手段となり得ます。

相続が発生すると、親権を持つ親権者がいれば親権者が、親権者がいなければ家庭裁判所で選任された未成年後見人が法定代理人となります。ただ、この法定代理人が自分が望んでいたように子のために財産を管理運営するかはわかりません。相続が始まってしまうと親族が相続人の代わりに財産を管理運営することになるのが通常ですので、親族に適任者がいない場合、事前に信頼できる人に信託しておけば、子に想定通りの利益を供与することができます。

その他、子や孫へ経済的な支援を行いたいが、まとめて渡してしまうと先に使い果たしてしまうのでは、と危惧されている方にも信託の利用がおすすめです。資金が必要となるタイミングで段階的に渡すことができ、ご自身が認知症になったり、お亡くなりになられた後でも有効です。ただし、一般的な生活費や教育費としての贈与であれば、社会通念上、過大な金額でなければ贈与税はかからないところなのですが、まとまった金額を信託するということになると、信託設定時に贈与税がかかるリスクがある点はご留意ください。なお、教育費だけを目的とする贈与であれば、教育資金贈与信託を利用すると1,500万円までは非課税となりますので、こちらもお勧めです。

ちなみに信託銀行に依頼してもよいのですが、費用が高くなってしまうため、家族信託を利用されるとよいかもしれません。その場合、受託者が浪費してしまう可能性もゼロとは言えませんので、司法書士や弁護士等の専門家に受託者を監督する役目を持つ信託監督人への就任を依頼されると安心です。

 

(3)誰に渡したいかを叶える受益者連続信託

信託を利用するメリットのひとつとして受益者連続信託があります。

遺言には誰が財産を相続するか指定する能力がありますが、財産を相続した者が次に誰に相続させるか(本人から見て「二次相続」といいます)までは指定することができません。指定できるのは一次相続までです。先祖代々、長男の家系が相続してきた財産があったとしても、どこかでその伝統が崩れることになったとしても不思議はありません。

そのような問題に対処することができるのが信託です。信託を設定すると受益権が発生することは先に述べましたが、この受益権は、信託条項の中で承継する者を先々まで指定することができます。

ただし、永遠に指定できるわけではなく、信託が設定されたときから30年経過後に、新たに受益権を取得した受益者が死亡するまでが有効期間となっていますので、その点はご留意ください。

 

(4)活用例

<ケース1:相続人が2名いる場合の不動産信託を使った争族回避>

不動産はそのままでは分けることができませんので、相続人が2名いる場合は、どちらか一方だけが相続するか、共有持分にする、もしくは売却して金銭で分けることになります。このような場合に不動産を信託し、受益者を2名かつ不動産から生じる収益を平等に受け取れるよう設定しておけば、不動産を残すこともできますし、争族のリスクは格段に減ります。なお、受託者を一般社団法人とする自益信託を設定することで相続税を減少させることもできます。仕組みとしては、信託受益権になっていますので、相続発生時の受益権に係る相続税は避けられませんが、一般社団法人には株という概念がありませんので、株式の相続というものがありません。そのため、収益を配分せずにプールしておいたとしても株式会社のような株価の上昇はなく、その上昇分には課税されないことになります。受益者を当該一般社団法人の理事にしておけば、受益者の意思で給与等として受け取ることも可能です。

<ケース2:特定の時期にお金を贈与するケース>

上記1.(2)で述べた、子や孫に金銭を贈与するケースを具体的に考えてみます。例えば、高校入学時、大学入学時、そして結婚式を挙げるときに金銭を贈与するとします。信託銀行に委託すると費用が高くなってしまうため、家族信託を用い、かつ司法書士に信託監督人を依頼することでコストカットを図ります。手続きとしては、信託契約を結び、受託者名義の信託口座を開設し、その口座に金銭を預けるだけで後はお任せです。簡単にご自身の意思を反映させることができます。

 

2.相続で信託を活用するメリット・デメリット

いろいろと述べさせて頂きましたが、主なメリットとしては①事業承継や二次相続指定(生前の財産の移転による相続の円滑化や財産の浪費等の想定外の減少を防ぐ)、②認知症対策(判断能力が衰えた場合でも信頼できる受託者が代理で財産を運用・処分可能)、③不動産に係る流通税の圧縮、といったところになります。

対してデメリットとしては、①節税対策になるかどうかはケースバイケースという点です。

相続税がかからなければ贈与税が、贈与税がかからなければ相続税がかかってきます。運用期間中の所得税の問題もあり、収益不動産を信託財産とした場合、その信託財産が赤字であったとしても他の所得との損益通算はできなくなってしまいます。

さらに②簡単に信託契約を変更したり、やめることができない、という点もデメリットになり得ます。

変更の多くには委託者の合意が必要ですが、委託者が亡くなってしまうと変更できる内容が少なくなってしまいます。委託者の地位も相続により承継できますが、消滅させることも可能です。例えば、受益者連続信託を設定したものの、不測の事態が起こったために相続人全員の合意を持って変更しようとしても、委託者が消滅してしまっていれば変更は難しくなります。

信託とはあくまで目的を最適化するひとつの手段であり、メリットを得られたとしても結果として税金が多くかかってしまう等、デメリットも当然にありますので、何を目的とするか(資産運用なのか、相続の円滑化なのか、節税対策なのか)をはっきりと認識された上で選択されることをお勧め致します。

 

 

3.相続で信託を活用したい場合の相談先は?

税金の問題は切っても切れませんので、最初から税理士に相談するのもよいですが、まずは信託に精通した司法書士や弁護士に相談されるのがよいかと思います。

全体像の設計と信託に係る法律面及びその実行に係る手続きを把握した上で、税理士にお尋ね頂ければ、メリット、デメリットを踏まえた最適なご提案ができると思われます。

【税理士監修】不動産を生前贈与するときの税率と効果的な節税の方法

平成27年1月1日以降、相続税の税率構造の見直し及び基礎控除が減額されたことによる相続税の増税が行われた一方で、贈与税は、高齢者の保有資産の現役世代への早期移転を促すために、直系卑属(20歳以上)への贈与に係る税率構造が緩和する特例が改正されました。
この改正により、今まで以上に生前贈与を活用した節税手段が有効になりました。
そこで今回は、不動産に着目した生前贈与についてご説明をします。

1.不動産の生前贈与にかかる費用は?税金の税率は?

1-1.生前贈与には贈与税がかかる

生前贈与とは、当事者(贈与者)の一方が自己の財産を無償で相手方(受贈者)に与える契約ことをいいます。
贈与税は、その贈与によって財産を取得した人に対して課される税金です。ここでいう財産に    は不動産も含まれますので、不動産の生前贈与を受けた受贈者は贈与税が課税されます。

1-2.生前贈与にかかる税金の種類とは?

不動産の生前贈与には贈与税の他に登録免許税及び不動産取得税が課税されます。

(1)登録免許税

不動産を生前贈与した場合、法務局で所有権の移転登記の手続きを行いますが、移転登記には登録免許税が課税されます。

固定資産税評価額×2.0%

(2)不動産取得税

不動産を取得した人は、不動産取得税が課税されます。

固定資産税評価額×4.0%

なお、土地及び住宅は標準税率が3.0%(平成33年3月31日まで)に減額される特例があります。
さらに、宅地については課税標準が固定資産税評価額×1/2(平成33年3月31日まで)になる特例もあります。
その他取得の状況により減額の特例がありますので、不動産取得税を計算する際には専門家にご相談下さい。

 

2.暦年課税贈与と相続時精算課税贈与とは?

生前贈与には、暦年課税贈与と相続時精算課税贈与の2種類があります。

(1)暦年課税贈与

暦年課税贈与とは、受贈者一人につき年間110万円(基礎控除)まで贈与税が課税されません。110万円を超えた額について、一定の税率により計算した贈与税が課税されます。

(2)相続時精算課税贈与

相続時精算課税贈与とは、60歳以上の父母、祖父母等の直系尊属(贈与者)から20歳以上の子、孫等の直系卑属(受贈者)への贈与について累計2,500万円(特別控除額)まで贈与税は課税されません。2,500万円を超えた額について、一律20%の贈与税を納付(仮納付)しますが、相続時に相続財産とその贈与財産を合算して相続税の税率で精算します。
なお、この制度を選択した場合、その選択に係る贈与者からの贈与を受ける財産については、その年分以降すべてこの制度が適用され、「暦年課税」へ変更することができません。

 

3.贈与税の税率の計算方法とは?

(1)暦年課税贈与

暦年課税贈与は、下記の算式に基づき計算されます。

(贈与税の課税価格-110万円(基礎控除))×速算表の税率-速算表の控除額

なお、平成27年1月1日以降、暦年課税贈与は『一般贈与』と『特例贈与』に分類されました。

特例贈与とは20歳以上の者(受贈者)が直系尊属(贈与者)から受ける贈与のことをいい、一般贈与とは特例贈与以外の贈与のことをいいます。

(2)相続時精算課税贈与

相続時精算課税贈与は、下記の算式に基づき計算されます。

(贈与税の課税価格-2,500万円(特別控除額※))×20%(一律)

※限度額は2,500万円になります。ただし、前年以前において既にこの特別控除額を控除している場合は、残額が限度額になります。

 

4.相続時精算課税贈与を活用した不動産の節税を図る方法とは?

相続時精算課税贈与を活用した不動産の一般的な節税方法を2つご紹介します。

(1)相続時精算課税贈与を活用した場合

相続時に、『相続財産』に『相続時精算課税贈与財産』を加算して相続税を計算しますが、その贈与財産は贈与時の価額で加算することとされ    ています。
例えば、贈与時は土地の評価額が1,000万円であったが、相続時はその土地の評価額が 3,000万円に値上がったとしても、相続税の計算では贈与時の評価額である1,000万円を加算で相続税して計算することになります。
したがって、将来、不動産の価値の上昇が見込まれている場合、上昇する前に相続時精算課税贈与を活用して不動産を贈与することは、有効な節税方法となります。

(2)利回りのよい収益不動産を所有している場合

賃料収入から諸経費等を控除しても手元の現預金が毎年増加していくケースはよくあります。このようなケースの場合、相続財産は年々増加することになります。
そこで、相続時精算課税贈与により収益不動産を贈与をすることで、将来にわたって増加する現預金(相続財産の増加)を抑制することができますので、利回りのよい収益不動産を相続時精算課税贈与することは、有効な節税方法となります。

 

5.不動産を生前贈与するために必要な手続きとは?

不動産を生前贈与するためには大きく分けて3つの流れがあります。

(1)贈与契約書の作成

生前贈与は、贈与者と受贈者で贈与契約書を作成して、書面で不動産を贈与した旨を残します。法律上、口頭による生前贈与も認められますが、特に不動産の生前贈与の場合は贈与契約書を作成することをお勧めします。

(2)不動産の名義変更手続き

不動産の名義変更をするためには、法務局で所有権の移転登記手続きが必要となります。提出書類が多いため、ここでは提出書類の詳細は省略しますが、移転登記の手続きが難しいと判断した場合には、司法書士に手続きを依頼することをお勧めします。

(3)贈与税の申告手続き

不動産の受贈者は、贈与を受けた年の翌年2月15日から3月15日までの間に贈与税の申告手続きと納税手続きが必要になります。なお、暦年課税贈与と相続時精算課税贈与では、贈与税の申告手続きの方法が異なりますので、これらの手続きが難しいと判断した場合には、税理士に手続きを依頼することをお勧めします。

 

6.不動産を生前贈与するメリットとデメリットはなにか?

6-1.メリット

(1)不動産の生前贈与のメリットは、生前に不動産を与えたい人に与えることができることです。
遺言書を作成しないで相続が発生した場合、相続人間で分割協議を行うため、被相続人の意図した人に不動産が移転できない可能性があるほか、遺言書を作成した場合でも、遺言書が無効になる可能性や争族になる可能性があります。
そのため、不動産を生前に渡したい人がいる場合、生前贈与は有効な手段といえます。

(2)前述したとおり、不動産に将来の値上がり益が見込まれる場合や利回りのよい収益不動産を所有している場合、将来の相続財産の増加を抑制する効果がありますので、相続税の節税手段として生前贈与は有効な手段といえます。

(3)暦年課税贈与の場合、毎年110万円の基礎控除があるため、5年かけて贈与した場合には一人当たり最大550万円まで贈与税が課税されない。

6-2.デメリット

(1)相続による不動産の移転と比較して、生前贈与による不動産の移転は登録免許税・不動産取得税が多く課税されます。

①登録免許税
生前贈与による不動産の移転は税率が2.0%であるのに対して、相続による不動産の移転は税率が0.4%と1/5になります。

②不動産取得税
生前贈与による不動産の移転は税率が4.0%又は3.0%であるのに対して、相続による不動産の移転は不動産取得税が課税されません。

以上のように、不動産の移転が贈与時か相続時かで、登録免許税及び不動産取得税は大きく異なります。

(2)不動産を生前贈与した場合、その不動産について相続時に小規模宅地等の特例制度を適用することができません。
なお、小規模宅地等の特例とは、被相続人が住んでいた土地又は事業をしていた土地について、一定の要件を満たす場合、評価額の80%又は50%を減額することができる特例です。したがって、小規模宅地等の特例が適用できる土地の生前贈与を検討している場合、贈与について慎重に検討する必要があります。

 

7.不動産を生前贈与するときの注意点

同じ不動産の移転でも、移転するタイミングにより各種税金の金額が異なる前述のとおりです。
したがって、実際に不動産の生前贈与を検討する場合には、贈与時だけの税金で比較検討するのではなく、
①贈与時の諸税金
②相続発生時までの各年の諸税金
③相続時の諸税金
をきちんと整理して、トータルで比較検討することをお勧めします。

【税理士監修】親の老人ホーム移転に伴う自宅売却にかかる税金と効果的な節税方法

ここ最近、相続において、信託を活用するという方法に注目が集まっています。

きっかけは、信託法の改正です。これにより、相続において、これまでは民法の規制に縛られ実現できなかったことが、信託法の改正によりやれる範囲が広がったのです。

信託を活用することで、これまでにできなかった相続税の節税や事業承継対策、これまで渡せなかった相手へ遺産を渡したり、遺産を一括ではなく少しづつ渡すということができるようなりました。

そこで、今回は相続における信託の活用方法を、事例を交えてご紹介させていただきます。

1.老人ホーム入居のため自宅を売却するときにかかる税金とは?

自宅を売却することによって利益が出た場合、その利益は譲渡所得として所得税の課税対象となり、不動産売却に伴う譲渡所得に対する課税は、他の所得と分離して行われます。

この譲渡所得は、土地や建物を売った金額から取得費、譲渡費用を差し引いて計算します。

取得費とは、売った土地や建物を買い入れたときの購入代金や、購入手数料などの資産の取得に要した金額に、その後支出した改良費、設備費を加えた合計額をいい、所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。

なお、土地や建物の取得費が分からないときや、実際の取得費が譲渡価額の5%よりも少ないときは、譲渡価額の5%を取得費とすることもできます。

また、譲渡費用とは、土地や建物を売るために支出した費用をいい、仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、売却するときに借家人などに支払った立退料、建物を取り壊して土地を売るときの取壊し費用などが該当します。

 

2.居住用不動産か否かで税制上有利に。その判断基準とは?

所有している不動産が居住用不動産に該当する場合、マイホームを売ったときの特例(3,000万円の特別控除)や、マイホームを売ったときの軽減税率の特例を受けることが出来るため、税制上大きなメリットがあります。

居住用不動産に該当するか否かについて、居住の用に供しているかどうかの判定基準を示す国税庁の通達(租税特別措置法通達31の3-2)が設けられており、その通達には次のように規定されています。

~引用開始~

「『その居住の用に供している家屋』とは、その者が生活の拠点として利用している家屋(一時的な利用を目的とする家屋を除く。)をいい、これに該当するかどうかは、その者及び配偶者等(社会通念に照らしその者と同居することが通常であると認められる配偶者その他の者をいう。以下この項において同じ。)の日常生活の状況、その家屋への入居目的、その家屋の構造及び設備の状況その他の事情を総合勘案して判定する。」

~引用終わり~

 また、この通達には、単身赴任をしているような場合でも、単身赴任が解消した場合に配偶者が居住のようにしている住宅で共に生活する予定である場合には、単身赴任者にとってもその住宅が居住に用に供している家屋に該当するとしていますが、一時的な目的で入居したと認められる家屋や、趣味、娯楽又は保養の用に供する目的で有する家屋は居住用不動産に該当しないとしています。

 ただし、注意書として、譲渡した家屋に居住していた期間が短期間であっても、その入居目的が一時的な居住でない場合には、居住用資産に該当する旨書かれていることから、売却時点で生活の拠点として利用していたという事実があればその入居期間は関係ないという事になります。

 

3.居住用の自宅売却には、3000万円特別控除を適用することで節税できる

 通常の不動産の場合、譲渡所得の計算は、譲渡価額-(取得費+譲渡費用)で計算されますが、居住用不動産の場合、そこから3,000万円の控除が受けられます。

 後に実際の数値を入れて考察しますが、最大で約1,200万円も節税できることになります。

 

4.自宅売却に伴う3000万円の特別控除を適用するための要件

 特別控除の特例を受けるためには以下の要件全てに当てはまることと、一定の手続きが必要となります。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm

~引用開始~

(1) 自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。なお、以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年目を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。

(注) 住んでいた家屋又は住まなくなった家屋を取り壊した場合は、次の2つの要件全てに当てはまることが必要です。

イ その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること。

ロ 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。

(2) 売った年の前年及び前々年にこの特例の適用を受けていないこと(「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」によりこの特例の適用を受けている場合を除きます。)。

(3) マイホームの買換えやマイホームの交換の特例若しくは、マイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。

(4) 売った家屋や敷地について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。

(5) 災害によって滅失した家屋の場合は、その敷地を住まなくなった日から3年目の年の12月31日まで(注)に売ること。

(注) 東日本大震災により滅失した家屋の場合は、災害があった日から7年を経過する日の属する年の12月31日までとなります(「東日本大震災により被害を受けた場合等の税金の取扱いについて(個人の方を対象とした取扱い)【東日本大震災に関する税制上の追加措置について(所得税関係)】」をご覧ください。)。

(6) 売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと。

   特別な関係には、このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。

また、この特例を受けるためには、譲渡所得の内訳書及び売った居住用家屋やその敷地の登記事項証明書を添付して確定申告をする必要があります。

 なお、マイホームの売買契約日の前日においてそのマイホームを売った人の住民票に記載されていた住所とそのマイホームの所在地とが異なる場合などには、戸籍の附票の写し、消除された戸籍の附票の写しその他これらに類する書類でそのマイホームを売った人がそのマイホームを居住の用に供していたことを明らかにするものの提出が必要となります。

~引用終わり~

 

5.自宅売却時に3000万円の特別控除を利用するために居住用の自宅と認められるためには?

 既に書きましたが、居住用不動産に該当するためには、売却時点で生活の拠点として利用していたという事実があればその入居期間は関係ないことになります。

 では、具体的にどのような場合が居住用資産に該当するのでしょうか??

 国税不服審判所の審判では、①家屋におけるガス及び水道の使用実績がなく、電気の使用量は極めて少ないこと、②家屋の窓ガラスが割れたまま放置され、複数の近隣住民が人の住める建物ではなかったと述べていること、③請求人が住民票上の住所をその家屋とは別の借家の所在地に置いていたことなどを理由に、家屋を真に居住の意思を持って、客観的にもある程度の期間継続して生活の本拠としていたとは認められないと認定しています。

 このことから、その家屋が生活に最低限必要な程度の大きさ・設備を備えていることが必要なのはもちろんですが、実際にそこで生活していた痕跡があるのか否かについても具体的に検討する必要があるといえます。

 

6.自宅売却に伴う3000万円の特別控除が適用される時とされない時にかかる税金の違い

 土地や建物の譲渡所得は、その土地や建物を5年を超過して保有しているか否かによって、長期譲渡所得と短期譲渡所得に分けられ、長期譲渡所得は短期譲渡所得に比べて低い税率が適用されます。

 それぞれの税金の計算方法は以下の通りです。

(1)短期保有で特別控除前の譲渡所得が2,000万円の場合譲渡所得の計算は、譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除によって計算されますので、以下のような8つのパターンで金額がどのように変わるかを検証してみましょう。

  1. 特別控除なし
  2. 特別控除有り

(2)長期保有で特別控除前の譲渡所得が2,000万円の場合

  1. 特別控除なし
  2. 特別控除有り

(3)短期保有で特別控除前の譲渡所得が7,000万円の場合

  1. 特別控除なし
  2. 特別控除有り

(4)長期保有で特別控除前の譲渡所得が7,000万円の場合

  1. 特別控除なし
  2. 特別控除有り

上の表からもわかるように、控除前の譲渡所得金額が3,000万円以上あるときは、短期譲渡所得の場合1,188.9万円(3,000万円×39.63%)長期譲渡所得の場合609.45万円(3,000万円×20.315%)も税額に差が出ることになります。

 

7.自宅売却しようとする不動産を10年以上所有していると軽減税率が適用される

 自宅を10年超所有してから売却する場合、10年超所有軽減税率の特例という制度が受けられます。

この制度は、居住用の不動産を譲渡(売却)した場合、その不動産を10年超所有していたのであれば譲渡所得の税金の税率が低くなる特例です。

具体的には下記の表のように税率が適用されます。

この軽減税率の特例を受けるには、次の5つの要件全てに当てはまることと、一定の手続きが必要となります。

(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3305.htm)

 

~引用開始~

(1) 日本国内にある自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地を売ること。

   なお、以前に住んでいた家屋や敷地の場合には、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること。

  また、これらの家屋が災害により滅失した場合には、その敷地を住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること。 (注) 住んでいた家屋又は住まなくなった家屋を取り壊した場合は、次の3つの要件全てに当てはまることが必要です。

イ その敷地は、家屋が取り壊された日の属する年の1月1日において所有期間が10年を超えるものであること。

ロ その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること。

ハ 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。

(2) 売った年の1月1日において売った家屋や敷地の所有期間がともに10年を超えていること。

(3) 売った年の前年及び前々年にこの特例を受けていないこと。

(4) 売った家屋や敷地についてマイホームの買換えや交換の特例など他の特例を受けていないこと。ただし、マイホームを売ったときの3,000万円の特別控除の特例と軽減税率の特例は、重ねて受けることができます。

(5) 親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと。

  特別の関係には、このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。

また、この特例を受けるためには、譲渡所得の内訳書及び売った居住用家屋やその敷地の登記事項証明書を添付して確定申告をする必要があります。

 なお、マイホームの売買契約日の前日においてそのマイホームを売った人の住民票に記載されていた住所とそのマイホームの所在地とが異なる場合などには、戸籍の附票の写し、消除された戸籍の附票の写しその他これらに類する書類でそのマイホームを売った人がそのマイホームを居住の用に供していたことを明らかにするものの提出が必要となります。

~引用終わり~

 

8.親が老人ホームに入居する前にしておくこととは?自宅は売却するべき?

<親の自宅の利用方法としては以下のことが想定できる>

各々ケースで有利不利があるので、個別の案件ごとに試算する必要があります。

有能な税理士に相談されたい

(1)売却する

  上記1~7を参照

(2)空き家として放置する

不動産からの収入は得られず、固定資産税やその他の維持管理費の支出だけがかさみます。

(3)子が親に代わって居住する、又は親と同居していた場合、引き続き居住する

使用貸借契約(家賃を払っていない契約)の場合には、適正家賃に相当する金額は、贈与税の対象になります。

(4)賃貸する

 ①不動産所得が発生します

  総収入金額-必要経費=不動産所得

  不動産所得がプラスの場合  所得税(総合課税)*1+住民税*2が課税されます。

   *1 所得税率は、5%~45%

   *2 住民税率は、10% 

  不動産所得がマイナス場合  給与所得や事業所得等と損益通算ができます

 ②相続時精算課税制度を利用して、親の生前に不動産を一定の金額まで子に贈与することに

より、不動産所得の帰属を子に変更できます。

  この場合、所得税率は累進税率なので、親と子の所得水準を考慮することが必要です。

 

<相続税対策が必要な場合の留意点>

(1)小規模宅地等の特例 

上記<親の自宅の利用方法としては以下のことが想定できる>ケースの(2)(3)(4)に該当する場合には、一定の条件を満たせば、相続税対策上、「小規模宅地等の特例」が適用できます。

①小規模宅地等の特例とは

個人が、相続又は遺贈により取得した財産のうち、その相続の開始の直前において被相続人等の事業の用に供されていた宅地等又は被相続人等の居住の用に供されていた宅地等のうち、一定の選択をしたもので限度面積までの部分(以下「小規模宅地等」といいます。)については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、一定の割合を減額します。

 

②老人ホームで最期を迎え、家は空き家だった場合

特例の対象は、被相続人が居住用に使用していた宅地です。しかし、被相続人が亡くなる時まで老人ホームに入居していて自宅は空き家だった場合、「住居用に使っていた宅地」と言えるのでしょうか。このケースでは、被相続人が「相続開始の直前」までに要介護認定等を受け、老人福祉法等に規定する特別養護老人ホーム等に入居していたなら、空き家でも住居用宅地に該当することになっています

 

③小規模宅地等の特例により評価減できる金額は、条件により異なります

被相続人等の事業の用に供されていた宅地等(小規模事業用宅地)の評価減は、条件により200㎡までの50%又は400㎡までの80%が減額できます。

被相続人等の居住の用に供されていた宅地等(小規模居住用宅地)の評価減は、特定居住用宅地等に該当すれば、330㎡までの80%が減額できます。

国税庁ホームページ

No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm

 

(2)建物を取壊し、その敷地の上にアパート・マンションを建設した場合

 ①上記(1)と同様に、条件を満たせば小規模事業用宅地の評価減ができます。

 その他の相続税節税メリットとして下記のものがあります。

 ②貸家建付け地の評価減(借地権割合×借家権30%)

 ③アパート・マンションの評価減(借家権30%)

 ④一般的に、アパート・マンションの時価 > アパート・マンションの相続財産評価額とな

  っています。

 借入資金によってアパート・マンションを建設した場合も節税効果が大きいので、相続税対

策として要検討項目です。  

 

【司法書士監修】成年後見人の持つ権利とは?遺産相続時にはどのような影響が?

1.成年後見人の持つ権利とは?

日本は高齢社会を迎えており、内閣府のデータによると、2016年の総人口に占める65歳以上の割合は約27%となっています。
(http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/html/gaiyou/s1_1.html)

高齢者の増加にともない、特に高齢の方々やそのご家族の間で、遺言や成年後見制度に対する認知度が高まっているのを感じます。

成年後見制度とは、判断の応力が不十分な方々に対して、法律面や生活面で保護・支援をする制度のことをいいます。
成年後見制度のうち、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者(民法第7条)が利用する成年後見においては、本人の保護・支援を行う人を「成年後見人」といいます。
成年後見人は、次のような権利を持っています。
・取消権(民法第120条)
・財産管理権と代理権(民法第859条)
・身上監護に関する権利

2.成年後見人は財産管理を行う権利を持つ

成年後見人はその管理が難しくなった本人に代わって、本人の財産を管理する権利を有しています(民法第859条)。
財産を管理する権利とは、成年後見人が本人の預貯金を管理することや、毎月の施設費用等の生活に必要な費用を支払ったりすること、保険や公共料金の支払いをすること等に加えて、不動産の管理や遺産分割協議等を本人の代わりに行うことも含まれるとされています。
ただし、居住用不動産を売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするときは、家庭裁判所の許可が必要となっており(民法第859条の3)、成年後見人が本人の財産につき、全てを自由に処分することはできない仕組みになっています。

また、原則として1年に1回、本人の財産状況を家庭裁判所に報告することが義務付けられており、財産を本人のために使用しているかどうかチェックをされることになっているため、当然のことながら本人以外のために本人の財産を使用することは制限されています。

3.成年後見人は身上監護を行う権利を持つ

成年後見には、本人の生活や健康を管理することに対して法律行為を行う権利(そして義務)があります。
身上監護とは、施設へ入居する際の契約の締結や施設費用の支払い、介護保険に関する手続きや入院の手続き等のことをいいます。
成年後見人が有する身上監護権とは法律行為に関するものであるとされているため、毎日本人と会ってデイサービスへ送り届けたり、本人の食事を作ったりするようなことまで義務付けられていません。
成年後見人が食事を作る義務はありませんが、本人が食事をできる状態にしなくてはなりませんので、必要に応じて訪問介護サービスを受けられるように契約をすることや、食事の宅配サービスを利用するための契約を締結することになるでしょう。

4.成年後見人になれる人は?

成年後見人になるためには特定の資格は必要とされていません。裁判所の公表しているデータによると、平成29年1月から12月の間に後見等が開始した事件のうち、成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)の全体の約26%は配偶者、親、子、兄弟姉妹及びその他親族となっており、司法書士、弁護士、社会福祉士の専門家が全体の約63%を占めているという状況になっています。
(http://www.courts.go.jp/vcms_lf/20180312koukengaikyou-h29.pdf)

成年後見人になるためには特定の資格は必要とされていませんが、誰でも自由になれるというわけではありません。
次の人は成年後見人になることができません。
・未成年者
・家庭裁判所に解任された法定代理人、保佐人、補助人
・破産者
・本人に対して訴訟をしている人、その配偶者、その直系血族
・行方不明者

5.成年後見人は遺産相続をする権利を有しているのか?

成年後見人は、あくまで本人のために代理して契約を行う等をすることができるという位置付けであり、当然のことながら本人自身ではありません。
本人が相続人となる相続において、成年後見人が本人に代わり相続財産を承継するということはありません。
なお、成年後見人には財産管理権がありますので、本人が相続した財産の承継手続きや管理を行うことができます。

本人と成年後見人の関係においては、成年後見人が本人の相続人でない限り、成年後見人という理由だけで本人の財産を相続することはありません。
同様に、本人が成年後見人の相続人でない限り、成年後見人の財産を本人が相続することもありません。

例えば、成年被後見人が「母」で成年後見人が「子」であるようなケースは、成年後見の話とは関係なく、法律上の定めに従って「母」の財産を「子」が相続することになります。

6.成年後見人が遺産分割協議をすることはできるのか?

相続人全員が遺産の分配方法を決める話し合いのことを遺産分割協議といいます。
遺産分割協議は相続人全員が参加しなければ有効に成立しません。
そのため、相続人のうち1名が「判断能力が欠けているのが通常の状態の方」だとしても、当該相続人を除いて残りの相続人だけで遺産分割協議を成立させることはできません。

さて、成年被後見人は法律行為をすることができず、遺産分割協議をすることは法律行為に該当します。
つまり、成年被後見人自身は遺産分割協議をすることはできません。

この場合、成年被後見人に代わり、成年後見人が遺産分割協議に参加をすることになります。

7.成年後見人が遺産分割協議をするためには

成年後見人は、本人に代わり他の相続人と遺産分割協議をすることができます。
成年後見人は、本人の財産を保護する義務がありますので、本人が全く遺産を承継しないような遺産分割をすることは成年後見人としての義務違反に該当します。

他の相続人に、自分が成年後見人であり遺産分割協議をする権利(義務)があることを示すには、成年後見登記事項証明書を提示するという方法が考えられます。

ところで、成年後見人と本人の利益が相反するときは、特別代理人の選任を家庭裁判所にしてもらわなければなりません。

例えば、父Aが亡くなったときに、その相続人が妻(子から見ると母)Bと子Cであるようなケースにおいて、母Bが成年被後見人、子Cが成年後見人だったとします。
相続人は母Bと子Cになりますが、母Bの代わりに子Cが遺産分割協議をすることができるとなると、子Cが自分が有利になる遺産分割内容とすることもできてしまいます。
このようなケースの状況を、母Bと子Cの利益が相反しているといいます。

特別代理人が必要かどうかは外形的に決まるため、子Cが、母Bに全て相続してもらおうと思っていたとしても、特別代理人の選任は必要です。

なお、遺産分割協議のために新たに成年後見の申立てをするときは、遺産分割協議の分割案を家庭裁判所に要求されることも少なくありません。

8.成年後見制度とはなにか?

認知症や知的障害等を理由として判断能力が不十分な方は、ご自身の財産を管理したり新たに契約をする等の法律行為をすることが難しい場合が少なくありません。

そのような方々を保護・支援するための制度が、成年後見制度です。

家庭裁判所に選任された成年後見人等は、その権限の範囲に従って、本人の代わりに法律行為を行ったり、本人が行った法律行為を後から取り消すことができます。

成年後見制度のうち法定後見制度には、本人の判断能力の程度等や状況によって後見・保佐・補助の3つに分かれています。

9.成年後見人を必要としている人はどんな人か?

成年後見制度を利用する人は、判断能力が欠けているのが通常の状態にある人で、財産管理や身上監護をしてもらう必要がある人です。

相続という場面においては、預貯金や証券、不動産等の遺産の相続手続をするとき、本人が受取人である生命保険金の請求をするとき、本人が遺産分割協議をするとき、本人が相続放棄をするとき、本人と生活を一緒に生活をしていた配偶者が亡くなったとき等に利用されるケースが多いのではないでしょうか。

前掲の家庭裁判所の資料(※上手くリンク等処理してください)によると、平成29年に申立てがされた後見開始等の申立ての理由としては、件数として多い順に「預貯金等の管理・解約」、「身上監護」、「介護保険契約」、「不動産の処分」、そして「相続手続」と続いています。

10.成年後見人を選任する方法は?

法定後見制度を利用する場合は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に後見開始の申立てをする方法によります。

後見開始の申立て書類の中に、成年後見人等候補者を記載する欄があります。
そこに記載された成年後見人等候補者がそのまま成年後見人に就任することもありますが、必ず候補者が成年後見人等になるとは限らず、家庭裁判所の判断によって専門家(弁護士、司法書士、社会福祉士等)が成年後見人等に選ばれることもあります。
近年は、専門家が成年後見人等に選任されるケースが多いことは前述のとおりです。

成年後見人等候補者に記載された人が成年後見人に選任されたが、それを監督する成年後見監督人が選任されるケースもあります。

11.成年後見人の種類には何があるの?

法定後見制度には、本人の判断能力の程度等によって「後見」「保佐」「補助」の3つがあります。
後見の対象となる方は「事理を弁識する能力を欠く常況にある方」(民法第7条)、保佐の対象となる方は「事理を弁識する能力が著しく不十分な方」(民法第11条)、そして補助の対象となる方は「事理を弁識する能力が不十分な方」(民法第15条)とされています。
どの制度を利用するかによって、それぞれ「後見人」「保佐人」「補助人」が家庭裁判所から選任され、これら成年後見人等はそれぞれその権限が異なります。

12.成年後見人には、任意後見人と法定後見人がある。その違いは?

成年後見制度には、「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つがあります。
法定後見制度は、既に判断能力が不十分となっている方に代わり、成年後見人等が本人のために法律行為をしたりする制度です。
一方で任意後見制度は、本人の判断能力が十分にあるうちに、将来判断能力が不十分になる時に備えて、後見人やその代理権の内容をあらかじめ後見人(となる人)と契約をしておく制度です。
判断能力が不十分である人が任意後見制度を利用することはできず、判断能力が十分である人が法定後見制度を利用することはできません。
任意後見制度の特徴は、判断能力が十分なうちに自分で自分の後見人となる人を選択することができる点にあります。
また、任意後見契約は公正証書で行う必要があること、本人の判断能力が不十分となった後に任意後見監督人が選任されてから後見がスタートすること、代理権等は任意後見契約で定められた内容に従う必要があることから、任意後見制度を利用される方は制度の内容を理解されてから利用されることをお勧めします。