【税理士監修】不動産を贈与するときにかかる税金と費用は?不動産を贈与するときの方法

不動産は持っているけどそのまま遊ばせているのはもったいないので、子どもに活用してもらいたいと考えている人は多いのではないでしょうか。

不動産を贈与するときに税金や費用はどのくらいかかるのか、どのような方法で贈与したらいいのかについてご紹介します。

なお、わかりやすくするために、両親と子ども一人(20歳以上)の家族で、現金2,000万円と土地2,000万円(時価)を持っている場合をモデルケースとしてご説明します。

1.不動産贈与には贈与税がかかる

 

民法では、「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」とされています。
例えば親が自分の土地をあげようと子どもに意思表示をし、子どもがそれを受諾すれば贈与は成立します。
贈与は個人から個人へ、個人から法人へ等色々なパターンがありますが、贈与税がかかるのは、個人から個人への贈与です。

贈与税の税率には「一般税率」と「特例税率」の二つがあります。
「特例税率」は、祖父母や父母(直系尊属といいます)からその年の1月1日に20歳以上の子や孫(直系卑属といいます)への贈与に適用され、それ以外の贈与は「一般税率」が適用されます。

「特例税率」の方が税率が低くなっており、今回のモデルケースでは「特例税率」で計算しています。

贈与税の一般的な計算方法は、まず1月1日から12月31日の間に贈与された財産から基礎控除額の110万円を差し引きます。
そして残った金額に税率をかけ、さらに控除額を差し引き決定されます。

例えば今回のケースの場合、現金2,000万円を子に贈与した場合の贈与税は、(2,000万円-110万円)×45%-265万円=585.5万円 となります。

土地2,000万円(時価)を贈与した場合、土地の評価額は時価ではなく路線価や固定資産税評価額に一定の倍率を乗じた額となります。
一般的に路線価は時価の70%~80%程度と言われていますので、70%と仮定して計算すると、(2,000万円×0.7-110万円)×40%-190万円=326万円 となります。

モデルケースの場合、2,000万円の現金を贈与した場合と時価2,000万円の土地を贈与したの場合の贈与税には259.5万円もの差が生まれます。

 

2.不動産を贈与するメリットとデメリット

 

このように、贈与する場合、同じ価値を持つ財産でも、現金よりも土地の評価額が低くなり、贈与税も低額になることから、土地の贈与のほうがメリットがあると言われています。
また、親の土地に自分で家をたてることも可能ですが、土地の贈与を受け家も土地も自分のものとすることにより、社会的評価が上がることもメリットの一つでしょう。

一方、デメリットもあります。
土地の贈与を受けてすぐに自分が住む家を建てる場合はあまりデメリットはありませんが、遠くに住む両親から土地の贈与をうけた場合、その土地に対する管理費用が必要となるとともに管理責任が生まれます。

また、現金での贈与であれば、贈与を受けた金額の中から贈与税を納めればいいのですが、不動産の贈与の場合は、手持ちの現金や預貯金から税金等を収める必要が生じます。

なお、通常の相続をした場合の相続税や各種費用の合計額と比較して贈与の場合が不利な場面が生じることもありますが、このことについては、後述します。

 

3.不動産を贈与するときの節税方法

 

次に、不動産を贈与するときに選択できる節税の方法、「相続時精算課税の制度」をご紹介します。

国税庁のホームページでは、次のように説明されています。
「相続時精算課税の制度とは、原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。」

適用対象者は、「贈与者は贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母又は祖父母、受贈者は贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の者のうち、贈与者の直系卑属(子や孫)である推定相続人又は孫」とされています。

贈与税の税額の計算は、「贈与財産の価額の合計額から、複数年にわたり利用できる特別控除額(限度額:2,500万円。ただし、前年以前において、既にこの特別控除額を控除している場合は、残額が限度額となります。)を控除した後の金額に、一律20%の税率を乗じて算出します。」とされています。

モデルケースの場合、現金2,000万円、土地2,000万円(時価)について、すべてこの制度を利用した場合、贈与財産の価額が(2,000万円+2,000万円×0.7)-2,500万円=900万円 となり、税額は、900万円×20%=180万円となります。

「相続時精算課税の制度」を活用しないで一括で贈与をうけた場合は、贈与財産の価額が(2,000万円+2,000万円×0.7)-110万円=3,290万円 となり、税額は、3,290万円×50%-415万円=1,230万円となります。

1,230万円-180万円=1,050万円という大きな違いがでてきます。

このように「相続時精算課税の制度」は贈与税という面だけ見ればいい制度ですが、実際は相続税や不動産取得税、登録免許税等を考慮して検討することが必要です。

モデルケースについていうと、例えば父親が亡くなった場合の相続税の基礎控除額が3,000万円+600万円×2=4,200万円となり相続税は発生しません。
相続税の精算時に払いすぎた分は還付されますが、相続税の申告書を提出しなければならず、無駄な手間が必要となります。

また、不動産取得税についても考えなければなりません。
相続の場合は不動産取得税は課税されませんが、贈与の場合は不動産取得税が課せられます。
税額は3%ですので、2,000万円×0.7×3%=42万円となります。

さらに登録免許税額も違いがあり、相続の場合は0.4%であるのに対し贈与の場合は2%となりますので、2,000万円×0.7×(2%-0.4%)=22.4万円の差が生まれます。

贈与される土地の評価額や相続財産、相続人の数等によっていろいろなパターンがあるので一概には言えませんが、単純に「相続時精算課税の制度」を活用したほうがいいとは言えません。

 

4.不動産を贈与するときの節税の種類

 

「相続時精算課税の制度」以外にも節税に利用できる制度があります。

「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」という制度があります。
直接土地等の不動産を贈与するのではなく、例えば土地を売却してその売却した得た現金を

子どもに贈与する方法です。

直系尊属から自分が住む住宅の新築や増改築等の対価に充てるために、贈与を受けた年の1月1日において、20歳以上である直系卑属が贈与をうけた場合、贈与税が一定額非課税となる制度です。
平成30年現在、省エネ等住宅以外の住宅で、700万円まで非課税となっています。

また、「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」という制度もあります。
「婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例」です。

両制度とも、詳しくは国税庁のホームページでご確認ください。

 

5.不動産を贈与する時の手続方法

 

不動産を贈与するときは、一定の手続きが必要です。
まず、贈与契約書の作成を行い、次に不動産の名義変更登記、そして、贈与税の申告を行います。

 

6.不動産の贈与手続きは贈与契約書の作成を行う


不動産の贈与は、贈与するという意思表示(申込み)とそれを受けるという意思表示(承諾)が必要です。
当事者の間では書面は必ずしも必要ではありませんが、所有権移転の登記をする際には必要となります。

法務局のホームページには、贈与契約書の例が載っていますので、それらを参考に作成すればいいでしょう。

 

7.不動産の贈与手続きには名義変更登記を行う

 

次に、所有権の名義変更登記を行うことが必要です。
まず、登記申請書の作成です。
登記の目的、原因、権利者、義務者、課税価格、登録免許税、不動産の表示といった項目を記載する必要があります。
また、添付情報として登記識別情報(又は登記済証)、登記原因証明情報、代理権限証明情報、印鑑証明書、住所証明情報等が必要となります。

 

8.不動産の贈与手続きには贈与税の申告を行う

 

そして贈与税の申告が必要です。
国税庁のホームページには、「贈与税がかかる場合及び相続時精算課税を適用する場合には、財産をもらった人が申告と納税をする必要があります。申告と納税は、財産をもらった年の翌年2月1日から3月15日の間に行ってください。」とあります。
 また、相続時精算課税については、「相続時精算課税を適用する場合には、納税額がないときであっても財産をもらった年の翌年2月1日から3月15日の間に申告する必要があります。」とされていますので注意してください。

また、同ホームページには、「贈与税の申告のしかた」や「贈与税の申告書等の様式一覧」もありますので、これらを参考に申告を行うことができます。

なお、お忙しい場合も多いかと思いますので、登記や税務申告については司法書士や税理士等にご相談するのもいいかもしれません。

 

9.不動産の贈与をする時の注意点

 

これまで述べてきたとおり、不動産の贈与には注意すべき点がいくつもあります。
特に「相続時精算課税の制度」を活用するかどうかについては、相続税、不動産取得税、登録免許税等、相続との関係でさまざまなケースが考えられますので、いろんな観点から検討していくことが大切です。

【司法書士監修】不動産を相続する時に必要な書類とは?

不動産を相続する際には、最終的に相続登記を行う必要があります。そのためには様々な書類が必要となり、何から手をつけたら良いのか不安に思われる方もいらっしゃると思います。

今回は、不動産を相続した場合に必要な書類やその作成方法について解説します。

 

 

1.不動産を相続する時に必要な書類とは?

相続における一般的な流れは、次のようになります。その際関係する書類を「」で示します。

 

① 遺言書の確認

まずは遺言書があるかどうか確認します。遺言書には、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。

遺言書が有効で具体的に相続財産について決められていれば遺産分割協議は必要ありません。

 

② 相続財産の確認

次に相続財産を確認します。相続財産には現金、土地、生命保険などのプラスの財産と借入金等のマイナスの財産があります。

 

不動産を相続するためには、被相続人名義の不動産を特定する必要があります。

被相続人名義の不動産を特定するには、「権利書」や「登記識別情報」がないか調べましょう。

市町村から送られてくる「固定資産税の納税通知書」も確認しましょう。ない場合は、市町村役場に行って、手数料はかかりますが「固定資産評価証明書」を取得しましょう。

次に、法務局に行き「登記事項証明書」を取得してください。その不動産に関する権利情報を得ることができます。

 

③ 相続人の確定

相続人の確定も重要です。子どもも知らない両親の過去があることも珍しくはありません。

「戸籍謄本」、「除票」等で確認します。

 

④ 遺産分割協議を行う

遺言がなかったり、一部の相続財産しか遺言で指定されていない場合には、相続人全員で被相続人の遺産の分割方法について、協議をして決めることが必要です。

土地や家を相続するにあたっては、誰がどの土地・家を相続するのか、1人で相続するか複数人で相続するかなど、具体的に決めることが必要です。

 

⑤ 「遺産分割協議書」の作成

分割協議が整ったら、その内容を遺産分割協議書として書面にします。遺産分割協議書は不動産を相続して所有権移転登記を行ったり、預金を相続する場合等に必要になります。

 

2.相続登記とは?

相続登記とは、相続財産である不動産の登記名義を被相続人(故人)から相続人へ名義の変更を行なうものです。

 

相続は、被相続人(財産を残す人)の死亡により始まります。そして、相続が始まると相続財産は相続人の間で「遺産共有」の状態になります。ここで、共有とは、複数人が同一の物を同時に所有することをいいます。

不動産を個々の相続人に帰属させるためには、相続財産の帰属や配分を定める遺産分割の手続が必要となり、遺産分割によってのみ遺産共有状態を終了させることが出来ます。

遺産分割の結果、不動産を取得することになった相続人は、その者個人の名義に不動産等の移転登記をすることが可能となります。

 

3.不動産の相続登記に必要な書類

不動産の相続登記に必要な共通の書類を以下にまとめます。

 

登記申請書登記の目的、原因、権利者、義務者、課税価額、登録免許税、不動産の表示といった項目を記載する必要があります。

 

添付情報

被相続人(亡くなられた方)に関する書類
被相続人の出生から死亡までの戸籍相続人を確定するためです。

被相続人に他の相続人が知らない子供がいる場合があります。そのため、出生から死亡までの全ての戸籍を遡る必要があります。

被相続人の住民票の除票または、戸籍の附票の除票被相続人を特定するためです。

住所と氏名及び本籍地で被相続人であることが間違いないことを特定します。

相続人に関する書類
相続人全員の現在の戸籍謄本若しくは戸籍抄本相続人であること及び相続人が現在も生存していることを証明するためです。
相続人全員の住民票相続人の住所を特定するためです。
相続人からの委任状司法書士に手続を一切委任する場合に必要となります。
不動産に関する書類
相続する物件の登記簿謄本相続登記申請の前に、不動産を特定したり、被相続人名義の不動産かどうかを確かめたりするためです。
固定資産評価証明書登録免許税を算定するための資料です。

 

4.法定相続分ではない登記をする場合に必要となる書類

被相続人名義の不動産を、法定相続分通りの共有名義で登記するときは、法定相続人の全員が登記申請人になります。相続人の一人から単独で登記申請することも可能ですが後々のトラブルを避けるためには、避けた方が無難です。

 

法定相続分でない登記をする際、遺言書によって相続される不動産が特定されいる場合は遺言書が必要です。

 

遺言書がない場合には、相続人全員によって遺産分割方法が合意されたことを書面に記した遺産分割協議書が必要となります。

 

5.遺言書がない場合に必要となる書類

遺言書がない場合には、法定相続分で登記する場合以外は、遺産分割協議書が必要となります。

 

6.遺産分割協議により相続する場合

 

遺産分割協議により相続する場合は、相続人全員によって遺産分割方法が合意されたことを書面に記した遺産分割協議書が必要です。相続人を1人でも除外して行った遺産分割は無効となってしまいますので注意してください。

 

遺産分割協議書に記載する項目の主なものは次のとおりです。

1 被相続人の名称

2 死亡日

3 本籍地

4 合意した旨の記載

(平成○年○月○日、被相続人○○○○の死亡によって開始した遺産相続を、○○○○の相続人全員で遺産分割協議を行った結果、下記のとおりに遺産を分配、取得することに合意したことを認める。)

5 分配、取得の内容

(不動産の場合・相続者・所在地、地番・家屋番号・種類・構造・床面積 等)

6 相続者全員の署名及び実印の押印

 

遺産分割協議書は、相続人全員が署名し実印を捺印し、相続人それぞれが相続人それぞれが保有します。また、将来の争いを避けるため、遺産分割協議書を公正証書にすることも一つの方法です。

 

7.遺言書がある場合に必要な書類

遺言書によって相続される不動産が特定されている場合は遺言書が必要です。

自筆証書遺言については、必要な事項が書かれていなかったり書き間違えがあったりして遺言書として無効になる事例も多いので注意が必要です。

なお、公正証書遺言以外の遺言書の場合は、家庭裁判所の検認を経る必要があります。

 

8.相続放棄者がいる場合に必要な書類

民法第939条に「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。」という規定があり、相続を放棄することができます。

相続登記をする際に、相続人の中に相続放棄をした人がいる場合は、「相続放棄受理通知書」が必要となります。

 

 

9.不動産の相続登記の期限とは?

法律上、相続登記を完了しなければならない期限は定められていません。

しかし、年月が経過することにより、相続人の方にも相続が発生することがあり、それにより相続人の数が増えていく可能性があります。相続人の数が増えれば増えるほど遺産分割協議がまとまらなくなる可能性があります。相続登記は早めに済ませましょう。

 

また、相続税がかかる場合、相続を開始したときから10ヶ月以内に納めなければなりません。そして、その間に遺産分割協議が成立していないと、各相続人が法定相続分の割合により財産を取得したものとして相続税の申告をすることになります。そうすると、税金の軽減措置について利用できないものが出てくるので、節税するためにも、相続開始後10ヶ月以内に遺産分割を成立させ、相続登記を済ませることが得策でしょう。

 

10.まとめ

遺産分割をし、相続登記をするためには多くの書類を収集し、または書面を作成する必要があります。日々の生活や仕事をこなしながらそれらをすることは、大変な労力が必要です。

あまり一般的ではありませんが、戸籍を収集する過程で数十人の見知らぬ相続人が発生する場合があり、段階的解決方法を経ることで紛争を発生させずに解決することも可能で、実際に弊所では同様の解決事例が複数ございます。ただし、個別具体的な事情をお聞きしてからでなければ、不正確なアドバイスと

なりかねませんので、この点につきましては、よろしければ直接お問合せください。

専門家である司法書士の手を借りることにより、迅速にそして正確にそれらを行うことができますので、今現在悩んでいる方は一度司法書士事務所に相談に行くことも検討ください。

 

[1] 検認とは遺言書の保管者が相続開始後遅滞なく提出した遺言書について家庭裁判所がその存在及び内容の確認をすることを言います。相続人に対して遺言書の存在を明確にして、遺言書の偽造を防止するためのものです。

 

参考文献

高橋 朋子・ 床谷 文雄 ・ 棚村 政行 (著)(2014)『民法7 親族・相続 』有斐閣アルマ

前田 陽一 ・本山 敦 ・ 浦野 由紀子 (著)(2017)『民法6 親族・相続 第4版 (LEGAL QUEST)』有斐閣

潮見 佳男(著)(2017)『民法(全)』有斐閣

【司法書士監修】土地や家屋を相続する時の方法とは?税金の節税方法はあるの?

人は生まれたら必ず死を迎え、相続が開始されます。相続財産の中に不動産が含まれていることも多いはずです。

不動産は現金のように単純に分割することができず、資産価値が高額になることも少ないことから遺産分割についてトラブルに発展するケースも出てきます。

不動産を分割するには特に注意が必要です。残された人々で不要な争いをさけるためにも、不動産の分割方法や節税の方法についてご紹介したいと思います。

 

1.土地や家屋(不動産)を相続する時の方法とは

被相続人(財産を残す人)の死亡により、相続が始まります。

相続が始まると相続財産は相続人の間で「遺産共有」の状態になります。ここで、共有とは、複数人が同一の物を同時に所有することをいいます。

不動産を個々人に帰属させるためには、遣産の中の個別の財産の帰属や配分を定め、相続人個々人の所有にするという遺産分割の手続が必要となります。

遺産分割の結果、不動産を取得することになった相続人は、その者個人の名義に不動産の移転登記をすることが可能となります。

 

2.不動産を分割する

遺産共有状態とはあくまでも、暫定的な相続財産の帰属状態です。相続財産が個々人に帰属するためには、遺産分割の手続きを経なければなりません。ここで、不動産の分割について説明します。  

 

2-1.不動産を分割する時の種類

まず、不動産を分割する時の種類として、現物分割、代償分割、共有、換価分割の4つがあります。それぞれどのような方法で、どのようなメリット・デメリットがあるのか説明します。 

 

2-1-1.現物分割とはなにか

現物分割とは、不動産を相続人の1人がそのまま現物でその不動産を取得することをいいます。

         

2-1-2.現物分割をするメリット・デメリット

現物分割のメリットとしては、財産の形を変えることなく分配することができること、家や土地(不動産)を売却したり、相続人同士で金銭のやりとりをしなくてよいことです。

 

一方、デメリットとして不動産は現金と違って分割することが難しく、相続人に平等に分けることは困難なことです。

平等に財産を分割することができないときには相続人同士で合意することができず、ほかの分割の手段を採用せざるをえない場合があります。現物分割ができるのは、相続人全員が納得している場合に限られます。これが現物分割のデメリットです。

  

2-1-3.代償分割とはなにか

代償分割とは特定の相続人が不動産を取得し、他の相続人に対してその相続持分を超過した部分につき代償金を支払う方法です。

例えば、3000万円の土地があり、その土地の相続人は兄弟3人だったとします。本来ならば、兄弟それぞれ遺産の相続分は3分の1ずつなので、長男が土地を取得すると、代償金として次男及び三男にそれぞれ1000万円ずつ金銭にて支払をします。 

 

2-1-4.代償分割をするメリット・デメリット

メリットとしては、分割することができない、または分割することに適さない不動産をそのままの形で相続することができ、代償をすることにより、公平な相続を達成することが出来ることです。

 

デメリットとしては、代償金を払う資力がなければ、不動産を相続することができないことです。また、相続人間で金銭をやりとりしなければいけないため、約束通りに金銭が支払われないなどのトラブルが発生することがあります。

 

2-1-5.共有分割とはなにか

現物のまま、複数の相続人が自己の持分(共同所有の割合)を有しながら、1つの物を共同所有することをいいます。

 

2-1-6.共有をするメリット・デメリット

メリットとしては、不動産の現物の形を残しながらも平等に分割することができることです。各共有者は自己の持分を自由に処分することができ、また持分に応じて不動産を使用収益することができます。

デメリットとしては、共有物の変更、処分には共有者全員の同意が必要な点です。したがって、不動産そのものを売却したいと考えても他の共有者と話し合い、全員の合意がないと売ることができません。

 

2-1-7.換価分割とはなにか

 

不動産を売却して金銭に換えて相続人で分けることをいいます。

 

2-1-8.換価分割をするメリット・デメリット

 

メリットとしては、金銭に換えることにより相続人間に平等に相続させることができます。

 

デメリットとしては、相続人のなかに相続財産の不動産に住むことを希望する者がいたり、特別な思い入れを持っている者がいる場合には、換価分割は利用できません。

また、現物を残せないことや、不動産を売却する際の手数料や税金などにより、相続財産が目減りしてしまう可能性があります。

 

3.遺産分割協議を行う

先にも述べたように、共同相続人は、相続分の割合で遺産を共有します。しかし、遺産共有状態は一時的・暫定的な状態であるため、最終的に各相続人に遺産を帰属させるためには、遺産分割をしなければなりません。

遺産分割には①遺言によって分割方法が指定された指定分割②協議による分割③調停による分割④審判による分割があります。

 

①遺言がある場合、遺言書に記載している内容に従って遺産分割をします。

 

②遺言書がない場合には、相続人全員で話し合い、遺産分割の方法について、相続人全員の合意が必要です。相続人を1人でも除外して行った遺産分割は無効となってしまいます。

したがって、相続人に漏れがないよう調査することが必要となります。遺産分割の方法が決まったら、相続税の申告や相続登記に必要となる遺産分割協議書を作成します。

 

③協議によって分割方法が決められない場合には、家庭裁判所において家事調停で遺産分割を行います。調停手続は、家事審判官(裁判官)と調停委員で組織される調停員会によって行われます。これは、中立公正な立場で当事者双方から事情を聴き、調整に務め、時には解決案を提示し、必要な助言をし、話し合いにより遺産分割の合意を目指すものです。

④話合いがまとまらず調停が不成立になった場合には審判手続に移行します。遺産に属する物又は権利の種類及び性質その他一切の事情および、具体的相続分に即した共同相続人間の均衡等を考慮して、裁判官が遺産分割の審判をすることになります。

 

4.遺産分割協議書を作成する

 

遺産分割協議書とは、遺産分割協議を行った後、そこで決まった遺産分割方法を書面に記したものに、相続人全員が署名し、実印を捺印したものです。

遺産分割協議書は各種の相続手続で提出を求められます。例えば、預金の相続(払戻し等)をする際、金融機関に提出する必要があります。また、法務局へ相続登記申請を行う際にも必要となります。

 

5.土地や家屋(不動産)の相続登記を行う

遺産分割の方法が決まった後は、不動産の相続登記をする必要があります。不動産の相続登記を申請するときには、不動産がある地域を管轄する法務局に対して登記申請書という書類を提出します。登記申請書の書式は、法務局でもらうことができますし、インターネット上でもダウンロードできます。

 

遺産分割協議によって相続した場合に必要な書類及び手続は以下になります。

(出展「名古屋法務局」ご自身で不動産登記申請を検討されている方へ引用

http://houmukyoku.moj.go.jp/nagoya/static/fuannai.htm)

 

(1) 必要な書類一覧

 ① 登記申請書

 ② 添付書類

  (ア) 相続が発生したこと及び相続人を特定するための証明書

 具体的には、被相続人(死亡した方)の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本等のほか、相続人となる方々の現在の戸籍謄本が必要となります。

 また、法定相続によらない場合には遺産分割協議書の添付が必要となります。遺産分割協議書には、申請人 以外の他の相続人の印鑑証明書(作成後3か月以内のものであることを要しません。)が必要となります。

(イ)所有になる方の住民票の写し(本籍地・筆頭者省略のないもの)

(ウ)被相続人の住民票の写し(本籍地筆頭者省略のないもの)

(エ)不動産の最新年度の評価証明書もしくは最新年度の固定資産税納税通知書

 ③ 登録免許税(通常は収入印紙で納付)

 

(2) 登記申請手続について

所有を予定している方が全員で申請します。(ただし、相続人のうちの一人に手続を委任することができます。この場合は、委任状が必要になります。)

登記申請書を作成し、添付書類がそろった後、土地・建物を管轄する登記所に申請します。申請の方法は、直接窓口へ持参する方法、郵送する方法、オンライン申請する方法があります。

 

5-1.相続登記を行う時の費用

相続登記にかかる主な費用は、登録免許税と言われる税金です。これは、固定資産税評価額の0.4%です。

これ以外にかかる費用としては、上記で述べたように、実際の申請時に必要となる戸籍謄本や住民票などの証明書類関係の取得費用の実費です。ケースによって費用は異なりますが、一般的には合計で数千円程度の費用となります。

また、この遺産分割や相続登記の手続きについて司法書士等の専門家に依頼した場合には、その報酬がかかります。

 

 

6.土地や家屋(不動産)を相続する時に発生する税金とは?

不動産を相続した場合には、相続税がかかることがあります。

相続税は、「被相続人の相続財産のすべての合計額」が「基礎控除額」を超える場合に課せられることになりますので、不動産を相続した者全てに課せられるわけではありません。

 

7.土地や家屋(不動産)の相続する時の税金の計算方法

相続税がかかるかどうかは、相続税の基礎控除額以上の財産があるかどうかにより判定します。

被相続人の財産が、基礎控除額3,000万円+(600万円×法定相続人数)を超える場合には相続税の申告が必要になります。

例えば相続人が3人の場合、基礎控除額は、3,000万円+(600万円×3)=4,800万円となり、相続財産が4,800万円以上ある場合に、相続税の申告が必要となります。

 

 

8.土地や家屋(不動産)を相続する時の節税方法

 

8-1.土地の評価を適切に行う

相続税等を計算するとき、土地や建物は時価ではなく路線価方式や固定資産税評価額で評価します。

土地の場合、路線価方式ではまず自分の家屋がある前の道路の路線価がいくらであるかを調べます。そして、路線価をその土地の形状等に応じた奥行価格補正率や不整形地補正率などの各種補正率で補正した後に、その土地の面積を乗じて計算します。

 

家屋については、固定資産税評価額に1.0倍して評価します。

固定資産税評価額は毎年市町村役場から送付してくるもので確認できます。手元にない場合は役場で証明書を出してくれますのでそれで確認しましょう。

 

土地の評価について補正率のとり方によって変化します。土地の価格が下がれば税金も下がりますので、相続に強い専門の税理士等へ依頼することにも考えましょう。

 

8-2軽減措置の制度を利用する

相続に関係する税には各種軽減措置の制度があります。主なものとしては、次のような制度があります。

①小規模宅地の減額特例

被相続人が事業用・居住用に使用していた土地を、配偶者や同居している子供が相続する場合などに相続税を減額することができる制度です。

②相続税の取得費加算の特例

相続した土地を売却する場合に、不動産譲渡所得税を減額することができる制度です。

 

8-3 生前にできること

土地やその上に建っている建物を賃貸にする、又は更地の土地にアパートやマンションを建てて賃貸に出すことが考えられます。これにより、「貸宅地」「貸家建付地」という扱いになり、土地の評価額が下がり、相続税の節税につながります。

また、贈与税の暦年課税を利用して相続財産を減らしていくことも検討しましょう。

 

 

9.まとめ

この記事では、土地や家屋を相続する方法、税金や節税方法などについて紹介しました。

知らなかっただけで、本来払わなくてもいい税金を払うこともあります。残念ながら、相続をきっかけに兄弟間等で揉める場合もありますが、少しの知識が大切な財産と家族の絆を守ることができることもあります。

不動産の相続については、専門家である司法書士の助言を受けた方がより適切な対策を実施することができますので、一度司法書士事務所に相談に行くことも考えてみてください。

 

参考文献

高橋 朋子・ 床谷 文雄 ・ 棚村 政行 (著)(2014)『民法7 親族・相続 』有斐閣アルマ

前田 陽一 ・本山 敦 ・ 浦野 由紀子 (著)(2017)『民法6 親族・相続 第4版 (LEGAL QUEST)』有斐閣

潮見 佳男(著)(2017)『民法(全)』有斐閣

【司法書士監修】不動産を夫婦で所有するとき名義人は誰にするのがいいの?

不動産の名義は基本的に、購入代金を支払う(住宅ローンも加えて)人の名義にするのが基本です。夫が全額出すのであれば、その不動産を夫名義にし、複数の人物が代金を分けて負担した場合、その負担割合に合わせて持ち分を計算して、複数の共有名義にするのが大原則です。

例えば、5,000万円のマンション購入するとして、頭金として、夫が500万円、妻も500万円出して、残額4,000万円を夫名義で住宅ローンを組めば、夫所有分4,500万円/5,000万円=90%、妻所有分500万円/5,000万円=10%として共有登記するのが普通です。

女性の社会進出が盛んな現在、結婚後もダブルインカムな夫婦も当たり前の状況になってきました。住宅ローンも、夫だけでなく、妻も組むケースも増えています。上の例で、残額4,000万円を夫のローン3,000万円、妻のローン1,000万円を組めば、夫の持ち分70%、妻の持ち分30%として登記します。

この原則にもかかわらず、不動産の名義人をどうする?という疑問が出てくるのは、三つの観点でいろいろ心配事を考えてしまうからです。

1つ目は、税金の観点から

2つ目は、相続の観点から

3つ目は、離婚の観点から

以上の3点から、夫婦の住宅の名義に関して、問題点と対策を検討しましょう。

 

1.夫婦の住宅の名義を税金の面から検討する

1-1 夫婦の住宅の名義と贈与税

不動産を購入すると、税務署から「お尋ね」が来ます。これは資金の出所を確認して、親族間で無届けの贈与などがないか調査する目的のものです。もし、贈与と認定できるお金の移動があれば、贈与税が課せられますが、資金調達方法通りに説明すれば、何の問題もありません。

住宅の購入資金は次のように夫の資金と妻の資金に分けられます。

1)夫(妻)名義の預貯金や金融資産(株や債券)からのお金は、夫(妻)の資金です。

2)夫(妻)名義の住宅ローンを組めば、ローンの借り手の夫(妻)の資金です。夫婦それぞれがローンを組めば、それぞれの資金です。

3)前に住んでいた家を売ったお金は名義人の物になります。100%夫(妻)の名義であれば、これは夫(妻)の資金です。前の家が親と共有であれば、親の所有分は、親からの援助となりますので、下の親からの援助の項を参照してください。

4)親からの援助に相当する部分は、基本的に、親の名義になりますが、2,500万円までは、住宅購入時に親から子への「相続時課税精算制度」を利用して、贈与税を支払うことなく、子である夫(妻)の名義にできます。夫が夫の親から、妻が妻の親から、別々にこの制度を利用できます。(2,500万円を超えた場合は、超えた金額に対して20%の贈与税が発生します。)

また、平成33年12月21日までに住宅取得等資金を父母や祖父母から贈与を受ける契約を締結した場合には、一定の限度で非課税措置を受けることができます。(平成30年9月時点では700万円または1,200万円の限度で贈与税が非課税です。)

以上で得た資金を元に、夫の所有割合、妻の所有割合を計算して、夫婦の共有名義にすれば、税務署から贈与税が課税されることはありません。この資金負担を無視して、一方の名義にすれば、妻(夫)から夫(妻)への贈与になりますので、注意してください。

 

1-2 夫婦の住宅の名義と住宅ローンによる所得税控除

自分が住む住宅に対して住宅ローンを組めば、購入の年から10年間、毎年住宅ローンの残額の1%が、所得税(所得税を超えたら住民税)から控除されます。

この制度は、ローンの名義が夫婦別々であれば、それぞれの住宅ローンに対して適用されます。

共稼ぎの場合、夫婦両方がこの恩恵を受けることも可能です。

税額控除(支払う税金から差し引かれる)ですので、大きな金額になります。

1,000万円のローン残高に対して10万円の控除です。

超低金利の現在、定期預金をくずして頭金にするより、組めるならローンを組む方がお得とも考えられます。

注意するのは、妻が途中で出産や育児で無収入になった場合、夫が妻名義のローンを支払えば、その分は夫から妻への贈与となることです。

でも、1年間に110万円までの贈与は贈与税非課税(贈与税暦年非課税枠)ですので、もし、妻もローンを組むなら、年間返済額を110万円以下にすれば、夫が支払いを代行しても、贈与税の対象にはなりません。

住宅ローンには、通常、団体生命保険の加入が義務付けられています。

ローンの借り手が死亡した場合、そのローンの残債は生命保険から返済され、ローン残高がゼロになります。

夫と妻が別個にローンを組んでいた場合、残債がゼロになるのは、死亡した夫(妻)の分だけですので、この点も注意してください。

 

1-3 夫婦の住宅の名義と不動産売却益の免除

自分が住んでいる住宅を売却し売却益が出た場合、3,000万円まで非課税になる制度がありますが、夫婦共有名義であれば、それぞれが、最大3,000万円まで非課税にすることができます。

過去のバブル期のように、3,000万円のマンションが9,000万円で売れるようなことはないでしょうが、将来の値上がりが期待できる物件を夫婦で購入する際には、検討に値するかもしれません。

 

 

2.夫婦の住宅の名義と相続の関係

夫婦の財産である自宅の所有権が、夫(妻)が死亡することによって、夫(妻)の親族が共有者になるのは嫌なものです。

夫が亡くなったときの相続を考えましょう。妻が亡くなった場合も同じです。

 

2-1 夫婦の住宅の名義と相続ー夫婦に子がいる場合

この場合、夫婦に子どもがいるかいないかで変わります。

子どもが居れば、夫の遺産の法定相続人は妻と子です。

妻と子だけですので、他の親族は入ってきません。前妻の子がいれば複雑になりますが、今回は省略します。

 

2-2 夫婦の住宅の名義と相続ー夫婦に子がいない場合

問題は、子がいない場合です。

夫婦に子がなく、死亡した夫に父母または祖父母が生存している場合は、その父母(祖父母)が法定相続人に入ってきます。

法定相続人には、遺留分と言って、故人の遺志に反してでも貰える最低限の割合があります。

夫が全財産を妻に遺すと遺言を書いても、夫の財産の最低6分の1は父母(祖父母)に渡さねばなりません。

遺留分は、全財産の合計ですので、住宅以外の財産で相続させることも可能ですので、夫婦の住宅は、妻の所有も登記して、できる限り、夫の父母(祖父母)に所有権を渡さないように計算しておきましょう。

では、夫の父母(祖父母)が一人も生存していない場合はどうでしょうか?この場合は夫の兄弟姉妹が法定相続人になります。

兄弟姉妹が居たが、亡くなった場合は、兄弟姉妹の子つまり甥や姪が親である兄弟姉妹に代わって相続します(代襲相続)。

これは大変な事態ですが、この場合の兄弟姉妹には遺留分がありません。この場合、夫が妻に全財産を相続させると遺言すれば、兄弟姉妹の相続権は消滅します。

遺言は重要なものです。特に子の居ない妻には重要ですので、縁起でもないなどとは言わず、きっちりとお互いに遺しましょう。

 

2-3 婚姻期間が20年以上の夫婦の住宅の名義移転の特例

婚姻期間が20年以上の夫婦には、相手側に2,110万円相当まで、贈与税非課税で住宅の所有権を贈与することができます。このうちの、110万円は、その年の暦年贈与税非課税枠です。結婚20年のお祝いのときにしておくのも良いのではないかと思います。

 

3.夫婦の住宅の名義と離婚の関係

熱烈な恋愛で結婚しても、離婚のリスクは完全に否定できません。

リスクが存在する以上は対応策を検討しておきましょう。

この記事は、あくまで離婚時の財産分与に関する不動産の取り扱いを述べるだけですので、有責配偶者(離婚の原因を作った方)や養育費の算定などには触れません。

 

3-1 夫婦の離婚時の不動産の名義と財産分与

夫婦が離婚するときには、婚姻中に作った財産は分与の対象になります。

分与の対象にならないのは、結婚前から持っていたもの、自分で使用する身の回りのもの、婚姻中に親その他から個人的にもらったもの(夫からのプレゼント含む)です。

不動産は、名義と分与には関連がありません。

結婚前から持っていた資金や自分の親からの援助部分は所有を主張できますが、ローンの分は夫だけの名義であっても婚姻期間中に協同して返済したと認められ、分与の対象になります。

 

3-2 夫婦の離婚時の住宅ローンが残っている場合の処理

分与は基本的にすべて現金化して行うのが原則です。

住宅も売却し、ローンの残債を返済して、残ったものを分けます。

ただ、売却するのが嫌で、一方が売りたくない場合は、その評価額を自分の分与分に加えます。

問題は、家の売却評価がローンの残債額より低いときです。

マイナスの財産も分与の対象です。ローン付きの住宅をローンを含めて継承する方は、相手側に応分の負担を求めることができますが、負担する方は時間の経過とともに履行を怠るようになることが多いです。

財産分与は複雑な取り決めです。

弁護士や司法書士などによる約束の文書化を行い、禍根を残さないようにしましょう。

 

 

4.まとめ

夫婦の住宅の名義をどうするのがよいか、税金の観点、相続の観点、離婚の観点からご説明しました。

利用できる控除制度は最大限使うのが得策なので、基本は実態通りに名義を登記するのが良いと思います。また税務署から登記の持分について指摘をされ、いったん登記した持ち分を更正して贈与税の課税を回避できたとしても、不動産取得税を課されてしまう恐れがあります。(地域によって最初の登記から1年以内に更正できれば課税しないなどの取り扱いもあるようです。)詳細な方針は、ぜひ、専門家とご相談ください。

【司法書士監修】土地や建物の名義所有者が違う時売却することはできるの?

1.土地と建物の名義人が異なる時の売却方法 

土地と建物の名義人が異なる場合も、法律的には自由に売却できます。

建物の名義人に断りなく土地を売却したり、土地の名義人に何も言わず建物を売却することは可能です。自分が持っていない土地や建物を一緒に売ることはできませんが、法律は自分の所有している土地又は建物を単独で売却することは禁止していません。

法律的には売却が可能でも、他人の土地にある建物や、他人の建物のある土地を好んで買う人は少ないと思います。少なくとも、該当の土地と建物の関係がはっきりしていて、その権利関係をそのまま自分が継承するのでなければ、買主は現れないと思います。

例えば、購入予定の建物の底地(建物の建っている土地)が、土地の所有者との間で土地賃貸借契約により使用が許可されており、その賃借する権利が自分(買主)に移転することに対して所有者の同意が約束されている場合は安心して買うでしょう。

また、買主が土地・建物を別々の契約書で購入するが、同時に引き渡されることが確定しており、買主が購入後に自分の名義に一本化されるような場合も、買主は購入に踏み切ると思います。

ただ、土地の名義人と建物の名義人との関係が不明瞭なままでは、買主は購入に踏み切れないと思います。

そこで、具体的に、どのようにすれば売却できるか、考えてみましょう。

 

1-1.土地と建物の名義を単独所有にする方法

最も簡単な方法は、売却前に土地と建物の所有者の名義を一本化して、土地も建物も単独所有にする方法です。具体的には、一方が他方に自分の持っている土地又は建物を売却することになります。売却ですから、当然、価格と支払いという問題が発生します。土地はいくら、建物はいくらとそれぞれに評価して、それに基づいて、一方が他方に売却する形で土地と建物の所有者名義を一本化することになります。

この方法は、価格の合意がなされれば楽ですが、お互いが自分の利益に執着するあまり、交渉が難航することもあります。そのような場合、二者間ではなく、売却に関連する専門家である不動産仲介業者や司法書士を交えて相談するのが良いと思います。

 

1-2.土地と建物の名義が異なる時の注意点

妻名義の土地に夫名義で家を建てた、あるいは、親名義の土地に子供名義の家を建てたが、親が死亡し、相続により自分の兄弟の土地になったなどというケースはよくあります。夫婦や兄弟の関係がよく、売却の話がスムーズに行けば良いのですが、離婚や相続でもめているような場合は、名義の一本化はなかなか進展しません。

しかし、もめているホットな時期を避けて、クールダウンしてから、再度協議すると決めるのは絶対に避けるべきです。離婚や相続での紛争を発端とする不動産の売却は、調停に持ち込んででもその時点で解決してしまいましょう。少なくとも売却時の借地権割合だけでも確認・合意しておきましょう。

ここで、借地権割合とは、更地の状態での底地の価格を100%としたときに、上の建物の借地権(建物の所有を目的とする、地上権又は土地の賃借権)の価値が何%に相当するかという割合です。大都市では、借地権の割合は70%程度であることが多いのですが、国税庁のホームページで調べることができます。

買主は、権利関係に関して問題のある土地や建物を購入することを躊躇します。せっかく良い条件で売れる機会を、土地と建物の名義が一本化できないだけの理由で逃すのはもったいないです。不動産屋、弁護士、司法書士などの第三者の専門家を交えて、全員が満足する解決策を冷静に探りましょう。

 

 

2.土地や建物の権利の種類は何があるの?

土地とその上に建てられた建物が複数の所有者のものである場合の権利関係について説明します。土地の持ち主も建物の持ち主も、自分の持っている土地や建物に所有権を持っています。

建物の所有者は賃貸借契約により土地の所有者から建物の底地を借りています。これを借地権と言います。建物の所有者は、建物の所有権と底地の借地権を持っていることになります。ずっと昔からその土地に建物があったり、親の土地などで、文書になった土地賃貸借契約を取り交わしていなくても、そこに土地の賃貸借契約は存在します。日本の法律は、文書でなくても事実上の状態が貸借関係であれば、それを認めます。

  

ここでちょっと難解ですが、専門的な話をします。権利には「物権」と「債権」の2種類があります。債権というのは、誰かとの約束(契約)に基づく権利です。これに対して、物権は、約束や契約に関係なく、もともと持っている権利です。物権はもともと持っている権利なので、誰に対しても主張できます。これに対して、債権は契約に基づく権利ですので、契約の関係者以外には主張できません。

つまり、所有権は物権ですので、建物の所有者は誰にも遠慮することなく、自分の判断で所有権を譲渡することができます。しかし、借地権は、土地の所有者と借りていた人との契約で生まれた権利ですので、借地契約に関係がない建物を買った人には、土地の所有者に自分が土地を借りる権利である借地権を主張できません。土地の所有者の同意が必要になります。

土地や建物に関連する権利には、抵当権やいろいろな権利がありますが、土地と建物の売買に直接関係する権利は、物権である所有権と債権である借地権が重要です。

ただし、日本の借地や借家に関する法律は、伝統的に借主に有利に作られています。法律が作られた当時は、借主の方が弱い立場にあり、借主を保護すべきであるという政策的配慮によるものです。具体的に言えば、借地権の場合、契約期間は最低30年以上でなければならず、貸主は正当な理由がなければ契約の更新を拒否することが認められません。借地権が債権であるのに、物権に近く考えられてきました。

これに対して、あまりに貸し手に不利な法律は却って貸す人を少なくするという観点から、新しい借地借家法は期間を定めてその期間が経過した後は、更新がなく更地で土地が返還される種類の借地権が新設されました。

土地や建物に関連する権利には、所有権の他、旧法による借地権、新法による借地権が関連してきます。

 

 

3.土地や建物の名義を単独名義にするメリットデメリット

土地や建物の名義には、名義人が一人だけの単独名義と名義人が複数いる共有名義があります。共有名義の場合は、それぞれの共有割合を確定しておかなければなりません。例えば、共稼ぎの夫婦が、お互い頭金を出し、ローンを組んだ場合、夫(あるいは妻)の単独名義にした方が良いのか、それぞれの費用負担の割合を計算して共有とするのか、いずれも一長一短あります。

単独名義のメリットは、名義人だけで売却などの意思決定ができるということです。もし、妻や親・兄弟でも共有者がいれば、その同意が必要になります。親と共有名義にすれば、親が死亡した際に、兄弟などが親の共有部分を相続して共有者が多数になることもあります。妻と共有名義にして離婚ということになれば、財産処分が簡単にいかなくなることもあります。離婚や相続があっても、土地や建物の処分が他者の同意なくできるのが、単独所有のメリットです。

デメリットは、実際は親や妻が資金を一部拠出しているときに、その部分も含めて自分名義にすれば、その部分が贈与とみなされ、贈与税が課せられる可能性があります。贈与税は相続税より課税率が高いので、親の出資に応じて共有名義として、相続の際に自分の名義に変更する方が、税金が安くなるケースがあります。

 

 

4.土地や建物の名義を共有名義にするメリットデメリット

共有名義にするメリットは、税制面のメリットです。居住用財産を売却した場合、売却時の譲渡所得から3,000万円を控除できる制度がありますが、これは1軒あたりではなく、1人当たりの控除額です。2名が50%ずつ持っている居住用財産を売却した場合、2人合わせて合計6,000万円の控除ができることになります。

一方のデメリットに関しては、以下があります。

・売却の意思決定には、共有者全員の合意が必要になるる。

・共有者の死亡による相続で、共有者の人数が増え、権利関係が複雑になる。

・離婚や相続による財産分割で、売却して換金せざるをえない場合がある。

・実際の資金の拠出割合を反映していない共有持分は贈与とみなされることがある。

・固定資産税は代表1名に請求が来るので、都度共有者に精算請求する必要がある。

・その他、所有者の数に比例して発生する費用(登記など)が単独所有より増加する。

 

5.土地や建物の売却の相談は司法書士に相談

 

土地(底地)と建物の所有名義が異なる場合や共有名義で名義人が複数存在するなどの場合は、客観的な立場から売主にも買主にも最善の途を選択するためにも、早い段階から司法書士を交えるのが得策と思います。まずは、司法書士にご相談ください。

司法書士は、売却後の登記の変更も含めて、最初から最後まで扱うことができます。

 

6.まとめ

 

以上、土地と建物の名義が異なる場合や複数の共有者が存在するなど権利関係が複雑な不動産の売買に関する基礎知識をご案内しました。

家族や親族は、永久に良好な関係が続くのが理想ですが、具体的な財産の処分時には私利私欲に走りやすいものです。泥沼の紛争にならないように、早めに専門家を入れて対策を検討しましょう。

【税理士監修】事業承継の補助金の手続きの仕方 補助金により資金を得る方法

会社を承継することが決まり、これを契機に新規事業に取り組みたいが資金的に不安があるという後継者の方は大勢います。経済産業省中小企業庁では、そんな後継者のために「事業承継補助金」制度を運用しています。はたしてどんな補助金なのでしょうか。

 

1.事業承継補助金申請から、交付までの道のり

事業承継補助金は、申請をすれば必ず受けられるというものではありません。平成29年の募集では、採択されたのは12.6%でした。このことから厳しい審査だということが窺えますが、補助金を交付してもらうまでにどのような手順を経ればいいのでしょうか。

1-1.事業承継補助金とは

事業承継を契機にして、経営方針や業態を変えようとしている後継者の新たな挑戦を支援する制度です。経営革新等に必要な経費を上限5百万円まで補助します。

 

1-2.事業承継補助金申請手続の仕方

事業承継補助金は、毎年4月~6月に募集が行われます。平成30年は二次募集として7月~8月にも募集が行われました。補助金申請は、こうした募集の機会を見計らって申請をします。募集要項に従い必要な書類を揃えて、郵便や宅配便等または電子申請で行います。

 

 

1-3.事業承継補助金申請に必要な書類

申請に必要な書類は以下のとおりです。

 (1)事業計画書

 (2)補足資料説明書

    ビジネスコンテスト受賞実績等

 (3)住民票

   被承継者と承継者

 (4)認定経営革新等機関による確認書

   認定経営革新等機関の印鑑があるもの

 (5)応募資格を有していることを証明する後継者の念書

 (6)履歴事項全部証明書

 (7)最近の確定申告書

 (8)直近の決算書

 (9)抜本的な金融支援を含む事業再生計画を策定した場合、それを証する書類

 (10)「中小企業の会計に関する基本要領」の運用を受けていることが分かる書類

 (11)経営力向上計画の認定を受けている場合は認定書

 (12)応募者の所在する市区町村の売上規模が分かる決算書

1-4.事業承継補助金申請の審査を通過するのに大切なこと

この補助金は、中小企業・小規模企業者・個人事業主・特定非営利活動法人のうち、地域経済に貢献している会社等を対象にしています。地域に貢献する事業者とは、取引先が地域に存する会社であることや地域の雇用維持・創出に取り組んでいる会社等です。

承継者についても、次のいずれかの要件を満たしていることが求められます。

①経営に関する職務実績を有している

②同業種での実績を有している

③後継者として必要な知識を有している

このため、他業種で働いていた子どもを急いで承継させても、補助金の対象にはなりません。

また中小企業庁は審査の着眼点として、募集要項の中で次の4点をあげています。

 ①新たな取組の独創性

 ②新たな取組の実現可能性

 ③新たな取組の収益性

 ④新たな取組の継続性

このことから、単に事業承継するだけでなく、新たな取組に着手することが求められているのが分かります。

1-5.事業承継補助金申請でもらえる補助金の額

補助金の上限額は、承継する事業のタイプによって異なります。

(1)事業承継を契機として、経営革新に取り組む場合……上限 2百万円

経営革新とは、従来店とは異なる商品を取り扱った店を出店し、新たな顧客層の開拓に繋げ、売上を増加させることをさします。

以前の店で野菜だけを扱っていたが、果実とスイーツが売りの店を出店して、これまでとは異なる客層を開拓し、多角化によって売上を増加させた場合などが該当します。

(2)事業承継を契機として、事業転換に挑戦する場合……上限 5百万円

事業再編や業種転換が、これに該当します。

事業再編は、これまで大手メーカーの下請けとして部品の製造が業務の核だったものを、ITの活用により、新商品を開発し新たに市場を開拓した場合などが該当します。 

業種転換は、老舗の八百屋が事業承継を機に、これまでの野菜入手のルートを活かして、フレンチレストランへ業態変更する場合などが該当します。

2.事業承継補助金を利用するメリットとデメリット

事業承継補助金は交付をされればどんなメリットがあるのでしょうか。またデメリットはないのでしょうか。

メリット1:会社経営の潤滑油になる

経営者が変わり、事業形態も変わるとなると、なにかと経費がかかるものです。そんな折に、補助金を交付してもらえたら、経営的にはずいぶん助かります。

メリット2:事業計画の見直しができる

事業承継補助金申請に際しては、事業計画書などを提出して厳しい審査を受けなくてはいけません。そのためには、この機会に事業計画の根本的な見直しが必要になるでしょう。経営のウィークポイントを発見するいい機会にもなります。

デメリット:補助金申請に合わせて実行しなくてはいけない

補助金申請では承継の時期や計画が盛り込まれています。補助金を交付してもらうためには、申請内容に合わせたスケジュールで行動する必要があるため、自由の度合いが制限されます。

3.事業承継とは

事業承継とは、会社の経営を後継者に引き継ぐことです。後継者は主に、①親族への承継②役員・従業員への承継③社外への引き継ぎ(M&Aなど)の3パターンになります。

(1)親族への承継

親族へ承継する場合は、後継者の適性が問題になります。他社で修行を積ますなど、若い時代から計画的な後継者教育を進めたことにより、承継がうまくできたケースが多くあります。

(2)役員・従業員への承継

これまで「同じ釜の飯を食べてきた」従業員への承継は、承継後も仕事が違和感なく流れるというメリットがあります。後継者も従業員の中から、実力本位で選べます。一方従業員もそれが仕事に励む活力になります。

(3)社外への引き継ぎ(M&Aなど)

後継者が身近で確保できない場合は、他の企業や第三者に引き継ぐ方法があります。譲渡したお金で会社の債務を清算できることや従業員の雇用や取引先との関係を継続できるなどのメリットがあります。

4.事業承継をするための方法

事業承継は、即断即決でできるものではありません。スムーズな事業承継をするためには、やはり長期間の準備が必要です。それではどのような準備をどのような手順で進めればいいのでしょうか。

4-1.事業承継をするための準備

事業承継をするためには、まずは現状の把握から始めます。資産や負債はどれだけあるのか、知的財産はなにがあるのか、不採算事業はないかなど会社の状況を分析したうえで、後継者の選定をします。

後継者が親族であれば、同業他社で修行を積ませるなどの後継者教育は欠かせません。そのためにも、事業承継は早い時期から進める必要があります。

それらの準備ができたら、事業承継計画書の立案をします。会社のウィークポイントが分かったら、それをどう克服するのかについて計画をたてます。さらに経営権の移譲計画、内部昇格計画などを組み込みます。

4-2.事業承継を成功させるために必要なこと

事業承継は必ずしもうまくいくものではありません。成功させるためにはいくつかの必要なことがあります。

ひとつには、いかに後継者に自信をもって経営をしてもらうかということです。その意味では、事業承継補助金は、新たな事業を支援するのですから、まさに後継者の手腕が振るえる場を提供することになります。

そのためには、前経営者は潔く身を引くことも必要です。いつまでも会社に顔を出していては、後継者の自信は身につきません。また従業員も後継者に対する信頼が芽生えてきません。アドバイスは、後継者自らが相談にきたときで十分です。

4-3.経営承継円滑法の活用

事業承継をサポートする制度として、経営承継円滑法があります。これは、前経営者から贈与された自社株について、後継者の事業継承を要件に相続税や贈与税が猶予または免除されるものです。

また都道府県知事の認定を条件に、事業承継時に公的な金融支援を受けることができます。

   

5.まとめ

ここまで事業承継補助金についてご説明をしてきましたがいかがだったでしょうか。

事業承継補助金で採択率を高めるポイントは、やはり当補助金の使い道を記す事業計画書です。

承継による新たな取り組みに対して「独創性」「実現可能性」「収益性」「継続性」がどのように織り込まれているかが注意すべき点になります。

事業承継補助金の募集の時期は限られていますが、募集要項が発表されてから準備しても採択されるまでの申請書に仕上げるのは至難です。補助金制度が求めているのは経営革新ですから、成算のある新しいアイディアを醸成しなくてはいけません。

当事務所は経営革新等支援機関であり、事業承継を専門としている事務所になりますので、補助金申請に限らず、事業承継についてお悩みがあればぜひご相談ください。

 

【税理士監修】相続時に必要なマンション評価額の計算方法とは?路線価や固定資産税評価額などを調べる方法とは?

今両親が住んでいるマンションについて、最終的には私の相続させたいと言っている。

相続すると相続税がかかるかもしれないと聞いた。どんな計算でいくらくらいの相続税を払うことになるのだろうとお考えの方がいらっしゃるかもしれません。

今回は,相続時に必要なマンション評価額の計算方法、路線価や固定資産税評価額などを調べる方法についてのお話です。

 

1.マンション評価額の計算方法とは?

マンションの評価額は、土地と建物に分けて算出します。まず土地の評価額についてご説明しましょう。

 

土地は「一物四価」といって、ひとつの土地に次の4種類の価格が存在します。

 

①路線価による土地の評価額(相続税路線価)

②実勢価格

③固定資産税価額

④公示価格

 

利用目的によって、どの価額を採用するのかが決まります。

それではマンションの相続税評価額の計算に必要な、路線価による土地の評価額を知る方法のご説明をします。合わせて他の土地価格の特徴もご説明していきましょう。

  

 

1-1.路線価による土地の評価額を知る方法

路線価による土地の評価額は毎年国税庁が公表する路線価を基に評価額を算出します。これが相続税や贈与税の根拠となる土地の評価額となります。

(1)自分で路線価を知る方法

路線価を知るには、国税庁のホームページ「財産評価基準書|国税庁」を開くと調べることができます。

http://www.rosenka.nta.go.jp/

(2)路線価図の見方

国税庁のホームページを開いて、住所地をたどっていけば、目的地付近の地図が表示されています。目的の土地の前面道路に標示されている数字が路線価です。「180B」などと表示されています。180は千円単位で表示されていますから、この場合は1㎡あたりの路線価が18万円ということになります。最後のアルファベットは借地権割合を示すものです。

 

(3)路線価による土地の評価額を知る方法

路線価による土地の評価額は次の数式で算出します。

路線価×敷地面積(㎡)×補正率=マンション全体の土地の評価額

補正率とは敷地の形状や道路状況によって補正するもので不整形敷地やがけ地にある敷地などが減じられます。

 

1-2.実勢価格

実勢価格とは、現実に取引されている価格です。価格は周辺の取引状況や売り手と買い手の思惑が交錯して定まるものですから、厳密な意味で定った価格は存在しません。近隣に取引の実例がないと、相場の判断も難しいので、査定価格や不動産会社の売り出し価格も参考値にします。

国土交通省のホームページ「土地総合情報システム」を活用するとひとつの手がかりが得られます。

 

http://www.land.mlit.go.jp/webland/servlet/MainServlet

 

これは国土交通省が実際に不動産取引を行った関係者にアンケート調査を行った結果を基にデータを公表しているものです。地図で目的地を検索しクリックすると一定のエリアが赤く表示されます。さらにクリックをするとその範囲内で行われた取引価格や土地の形状、道路副因などの一覧が標示されます。

1-3.固定資産税評価額

固定資産税価格は、固定資産税を決める根拠となる評価額です。毎年土地所有者に送られてくる固定資産税明細書に記載されています。固定資産税価格は、基本的には所有者本人しか分かりませんが、一般財団法人 資産評価システム研究センターのホームページ「全国地価マップ」で検索することができます。

 

https://www.chikamap.jp/chikamap/Portal?mid=216

 

この中の「固定資産税」のタブをクリックして住所地を地番まで追うと、対象の道路に数字が標示されています。この数字が固定資産税路線価です。一円単位までの価格が掲載されています。

1-4公示地価

公示地価は国土交通省が年に一度公表する土地の価格です。標準とされる土地を選び1㎡あたりの価格が公表されます。公示価格も前述のホームページ「全国価格マップ」で公表されています。

 

 

2.土地と建物の相続税評価額の計算方法例

マンションは土地と建物を分けてそれぞれを評価します。全敷地、全建物を評価した後に持分割合を乗じて算出します。持分割合とは、マンション全体に対して自分が所有する専用部分の割合のことをいいます。持分割合は、建物登記簿の「持分割合」の欄に記載されています。

2-1. 土地の相続税評価額の計算方法

マンション全体の土地の評価額から個人の土地の評価額を算出する計算式は次のとおりです。

路線価による土地の評価額×持分割合=個人の土地の評価額

先の路線価による土地の評価額の計算式と合わせて実際に計算してみましょう。

たとえば

路線価 25万円

土地の面積  2,000㎡

持分割合   537342分の10227

だとすると

25万円×2,000㎡=5億円(マンション全体の土地の相続税評価額)

5億円×(10227/537342)=952万円(千円以下四捨五入)の計算結果から

約952万円が個人の土地の相続税評価額になります。

2-2. 建物の相続税評価額の計算方法

マンションの建物の相続税評価額は、固定資産評価額税と同額です。固定資産税評価額は、毎年市区町村役場から送付されてくる固定資産税の納税通知書に記載されています。紛失した場合は、役所の窓口で課税証明書を取得すれば、それに記載されています。

 

また同じく市区町村役場で「固定資産税評価証明書」を取得すれば分かります。この書類は、不動産の所有者や抵当権者などの関係者しか取得できません。

建物の固定資産税評価額が仮に421万円だったとすると

952万円(土地)+421万円(建物)=1,373万円の計算結果から、

このマンションの相続税評価額は約1,373万円になります。

 

3.相続財産でマンションが増加している

相続財産としてマンションを購入する人が増えています。そもそもマンションの節税対策が脚光を浴び始めたのは、2015年1月1日に施行された相続税の改正が原因だといわれています。

 

基礎控除額がそれまでは、(5000万円+1000万円×相続人数)だったものが、(3000万円+600万円×相続人数)と縮小され、相続税対象者が全国平均で4%から8%に増加しました。このため、相続税対策に関心を持つ人が増加したのです。

3-1.マンションの購入は節税効果が大きい

相続財産としてマンションを購入する人が増えている大きな理由のひとつが、現金をそのまま持っているよりも不動産を購入した方が相続税額が有利になるからです。土地の相続税路線価は市場の80%の価額だとされています。建物の相続税価額すなわち固定資産税価額は、市場の50~70%とされています。

 

つまりそれだけ現金に比べて評価額がダウンできるのです。土地と比べて建物の相続税価額の方が市場価格よりも安いために、容積率の高い高層マンションを購入すると建物に比して土地の比率が小さくなるので、より評価額が市場よりも安くなります。

 

また相続税路線価は、所有者の持分割合に応じて均等に乗じるので、部屋の面積が同じだと、高い価格で買った最上階の所有者も低層階の所有者も同じ評価額となるため、高層階を買った者にとっては節税効果が大きいのです。

3-2.賃貸用マンションを建てると節税ができる

国は相続税収入を増やそうと策をあれこれと練ってきましたが、税負担が大きすぎて不動産を手放す人が増えてしまえば本来の目的から外れます。そのため一定の条件を満たす宅地は大幅に評価額を下げることができる「小規模宅地の特例」という措置が設けられています。

 

アパートやマンションを建てれば、貸し付け事業用宅地等が適用されるために200㎡までの土地の評価額が半額になります。200㎡を超える土地であっても200㎡部分は半額で計算されます。これもかなりの節税になるため活用する人が増えています。そのうえ家賃収入を得ながら節税ができるのですからメリットは大きいでしょう。

4.税金対策は、専門家の税理士に相談

ここまでマンションの評価額を中心にご説明をしてきましたが、いかがだったでしょうか。所有するマンションの相続税路線価がいくらになるのか、一度国税庁のホームページで検索されてはいかがでしょうか。また固定資産税納税通知書で建物の価額もぜひご確認ください。

ひと口に税金対策といっても、税法は絶えず改正されており、適用できる条件も実に細かに定められています。適用されると思っていた優遇制度が、実はある条件が欠けていたために当てが外れてしまったということはありがちです。

 

平成30年度税制改正においても、貸付事業用宅地等の小規模宅地等の要件が厳しくなりました。

改正後は、(平成30年4月1日以後の相続)相続開始前3年以内に新たに賃貸事業された宅地等は、原則、小規模宅地等の対象外になります。したがって、亡くなる直前に節税対策で賃貸用のタワーマンションを購入しても、小規模宅地等のメリットまでは享受できないこととなります。

当事務所でも相続の依頼を多く受けていますが、この改正により節税メリットを受けれなくなった方も数名いらっしゃいました。

 

ポイントは『早めの対策』になります。相続専門の税理士は、最新の情報(改正)を常にキャッチアップしていますので、ぜひ相続専門の税理士にご相談ください。

【司法書士監修】不動産の贈与に伴う登記手続き方法とは?

1.不動産の贈与で登記の変更手続きの仕方

土地や建物といった不動産の贈与を行う際には、所有権者が誰であるかを第三者に対してもわかるようにしておくために登記変更手続きを行います。

贈与を行った当事者(財産をあげた人と、もらった人の2人)の間では、口頭での約束だけでも贈与は成立します。

 

しかし、当事者以外の人に対して、不動産をもらった人がもらったことを主張するには、登記名義を、もらった人名義にしておかなければなりません。

 

甲が不動産を乙に贈与した後、甲がその不動産を丙にも贈与したときは、乙丙のうち先に登記名義を取得した方が相手にその所有権を主張することができるという仕組みです。

贈与を受けた場合の登記変更手続きのおおまかな流れを説明すると、次のようになります。

・①贈与を受ける不動産の調査を行います
・②登記手続きを行うための書類を集めます
・③登記のために必要になる書類を作成します
・④贈与契約書に署名捺印します
・⑤法務局で登記変更手続きを行います

以下、それぞれの手続き内容について説明していますので、参考にしてみてください。


2.不動産の贈与で登記の変更を自分で行う方法

贈与に関する不動産登記の手続きは、自分で行うことも決して不可能ではありません。

後で説明する贈与契約書を要件を満たす形で作成し、必要書類をそろえて法務局で手続きを行いさえすれば、書類の不備が無ければ登記手続きを完了することが可能です。

ただし、市役所や法務局での手続きは平日の日中に行う必要があるほか、法律書類の作成には労力がかかることも考慮しておく必要があります。

時間短縮をしつつ確実な形で手続きを完了するのであれば、司法書士などの専門家を利用することもメリットがあるでしょう。

3.贈与の対象となる不動産の調査を行う

贈与の対象となった不動産について、正確な地番や所有権者の情報、不動産の上に設定されている抵当権などの状況を確認します。

贈与を行った人が「この不動産は自分が所有権を持っている」と言っていたとしても、その所有権の上に設定されている権利(土地を耕作するための権利など)が設定されていて、実質的に利用できない状態になっていることも考えられるからです。

 

贈与を行った人が不動産を所有していると勘違いしている可能性もゼロではないでしょう。

不動産を所有することには、固定資産税などのコストも発生しますから、贈与を受ける不動産がどのような状況なのかについてくわしく理解しておかなくてはなりません。

具体的な手続き方法としては、法務局で登記簿謄本を取得して不動産の状況についての調査を行います。



4.登記を変更するために必要な書類を集める


登記手続きを法務局に申請するためには、まずは必要書類を集めなくてはなりません。

贈与による所有権移転登記を行う際には、贈与を行う人の登記済権利証(あるいは登記識別情報)や印鑑証明、贈与を受ける人の住民票、贈与の対象となる不動産に課せられる固定資産評価証明書が必要です。

印鑑証明や固定資産評価証明書については最新のものを準備する必要がありますので注意してください。


5.登記を変更するために必要な書類の種類

上で見た必要書類は、それぞれ以下の場所で取得することが可能です。

・贈与を行う人の登記済権利証(あるいは登記識別情報)
一般的には「権利証」と呼ばれるもので、過去に登記した際に法務局から受け取っているはずです。

ただし、平成17年以降に行った登記については権利証の代わりに「登記識別情報」という12桁の番号が通知される扱いになっていますので、こちらの番号が準備できれば問題ありません。

・贈与を行う人の印鑑証明
印鑑証明は、住基カードやマイナンバーカードがある場合にはコンビニなどでも取得できますが、ない場合には市役所で取得します。

法人が贈与者である場合には、法人の印鑑証明は法務局で取得します。


・贈与を受ける人の住民票
住民票についても住基カードやマイナンバーカードがある場合にはコンビニで、ない場合には市役所で取得します。

住民票は本人以外の人が取得する場合には委任状が必要ですので注意してください。



・贈与の対象となる不動産の固定資産評価証明書
登記手続きを行うためには登録免許税を納付しますが、登録免許税の金額を計算するためには贈与の対象となる不動産の固定資産税評価額を知る必要があります。

固定資産税評価額は毎年4月~5月にかけて自宅に届く固定資産税の納税通知にも記載されていますが、登記申請書の添付書類として固定資産税評価証明書を提出しなくてはなりません。

固定資産税評価証明書は市役所や都税事務所で取得できます。


6.登記を変更するための書類作成を行う


登記を行うためには、「どのような原因で登記変更手続きを行うことになったのか」を説明する情報として、登記原因証明情報と呼ばれる書類を作成する必要があります。

登記原因証明情報は、贈与の場合には贈与契約書を作成するのが一般的です。

贈与契約書には決まった形式は存在していませんが、最低限必要な情報として次のような情報を含める必要があります。

贈与を行う人(贈与者)の氏名と住所
贈与を受ける人(受贈者)の氏名と住所
贈与契約を締結した日時
贈与の対象となる物件の情報(登記簿謄本から転記します)
贈与者は贈与を行い、受贈者は贈与を受諾する旨の記載
登記を共同で行うことの約束
登記費用の負担を誰がするのかの約束


7.登記を変更するための書類作成を行う上での注意点


登記をするために作成する書類は、原則として原本を提出する必要があるのに注意が必要です。

贈与契約書や固定資産税評価証明書、権利証などは原本の還付を請求することができますが、委任状や印鑑証明などは原本を提出したら返還を受けることができないので注意しておきましょう。

また、郵送によって登記申請手続きを行う際には、宛名記載済みの返信用封筒と書留郵便を送ってもらうための郵券を同封が必要になります。



8.贈与契約書を作成し、署名捺印を行う


贈与契約書が作成できたら、贈与者と受贈者が署名押印します。

押印に使う印鑑は認め印でも問題はありませんが、トラブルを未然に避けるためには印鑑証明書を取得している印鑑(実印)を使うのが良いでしょう。

なお、贈与契約は契約書を作成しなくても、口頭で「この財産をあげる」と約束するだけでも成立しますが、契約書で約束をしていない場合には贈与を行う側が自由に撤回することができます。

権利関係を確定的なものにするとともに、登記変更手続きをスムーズに行うためにも、上で説明した要件を満たす贈与契約書を作成するようにしましょう。


 

9.作成した資料を法務局へ申請し登記の変更手続きを行う

必要書類がそろい、贈与契約書への署名押印が完了したら、いよいよ法務局で登記変更手続きを行います。

法務局は全国にありますが、手続きを行うのは贈与の対象となる不動産所在地を管轄している法務局です。

法務局に備え付けてある登記申請書に記入を行い、上で説明した必要書類を添付して提出しましょう。

登記変更手続きを行うためには、登録免許税という費用を負担しなくてはなりません。

登録免許税の金額は「物件の固定資産税評価額×税率」で計算します。

登録免許税の税率はどのような原因で登記を行うのかによって異なりますが、贈与に基づく所有権移転登記の場合には1000分の20です。

例えば、5000万円の不動産の贈与を行ったとすると、登記のために必要な登録免許税は5000万円×1000分の20=100万円となります。

なお、登録免許税は印紙税を購入して貼り付ける形で納税を行う必要があります。


10.不動産の贈与で登記の変更手続きを司法書士に依頼するメリットデメリット

 

司法書士に贈与登記を依頼した場合には、登録免許税などの費用に加えて、司法書士に対して支払う手数料が発生するというデメリットがあります。

司法書士に支払う費用の相場は、およそ5万円~10万円程度となりますので、決して安いコストではないでしょう。

一方で、登記手続きは不動産という経済的価値が大きい資産の権利保護を目的として行うものですから、登記手続きそのものに不備があってはなんのための登記かわからない…ということにもなりかねません。

司法書士に依頼した場合には安全かつ確実に登記手続きを完了することができるほか、面倒な書類作成などの事務負担をする必要もなくなることは、司法書士を利用するメリットといえるでしょう。

 

11. 不動産の贈与と贈与税

 

不動産をもらうときは、もらう人は単に受け取るだけでメリットしかないようにも思えます。

 

しかし、登録免許税を支払う人は任意で決めることができますが、上記のとおり登記をするには登録免許税がかかります。

 

加えて、贈与税については事前に十分検討しておいた方がいいでしょう。

 

ここでは贈与税の詳細については割愛しますが、土地の価格は安いものではなく、そして贈与税の税率は低くはありません。

贈与税を知らずに土地をもらい、後で高額の納税をしなければならなくなってしまった、、、ということにならないように注意してください。

 

 

12.まとめ

今回は、不動産の贈与を行う場合の登記手続きについて、おおまかな流れや必要書類を説明しました。

贈与は契約だけでも当事者間では有効ですが、登記をしていないと契約当事者以外の人に対しては権利主張ができなくなる可能性があります。

登記は贈与した相手が権利を確実に取得できるようにするためにとても大切なものですから、できる限り速やかに手続きを完了するようにしましょう。

 

【司法書士監修】土地を相続する時の手続方法や分割方法を紹介

1.土地を相続する時の方法

財産を所有していた人が亡くなった場合、その財産は相続人となる人が相続します。
亡くなった人が遺言書を残している場合には遺言内容に従って、遺言書がない場合には民法のルールによって相続人となる人が決まります。

相続人が1人である場合には大きな問題は生じませんが、複数の相続人がいる場合には「誰がどれだけの財産を相続するのか」について話し合いを行わなくてはなりません。

これを遺産分割協議と呼びますが、相続される財産が土地である場合には遺産分割協議が紛糾してしまうことも少なくありません。

また、「最終的に誰が土地の相続人となるか」と「土地の名義人として登録されているのは誰か」は別の問題であることにも注意を要します。

前者は遺産分割協議によって決定し、後者は相続登記によって決定する問題です。

そのため、遺産分割協議によって土地の相続人となったものの、相続登記を行っていなかったために権利を失ってしまうケースが実は少なくありません。

遺産分割協議によって相続した財産は、必ず相続登記によって権利を確定しておくことが望ましいといえます。

 


2.土地を相続した時は相続登記を行う

土地を相続したときには、相続登記を行うのが一般的です。

相続登記とは、簡単にいうと「土地の所有者名義を、前の所有者から現在の所有者に変更すること」です。

相続登記を行っておくと第三者に対しても「この土地は前の所有者から相続した私の土地です」ということが主張できるようになります。

相続登記は法律上いつまでにやらなくてはならない、という形で期限が決まっているわけではありませんから、もし土地を相続した後に、相続登記をずっとしていなかったとしても罰則等を課せられることはありません。

しかし、相続登記には「誰が土地の所有者となったのか」を確定する意味がありますので、相続後のトラブルに巻き込まれないようにするためにも行っておくのが賢明といえます。

もし相続登記を行わずに放置してしまうと、本来は土地を相続する権利のない相続人が相続登記を行い、所有者としてその土地を第三者に売却してしまったような場合に、その土地を取り戻せなくなるなどの問題が生じる可能性があるのです。

例えば亡くなった人の相続人が子である甲と乙の2名であるときに、遺産分割協議によって甲が土地を相続することに決まったとします。

甲が相続登記をしないでいたところ、乙が自身の法定相続分である持分2分の1を丙へ売却し、その登記をしてしまったらどうなるでしょうか。

この場合、甲は自分が土地全体を相続したことを丙に主張することができなくなってしまうのです。

結果として、この土地は甲と丙が持分2分の1ずつ共有することになります。

3.土地の相続登記に必要な書類


土地の相続登記を行う際には、次のような書類が必要になります。

・(1)亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本
・(2)亡くなった人の住民票の除票や戸籍附票
・(3)相続人全員の戸籍謄本
・(4)相続人全員の署名捺印がある遺産分割協議書
・(5)遺産分割協議書の押印に使った印鑑の印鑑証明

・(6)土地を相続する人の住民票
・(7)司法書士などに手続きを依頼する場合には、その委任状
・(8)相続の対象となる土地の固定資産税評価証明書(最新年度分)

司法書士に相談すると必要書類の多くは取得手続きを代行してくれますから、相談しに行く前には、最低限、土地の登記簿謄本を準備しておきましょう。

土地の登記簿謄本は最寄りの法務局で取得することができます。

司法書士は(5)を除く戸籍等の書類を代わりに取得することができますが、相談の際はお手元にある戸籍等を持っていくと話をスムーズに進めることができます。

(8)または固定資産税の納税通知書があると、手続きの費用についても話ができるでしょう。

 

4.土地の相続登記にかかる費用はいくら掛かるの?

相続登記にかかる費用には、大きく分けて(1)役所に対して支払う費用と、(2)専門家に対して支払う費用の2種類があります。

・(1)役所に対して支払う費用
登録免許税:土地の固定資産税評価額×0.4%
必要書類の発行費用:1万円~3万円程度

・(2)専門家に対して支払う費用
専門家を利用する場合は、どこまでのアドバイスや代行業務をお願いするかによってかかる費用が変わります。

例えば、相続登記を行うこと自体の代行手数料は5万円~7万円程度が相場で、戸籍等の収集も依頼したり、遺産分割協議書の作成などについてもアドバイスを受ける場合には7万円~15万円程度が相場となります(土地の数や評価額によってこの金額を超えることがあります)。

専門家費用とは具体的には司法書士への支払手数料ですが、当然ながら自力で相続登記を行う際には必要ありません。

ただし、土地の相続登記は手続き方法が複雑であるだけでなく、もし不備があった時のリスクが非常に大きいことから、司法書士などの専門家に依頼して相続登記を行う人がほとんどです。


5.相続登記を行う際の注意点

相続登記を行う際の注意点としては、第一に「相続の対象となるすべての不動産について、相続登記を済ませておく」ことが挙げられます。

一口に土地の相続といっても、私道はご近所との共有となっていたり、駐車場や倉庫などとして使っている部分についてはバラバラの形で相続登記が行われるケースが少なくありません。

また、マンションの専有部分と共有部分の宅地の登記名義がばらばらになっていたりすると、後になってから権利関係が複雑になり、将来の相続トラブルを誘発してしまう可能性があります。

非課税のため納税通知書に記載されていない土地や自宅とは離れた場所に畑を所有していることもあるため、「名寄帳」を取得して相続の対象となる不動産を調査することが望ましいといえます。

第二の注意点としては、相続が発生してからできるだけ早い時期に相続登記を完了しておくことです。

相続人の中には、自分が相続する持ち分について不満を抱いている人がいるかもしれません。

誰が相続登記を行うかについては基本的に「早い者勝ち」ですから、早く手続きをした人ほど後で生じてしまう法律トラブルにおいては有利な扱いとなるのが現実なのです。

具体的には、相続登記上の名義人となっている人が、第三者に対して土地を売却してしまったような場合、本来の相続人(遺産分割協議において正当に土地相続人となった人)がその第三者に取引の無効を主張するのは極めて難しくなります。


6.土地を遺産相続する方法

相続人が1人だけである場合には、土地相続で複雑な問題は生じることは少ないでしょう。

一方で、1つの土地に対して複数の相続人がいる場合には、だれがどのような形で権利を相続するのかをめぐって解決方法を考える必要があります。

単純に土地面積に応じてそれぞれの相続人が遺産相続するにしても、ある人の相続した土地は道路に近くて土地活用にも適しているけれど、別の人の相続部分はは奥まった場所にあって土地活用に適さないといったように、分割割合は平等でも実質的に不公平が生じてしまうようなケースは少なくありません。

そのため、具体的な状況に柔軟に対応できるように、法律上はいくつかの土地相続の方法が用意されています。
具体的には、現物分割、代償分割、土地共有、換価分割などの方法が重要です。


7.土地を分割する時の種類

以下では、上で紹介させていただいた土地分割の方法について、それぞれ具体的に説明させていただきます。

  7-1.土地を現物分割で相続する
現物分割とは、文字通り1筆の土地の現物を複数に分けて相続する方法です。

相続登記においては、まず1筆の土地の分筆登記を行ったうえで、分割された各土地についてそれぞれ、取得した相続人名義へ相続登記を行います。

ごく簡単にいうと、まず1つの土地を分割したうえで、それぞれの土地に1人の土地所有者が存在する形にするという形になります。

単純に面積で均等に分けた取得する場所によって価格が異なったり、接道要件など一定の要件を満たしていない土地に分筆し承継すると後で住宅を建てられないということも生じ得ますので注意が必要です。

なお、土地が複数ある場合は、港区にある土地は甲が、渋谷区にある土地は乙が相続するという方法も現物分割という方法に含まれます。


  7-2.土地を代償分割で相続する
代償分割とは、例えば「長男が土地全部を相続する代わりに、次男に対して長男は現金を支払う」というように、土地の分割をせずに相続を完了する方法です。

建物がすでに立っている宅地などを相続する場合には、1つの土地を分割することが困難であることが少なくありません。

そのような場合には、土地については1人の相続人が1人で相続し、その他の相続人に対しては現預金など相当の対価を補填する形が適切なこともあります。

7-3.土地を共有により相続する
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つの土地を分割することが望ましくない場合には、共有の形で相続分を定めることも考えられます。

共有とは土地そのものは分割しないけれど、その1つの土地に対してそれぞれの相続人が「持分」の形で所有権を取得することです。

土地の利用目的が特に決まっていないときなどに、とりあえず共有としておくというケースを目にすることは実務上少なくありません。

一方で、共有となっている土地を売却したり、担保を設定するするときには共有者全員の同意が必要であることに注意が必要です。

また、共有者に相続が発生することが繰り返されると、共有者の数が増え続けてしまう可能性があり、今後処分がしにくくなるというリスクをはらんでいるともいえます。


  7-4.土地を換価分割により相続する
換価分割とは、土地を売却してしまい、その代金を相続人で分け合うことをいいます。

換価分割は、財産を土地の形で相続したくないときや、代償分割を行いたいもののそのための資金がないというようなケースで選択するメリットがあります。

現金というわかりやすい形で分割を行いますから、相続割合を巡ってトラブルが生じにくいこともメリットといえるでしょう。

一方で、換価分割では言うまでもなく土地は手放すことになりますから、先祖代々の土地の相続が問題となっているときなどには慎重な判断をする必要があります。

また、土地の売却によって利益が生じた場合(つまり購入価格よりも高い値段で売れ場合)には譲渡所得税の負担をする必要があることにも注意を要します。


8.土地を遺産分割により相続する時の注意点

土地を遺産分割の形で相続する時には、相続人となる人の間で不公平感が生じないようにするとともに、遺産分割協議がまとまった段階ですみやかに相続登記を行い、法律トラブルが生じることを未然に防ぐことが大切です。

そのためには、遺産分割協議の段階から弁護士や司法書士といった第三者の専門家に間に入ってもらうことが有効です。

仲の良かった親族同士が遺産をめぐっていがみ合うというケースは、決してドラマの中だけの話ではありません。

親しい親族同士だからこそ、ささいな分割割合の齟齬をめぐって感情的になってしまうことも珍しくありません。

そのような場合に備えて、相続が発生したらできるだけ早いタイミングで専門家に相談してアドバイスを受けるのが適切だといえます。

【司法書士監修】家族に財産を信託する家族信託の制度って?司法書士に頼む時費用は?

まず,「家族信託」というのは,一般社団法人家族信託普及協会の登録商標です。信託法に基づいて個人間でなされる信託行為を「民事信託」,信託業法の制限を受ける営業としての信託行為を「商事信託」として一般的には区別しているのですが,「民事信託」の内,親族間で行われるものが「家族信託」と呼ばれています。
従いまして,本記事中ではいわゆる「家族信託」を単に「信託」と呼ぶことにします。また,民事信託には大きく分けて3種類あります。信託契約,遺言信託,自己信託と言われるものです。この内,公正証書による作成または確定日付のある証書による通知がその効力発生要件とされているのは,自己信託のみです。つまり,信託契約と遺言信託については,必ずしも公証人の関与を要しませんが,信託という,今後の生活や重要財産に深く関わってくる制度であることを考えると,いずれにしても公正証書での作成を念頭に置くべきだと思います。実際,専門家に相談または依頼した場合には,公正証書の作成を勧められます。

 

1.家族信託にかかる費用の種類

信託に直接関わる費用としては大きく分けて2つあります。専門家に支払う報酬と専門家に依頼しなくても発生する実費です。実費の部分については,その不動産登記の名義を変更する際の登録免許税と,信託契約書を公正証書にする際の公証人の手数料がそのほとんどを占めるかと思われますので,専門家に応じて大きく変わることはないかと思われます。一方,報酬部分は信託の内容に関するコンサルティング料として設定されている場合が多いようです。従いまして,書類作成や出張,不動産登記,遺言書の作成などを伴う場合には別途発生する場合があります。依頼する専門家の報酬体系については,事前によく確認した方がいいでしょう。

なお,公証人の手数料は下記の通り法定されています。実際には下記の金額に契約書の枚数による加算がされる場合があります。(4枚以上で1枚につき250円加算)

公証人手数料令 別表

 

2.家族信託を司法書士に依頼するときの費用

司法書士の報酬は自由報酬となっていますので,一般的な決まりはありません。また,対象となる財産の価格に応じて報酬割合を変えているのがほとんどかと思います。個人的な感覚では,どの事務所もコンサルティング料として30万円を下限として,対象財産価格の0.1%〜1%程度と定めているようです。また,公正証書作成に至った場合には10万円〜20万円程度加算される場合もあります。

3.司法書士に依頼する登記代行手数料の費用

信託財産に不動産が含まれている場合には,信託契約と同時に不動産登記の名義人を委託者から受託者に変更する手続きが必要となります。制度としては司法書士に依頼せずに,委託者と受託者の当人同士で名義の変更手続き(所有権移転登記と信託の登記の申請と言います)をすることは可能ですが,専門的な知識を要する為,司法書士に依頼するのが一般的です。

司法書士にとっても,信託に関する登記は,売買や贈与などの不動産に関する他の種類の登記に比べ専門性が高い為,報酬もそれなりに差を設けている事務所が多いようです。司法書士の報酬は自由報酬であり,各司法書士が個別に決められる為に事務所によって様々ですが,概ね5万円〜10万円程度のようです。また,対象不動産の価格によっても変動する場合もありますので,事前に確認をした方がいいでしょう。

不動産登記申請手続きには,司法書士報酬の他に,下記記載の登録免許税がかかります。この部分の費用は司法書士に依頼をしても,ご本人で申請しても変わりません。

 

4.登録免許税にかかる費用

対象財産に不動産が含まれている場合には,信託を原因としてその所有権の名義を変更する必要があります。登録免許税はその不動産の固定資産評価額を基準として,建物は0.4%,土地は(延長される可能性はありますが,平成31年3月31日までは)0.3%となっています。固定資産評価額は,固定資産税の納税通知書に記載されています。また,対象不動産の価格にもよりますが,司法書士報酬が10万円程度発生します。

 

5.家族信託の書類作成にかかる費用

(1)家族信託で発生する専門家へのコンサルティング費用

信託業務を行なっている専門家は主に,弁護士,司法書士,行政書士になるかと思われます。例えば遺言書の作成などでは,弁護士,司法書士,行政書士の順でその報酬額が下がっていくのが一般的なイメージかと思いますし,実際そのような実情と言っていいかと感じます。しかし,信託については一概に,上記のような順にはなっていないように思います。平成19年に施行された制度である為に,専門家によってもその得手不得手にバラつきがあることが理由のひとつと言えます。ただし,既に申し上げた通り,そのコンサルティング費用としては概ね30万円を下限として,対象財産価格の0.1%〜1%程度と設定されています。例えば,対象財産が1億円であればその1%で100万円,10億円であってもその0.1%で100万円というような,ある程度の上限を設けている専門家もあれば,対象財産10億円であれば数百万円という費用を設定している専門家も見受けられます。

(2)受益者代理人や信託監督人の報酬にかかる費用

これまで述べた通り,専門家が信託に関わるのは,一義的には,信託の内容を組成し,信託契約書類を作成し,各名義の変更手続きを終えるまでといえます。しかし,信託行為そのものは一生涯,場合によっては相続発生後も続くものです。またその性質上,親族の個人間にその信託契約の履行の有無が委ねられています。加えて,委託者または受益者の意思能力の低下を前提もしくは予定しているからこそ信託制度を利用します。つまりは,委託者や受益者に必ずしも受託者の契約履行を監視することが出来るわけではありません。そこで,信託契約の円滑な運用,受益者の権利保護を目的として,受益者代理人や信託監督人を設置する場合があります。専門家にその就任を依頼した場合には,概ね毎月1万円程度の報酬としていることが多いです。

(3)家族信託を司法書士に依頼する時に費用を安くする方法

信託に限らず,司法書士に限らず,専門家の費用と成果物の完成度は必ずしも比例するものではありません。特に信託は,委託者の重要な財産と想いを将来に安心して引き継ぐ為の制度です。実際に話してみて,親身に話を聞いてくれ,一人一人に合った提案をしてくれる,信頼できる専門家に依頼するべきだと思います。
その上で費用を安く抑えるのであれば,上記の通り,信託の費用については,その手続きごとに費用を分けている専門家がほとんどですので,例えば,信託のコンサルティングだけを受けて,公正証書の作成はご自身で行うことも可能ですし,不動産登記手続きも制度としてはご自身で行うこともできます。その為には何よりも,依頼しようとする専門家の報酬体系を事前に確認することが一番の節約になるのではないでしょうか。

 

6.家族信託を行うことによるメリットとデメリット

(1)家族信託とは?

その言葉の通り,自身の財産を信じた他者に託す契約です。そして,どんな財産を,どのように,誰に託すのかといった事を自身の想いに則ってアレンジ可能な,自由度の高い制度と言えます。相続や贈与であれば,その管理権,処分権,収益権がまとめて移動しますし,成年後見であれば,成年後見人の権限は本人のそれと比べて遥かに制限されています。

(2)メリット

最大のメリットは,やはりその自由度の高さです。遺言,生前贈与,任意後見など法律が定めた相続対策制度はいくつかありますが,それぞれにデメリットがあります。例えば遺言であれば,ご本人がなくなってから初めてその効力が発生する為に,認知症などの対策にはなり得ません。また,第二相続まで指定することはできません。生前贈与では,管理権と一緒に処分権や収益権も受贈者に渡る為に,会社の事業承継においては柔軟性や信用性に欠けます。各人の実情,感情に合わせた柔軟な財産承継が出来る為,他の法的手続きが持つデメリットを補うことができると言えます。
相続対策として語られることが多いのですが,契約の一形態ですので,相続に限らず隠居や業務委託として使用することが出来るのもメリットと言えます。

(3)デメリット

上記,メリットの裏返しがデメリットになるかと思います。
信託が契約であり,ご本人の想いを自由に反映できる為に,その締結にははっきりとした意思能力が必要になります。ご本人が精神的に健康である内に行う必要があるという時間制限は,デメリットのひとつと言えるかもしれません。加えて,信託の内容については契約で決める必要があり,将来的な予測や幅広い視野に基づいた細やかな設計が必要となります。
また,法律施行から10年程しか経っていない為,先例や判例が乏しく,他の法律の整備も遅れている側面も否定できません。従って専門家の間でも,その知識や対応に差が生じてしまっています。

(4)家族信託の活用例

例えば親族間,夫婦間,兄弟間で共有している不動産がある場合に,同居している親族や不動産管理に詳しい親族に,その不動産の管理権のみ信託します。すると,これまでは共有者の過半数が手続きに関与しなければならなかった管理行為を,受託者一人で行う事ができるようになります。管理行為のみですので,受託者は勝手に処分することはできません。また,その収益権や共有者に相続が発生した時の財産権は受託者に移りませんが,管理は停滞する事なく継続できます。

 

7.家族信託を行うときの注意点

高齢化社会を反映して,専門家のみならず,様々なメディアにおいても相続対策についてその必要性が唱えられています。「家族信託」というのは,その親しみやすい名前からか,多くの方に浸透し,制度を利用したいというお話を受けることもあります。しかし,私の個人的な意見ですが,信託制度は相続対策,認知症対策,財産承継の一つの手段であるべきだと考えます。一見万能に見える信託制度ですが,上記のようにデメリットももちろんあります。ご本人の状況によっては,信託にこだわる余り,過分な費用を要する場合もあります。信託ありきではなく,みなさんの実情に合った相続対策を考える必要があると考えます。
また,信託は,相続関係に大きな影響を与えることが少なくありません。受託者となる親族の方の,信託制度への理解も不可欠です。後々の紛争防止の観点からも,親族の方々の理解の下に制度を利用する事をお勧めします。

 

8.家族信託を司法書士へ依頼する方法

信託は,これまで述べたその制度の性質や費用体系からお分かりの通り,ご本人と専門家,受託者の深い信頼関係によって成り立ちます。また,数ある相続対策,認知症対策の一つの手段として考えるべきだと思います。ひとつの手続きありきでなく,ご本人の状況を詳しく聞き取って,最適な手続きを提案してくれる司法書士に依頼することが重要だと思います。
また,信託制度の利用を考えていること,その際に要する費用が他の手続きの場合とどう違うのかを遠慮なく聞くべきです。その際には,財産状況が分かる資料等が必要になりますし,税理士の方の意見が必要になる場合もありますので,相談に行く前に確認した方がいいでしょう。