【司法書士監修】遺産相続の手続きを自分で行う手引きをすべて公開

「相続の手続きを専門家に相談したらあまりに高い、どうしよう」とお考えの方もあるかと思います。本記事では、専門家に依頼しないことを前提に相続の手続きをする方法をまとめていきます。

 

1.遺産相続手続きを自分でやる方法

 

(1)自分で遺産相続の手続き 遺言書の有無の確認を行う

相続手続きをするスタートは、故人の遺言の有無を確認することです。

遺言を残されていれば、遺言相続の相続手続きとなり、民法が定めている相続分のルールなどに優先して遺言どおりの手続きをすることになるためです。

仮に、遺言がないと思っていて、後日、遺言が発見されたというような場合には、相続手続きが間違っていたということで、手続きのやり直しが必要になったり、トラブルの元となったりします。

遺言書は昭和64年1月1日以降に公正証書で作成されているものであれば、公正証書遺言検索システムで調べることができます。

問題は、公証役場を利用していない自筆証書遺言の場合です。これは故人の遺品をすべて探して、有無を確認する必要があります。自筆証書遺言は、例えばノート中に挟まっていたというケースなどもあります。自筆証書遺言がないかどうか、しっかりと探しましょう。

なお、自筆証書遺言が発見できたら、故人の最後の住所地の家庭裁判所で検認の手続きを取る必要がありますのでご注意ください。

 

(2)自分で遺産相続の手続き 相続人の調査を行う

相続人の調査は相続手続きの中でもっとも手間がかかる部分です。

基本的には故人が生まれてから亡くなるまでの戸籍をすべて集めて相続人を調べる必要があります。

戸籍の収集は、遠方の場合には事前に電話で市役所に問合せをして、定額小為替や免許証のコピーなどを返信用封筒と一緒に入れて郵送でやりとりをすることになります。

相続人調査の手続きでは、市区町村の合併や相続人の多さなどで戸籍収集に数ヶ月程度かかるケースもあります。

また、戦火等で消失している場合には、市町村長による「除籍等の謄本を交付することができない」証明書がないと相続登記ができません。

戸籍を収集したら、戸籍の読解にもある程度の労力が必要となります。

戸籍の文字が古いものであると、字が潰れているなどして読めないということはよくあります。また、「分家」や「家督相続」など旧民法の制度の知識がないと、次の戸籍をどこの市役所に請求すればよいかわからないということもあります。さらに、外国籍の戸籍を収集する必要が生じることもあります。

このように、戸籍の収集と読み取りはもっとも手間がかかる手続きですので、コツコツと戸籍を収集し、読み取るという作業を行っていく必要があります。

 

(3)自分で遺産相続の手続き 相続財産を調査する

相続財産の調査も必要です。相続財産の調査については、

・不動産:名寄せ(課税台帳の写し)、納税通知書

・預貯金:通帳、残高証明書

・自動車:車検証

・有価証券:残高証明書

・負債:債務残高証明書

などによって調査します。

相続財産の調査でもっとも注意したい点は、負債のチェックです。

故人がご商売をされていたような場合には、意外な負債があるケースがあります。この負債が預貯金額などと比べて圧倒的に大きい場合には、相続放棄の手続きをスピーディに行わなければなりません。

また、商売を引き継ぐような場合には不動産の抵当権登記の確認も必要です。不動産に根抵当権という権利が設定されている場合には、引き続き根抵当権の枠を取引のために利用するために6ヶ月以内に登記手続きが必要となる場合もあります。

 

(4)自分で遺産相続の手続き 遺産分割協議書の調整をする

遺産分割協議書は、戸籍で確定した相続人の間で、遺産をどのように分けるかの話し合いをまとめた書類です。この遺産分割協議書は相続登記や税務申告など様々な場面で必要になってきます。

遺産分割協議書は、相続人全員の実印と印鑑証明書が必要です。1人でも相続人を欠いて遺産分割をしても、その遺産分割は無効になってしまい、当然遺産分割協議書も無効な書面となってしまいます。

相続人全員で納得して遺産を分ける協議を行い、遺産分割協議書に実印をつく必要があります。なお、遠方にお住まいの方がいる場合には、同じ内容の書類を複数枚作成して、郵送でやり取りをして、相続人ごとに署名押印してもらったものでも、有効です。(昭和35年12月17日民事甲3327号民事局長回答

 

(5)自分で遺産相続の手続き 単純承認・相続放棄・限定承認の選択

単純承認とは、プラスの財産(現金、預金、不動産など)もマイナスの財産(負債、保証人の地位など)もどちらも承継するということです。これは、相続開始から3ヶ月経過で自動的に単純承認となります。

一方で相続放棄は、プラスの財産もマイナスの財産も一切承継しないということです。原則として相続開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きが必要です。相続放棄はマイナスの財産が大きい時に利用することが効果的です。

限定承認は、個人の遺産の範囲で負債を負うという手続きです。これも家庭裁判所で行います。限定承認はあまり利用されていませんので、実際には単純承認か相続放棄ということになりますが、遺産の状況によってどちらかを選択し、相続放棄の場合には3ヶ月以内に手続きをします。

 

(6)自分で遺産相続の手続き 相続税を計算する

相続税は少なくとも正味の遺産が3600万円以上ある場合に発生します。

正味の遺産から、基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引くなどをして税額を計算します。

相続税の計算は極めて複雑ですので、自分でされること極力避けたほうがいいですが、どうしてもご自身でされる場合には税務署との複数回のやり取りが必要不可欠となります。

 

(7)自分で遺産相続の手続き 遺産分割協議書を作成する

上で作成した遺産分割協議書は税金の手続きでも必要となるのでしっかりと保管しておきましょう。

 

(8)自分で遺産相続の手続き 相続登記を行う 不動産や動産の名義変更

不動産がある場合には相続登記をしておく必要があります。

相続登記をする場合には、

・故人の出生から死亡まですべての戸籍(相続関係説明図をつけて原本還付を求めるのが一般的です)

・相続人となる人の現在の戸籍

・新たに名義人となる人の住民票

・遺産分割協議書

・固定資産税評価証明書

・固定資産税評価証明書の4/1000の納税額(登録免許税額)

を添付して、登記申請書を作成して申請をします。

 

(9)自分で遺産相続の手続き 相続税の申告を行う

相続税の申告は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月です。この間に遺産分割も整えておく必要があります。遺産に非上場の株式や評価がしにくい不動産などがある場合には、遺産の価格の算定に時間がかかってしまうことがあるので注意が必要です。

 

2.自分で相続手続きを行うときの注意点

 

つい忘れてしまいがちな手続きとして以下の3つを注意しましょう。

 

(1)死亡届は死後7日以内に必ず届ける

死亡届は届出をしないと、火葬の許可が出ませんので、必ず届け出る必要があります。

 

(2)年金や介護保険の停止または解除手続き

資格喪失の手続きをして受給を止めます。比較的簡易な手続きですが、つい忘れてしまいがちになります。

 

(3)住民票や、世帯主の変更を届ける

故人の住民票は除票として別に保管されることとなります。世帯主の変更を届出をしていないと相続登記の際に住民票の変更ができていないと申請ができないなど不便が生じます。

 

3.まとめ

 

自分自身で相続後の手続きをするのは決して不可能ではありません。しかし、かなりの労力と手間が掛かってしまうことは否定できません。

もっとも注意したい点は、「遺産調査で負債がないかの確認をしっかりとすること」と「遺産分割の話し合いを納得ができるようにすること」の2点です。

負債があったまま、3ヶ月を経過してしまうと、原則として単純承認とみなされて、負債も含めて相続をしてしまいます。いわば、「借金が降ってきた」という形になりますので、負債がないかどうかはしっかりと確認することが大切です。

また、遺産分割は全員が納得しないままで書面だけを作成しようとすると、納得がいかない相続人の方がおられると、相続争いのもととなります。

相続人の間では(相続分が違うということはあっても)相続の権利という意味では全員平等です。全員が納得できる形で話し合い、事前の根回しをしっかりとしておかないと、「遺産分割協議書に判を押さない」などという形でトラブルが発生し得ます。

ご自身で相続手続きをされる場合には、この2点には特に注意してください。

 

事例

「専門家に依頼すると高い」「自分でやるには面倒」という理由で、相続手続きを放っておく方が稀にいらっしゃいますが、これは得策ではありません。なぜなら、相続手続きというのは放っておけば放っておいた分だけ時間も手間も費用もかさんでいくものだからです。

 

当職が経験した事例で、不動産の相続手続きが30年間放置されていた事例があります。先代、先々代の時代から放置されていた事例ですが、依頼者は大変責任感の強い方で「子の世代に残さず、自分の世代できれいにしたい。」とご相談を受けました。

当職が相続人を調査したところ、39名にも及ぶ法定相続人の存在が判明しました。依頼者はその一人一人に手紙を書き、一歩ずつ手続きを進めていきました。北海道に住む相続人から手紙の返事が戻って来ないときには、依頼者は東京から北海道まで直接訪ねてお話しをされていました。

 

私も解決に向けてお手伝いしましたが、すべての相続手続きが完了したのは相談を受けてから5年後のことでした。しかもこの事例は、相続財産はお世辞にも多いとは言えないものでした。

 

いつかはやらなくてはならない相続手続き。最も手間もかからず、時間もかからず、費用もかからないのはいつだって今この瞬間です。ご自身で手続きをやるにしても、専門家に依頼するにしても、できるだけ早く取り掛かることが大切です。

【行政書士監修】遺品整理における故人の銀行口座の処理方法について解説。

家族が亡くなった場合、葬儀費用や医療費の支払いなどにまとまったお金が必要となります。また故人の預金は相続財産となり(※これについては後述5参照)、誰がいくら相続するのか決めなければなりません。そのため、どの銀行にどれくらい預金があるのか把握することは大切です。

遺品整理における預金口座の取扱い及び処理の方法についてご紹介します。

 

1.  遺品整理とは

 

  1-1. 遺品とは

遺品とは、故人が生前住んでいた部屋や家に残されたものをいいます。

遺品には、タンス、ベッド等の家財道具や冷蔵庫、テレビ等の家電製品、衣類など日常生活で使用していたものや、写真、思い出の品等や、保険証やパスポート等の個人情報に関わるものや、家の権利書、株券といった重要書類があり、その種類は多岐に渡ります。「遺品」という言葉は、通常は、これらの動産や書類の総称として使われています。

 

  1-2. 遺品整理の意味合い

遺品整理とは、単に残されたものを全てゴミとして廃棄することではありません。故人が残したものは故人の所有に属していたものですから、遺品整理とは、法的には相続財産を分割するための準備行為、及び処分行為です。他方で、現実的には、遺品の中から思い出の品や必要なものに分別して整理し、不要なものは処分し、綺麗に片づけることをいいます。

 

2. 故人の銀行口座の整理

 

口座の凍結を解除し、預金を相続人間で分配することが基本的な流れとなります。

 

  2-1. 銀行口座の凍結

銀行口座は、銀行取引約款に記載されているように、名義人のみが利用できます。亡くなった方名義の口座は、どなたも利用することができません。

そして、銀行が口座の名義人が亡くなった事実を知った時から、銀行口座は凍結されます。

 

では、何故口座を凍結する必要があるのでしょうか。

故人の預金は相続財産であり、相続財産は共同相続人間で分割する相続の手続をしなければなりません。したがって、相続人又は第三者が預金を勝手に引き出し、自分のものにしてしまうことを防止し、相続トラブルを予防するために銀行口座を凍結する必要性があります。

銀行としては、相続トラブルに巻き込まれたり、後に責任を問われないように、死亡の事実を知ったときから銀行口座を凍結しています。

 

  2-2. 口座凍結解除の方法

人が亡くなると、市区役所へ死亡届を提出することになっています。しかし、市区役所へ死亡届を提出したとしても、それが各金融機関に通達されることはありません。したがって、死亡届を提出したからといって、直ちに銀行口座が凍結されることはありません。遺族が速やかに銀行へ亡くなった事実を伝えることで、これが行われます。通常は、家族が故人の死亡の事実を銀行に伝えることにより、銀行は口座名義人が亡くなった事実を知り、口座を凍結します。

 

  2-3. 口座凍結解除の具体的な手続き

口座凍結解除には、一定の手続きが必要です。

銀行所定の用紙に必要事項を記入し、必要書類を添えて、書類を提出します。

遺言書の有無で必要書類は異なります。

 

・遺言書がある場合の必要書類

①遺言書

②被相続人(故人)の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書(死亡の記載のあるもの)

③その預金を相続

する方(遺言執行者がいる場合は遺言執行者)の印鑑証明書

 

遺言書の種類及び内容によって、以下の書類が必要な場合もあります。

④遺言執行者の選任審判書謄本(裁判所で遺言執行者が選任されている場合)

⑤検認調書または検認済証明書(公正証書遺言以外の場合)

遺言書の保管者またはこれを発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、その「検認」を受けなければなりません。

検認とは、相続人に対し遺言の存在およびその内容を知らせるとともに、現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。また、封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人等が立会いをしたうえで、開封しなければならないことになっています。

 

・遺言書がない場合の必要書類

  • 遺産分割協議書(相続人全員の署名・捺印があるもの)

遺言書がない場合には、遺産分割協議書を用意します。遺産分割協議書とは、遺産分割の内容及び方法について相続人全員で話し合って、相続人全員が合意に達した遺産分割の内容及び方法を記載した書面をいいます。

②被相続人(故人)の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡までの連続したもの)

③相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書

④相続人全員の印鑑証明書

 

口座凍結解除に必要な手続きには、上記の書類の他にも書類を要求されることがあります。

例えば、「相続に関する依頼書」のような表題の書類を要求されることがあります。これは、遺産分割協議書に記載した内容の預金の払出しを依頼するものです。また、遺産分割した預金の振込先情報として、相続人の口座番号等を記載した「振替依頼書」のような表題の書類が必要となる場合もあります。

 

  2-4. 凍結解除までに必要な期間

銀行によって異なりますが、通常は、必要書類を提出してから1〜2週間程度かかるようです。即日相続人の口座に振り込んでくれるところもある一方で、3週間程度先となるところもあります。

期間については、故人の預金口座がある銀行に直接問い合わせをしてみることをおすすめします。

 

3. 故人の銀行預金口座の調べ方

 

    3-1-1. 金融機関への問い合わせ

故人の銀行口座が分からない場合にはどのようにしたらよいのでしょうか。

全国には多種多様な金融機関があります。それらすべてに対して、一括して一度の照会で故人の口座を検索するシステムは、今のところありません。したがって口座の有無及びその残高は、それぞれの金融機関に問い合わせて確認することが、基本的な調べ方となります。法定相続人は、銀行に対して口座の残高や取引履歴の照会を行うことができます。

 

    3-1-2. 預貯金照会の手続に必要な書類

紹介手続をする者が法定相続人であることを示すための、以下の書類を持参します。

①被相続人(故人)の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書(死亡の記載のあるもの)

②照会手続をする者が相続人であることがわかる戸籍謄本

③照会手続をする者の印鑑証明書及び実印

④照会手続をする者の本人確認書類(免許証やパスポート等)

 

    3-1-3. 法定相続情報証明制度の活用

現在、相続手続では、被相続人(故人)の戸籍謄本・除籍謄本等の束を、相続手続を取り扱う各種窓口に何度も出し直す必要があります。

法定相続情報証明制度とは、登記所(法務局)に戸籍謄本・除籍謄本等の束と、相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を提出すると、登記官がその一覧図に認証文を付した写しを交付してくれる制度です。交付手数料は、無料です。

その後の相続手続は、法定相続情報一覧図の写しを利用することにより、戸籍謄本・除籍謄本等の束を何度も出し直す必要がなくなります。戸籍謄本・除籍謄本等を何度も取得するのは、時間もお金もかかります。この手続を利用すれば、期間の短縮になり、戸籍謄本・除籍謄本等の取得回数も減らせるので費用の削減にもなります。

 

  3-2. 自分でできる預金口座の探し方

 

    3-2-1. 通帳、郵便物等を確認

遺品整理の過程で、故人名義の通帳やキャッシュカード、または銀行からの郵便物を探します。全く手がかりになるものが存在しない場合には、ご自宅や勤務先の近くにある各銀行に直接問い合わせてみましょう。

 

    3-2-2. ネット銀行の場合はメール履歴を確認

近年利用されているいわゆるネット銀行では通帳やカードが作られないことも多いため、普通の銀行のように、遺品整理の過程で、口座の存在がわかることは、あまりありません。

ネット銀行の取引はインターネット上で行われますので、故人の使用していた端末のブラウザのブックマークや履歴に、ネット銀行を利用していた形跡があるかもしれません。また、ネット銀行ではメールによりキャンペーンなどの案内を頻繁に送付しているため、故人のメールを確認することにより預金口座を発見することができる可能性が高いです。パソコン、スマートフォンやタブレットを処分してしまう前に、一度確認してみることをおすすめします。

 

    3-2-3. トークン、パスワードカードを確認

ネット銀行によっては振り込みをする場合などに必要となるパスワードなどを「トークン(パスワード生成機)」で管理している場合があります。また、ワンタイムパスワードを作成するアプリを使用している場合もあります。故人の遺品中にトークンがないか、故人のスマートフォンやタブレットなどにワンタイムパスワードのアプリがインストールされていないか、確認してみましょう。

 

  3-3. 相続の専門家の力を借りる

預金口座を複数所有して、それぞれに預金がある場合が多いです。故人の取引をしていた銀行の数に応じて、残高の確認や口座凍結の手続をすることになります。また、預金口座がどこにあるか分からない場合には取引していた可能性のある銀行ごとに照会する必要があります。銀行ごとに書類を準備し、何度も時間を作って平日の銀行窓口が空いている時間に訪問して手続をすることは、大変です。

弁護士、司法書士、行政書士など相続の専門家に、これらの手続きを一括して代理して行ってもらうことが可能です。負担を軽減し、後のトラブルを防止するためにも、プロの手を借りるのもよいでしょう。

夫婦の相続であればともかく、親子や兄弟相続の事例では、核家族化がすすみ親子や兄弟姉妹の会話も十分でない昨今、被相続人の預金口座がどこにあるかあたりをつけるのは非常に困難かと思います。このあたりをつけることは、専門家の経験が特に生かされる部分かと思います。よく経験するのは、相続人(依頼者)から「どこそこの銀行との取引はない」といわれていても、経験上銀行口座がありそうな場合に、調査照会をすることで口座が見つかることがあります。なお、こういった場合預金残高が多額でない場合が多いです。

 

4. 遺品整理の注意点

 

銀行口座の預金は、遺産分割の対象となります。

全ての遺産分割手続きが終わった後に預金口座が見つかった場合、遺産分割をまたやり直さなければならない場合もあります。また、FXや先物取引などの証拠金取引を持っていたら、知らない間に負債となってしまっている可能性もあるため、このような場合にはなるべく早く対処する必要があります。

また、5で後述するように、故人の口座の預金は、葬儀費用等の相続手続に必要となったお金などを精算する原資となります。

さらに、2016年12月「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律(平成28年法律第101号)」が国会で可決され、2018年1月より施行されました。この法律により、2009年1月1日以降の取引から10年以上、その後の取引のない預金等(休眠預金等)は、民間公益活動に活用されることとなります。ここで、休眠預金等とは預金者等が名乗りを上げないまま10 年間放置され、入出金等の「異動」がない預金のことをいいます。したがって、故人の預金口座に気づかず長年放置していると、その口座の預金は、民間公益活動費として使用されることになってしまいます。

以上のように、故人の銀行口座を漏れなく把握する必要があるといえます。

 

5. まとめ

 

家族が亡くなった場合、葬儀費用や医療費の支払いなどまとまったお金が必要となります。

このような費用は、相続人の誰かが立替えておき、後で精算するという処理が現実的です。

そして、相続人のうちひとりがまとめて立替えをしていた方が、後の清算がスムーズかつ明確に行える場合が多いでしょう。

また、故人の預金は相続財産となるため、きちんと手続きをしなければ争いのもとになってしまうこともあるでしょう。

 

故人の預金口座については、まず、故人のほかの遺品や生活状況から口座の存在をしめす手がかりを探すことが重要です。これがすべてのスタートとなります。

あとは、銀行に必要な資料を確認し、必要な戸籍謄本等の資料を集め、遺産分割協議書を作成して、その他銀行から要求された用紙に必要事項を記入して手続きをします。

遺品整理における銀行口座の処理は、預金が遺産の調整に非常に重要な役割を果たすことから、大切な手続きになります。そのため、今回ご紹介した方法をご参考にしてはいかがでしょうか。

 

故人の銀行口座についての一般的な説明は、以上です。

 

(実務上の所感)

凍結解除に必要な書類は、一般的な説明としては、上記のとおりすべての銀行に共通している部分が多いですが、個別具体的な事案では、銀行が違えば手続きも若干異なり、また、同じ銀行でも従来とは若干異なった扱いとなっているところもあります。総じて、銀行口座の手続きは、まちまちで流動的だと思います。

 

口座凍結解除等の手続には、遺産分割協議書と印鑑証明書が必要です。印鑑証明書が必要だということは、押印は実印でなされなければなりません。

現実問題としては、遺産分割協議を成立させること自体が、それほど容易なことではありません。例えば、遠方に相続人がいる場合、、相続人が一堂に会することが難しく、合意に達するのは容易ではありません。

また、遺産分割協議書には、相続人全員の実印による押印と印鑑証明書の添付が必要ですが、銀行の数だけ印鑑証明書を要求されるのが通常の取り扱いです。印鑑証明書を複数準備することになりますが、日常生活ではそのようなことはあまりないため、抵抗感を示す人が多いです。

さらに、書類の訂正(訂正箇所すべてに訂正印として全員の実印を押す)が必要となる場合には、相続人全員のもとを周りますが、これは骨が折れますし、時間もかかります。

遺産分割協議書の作成と口座凍結解除には、あらかじめ銀行間をまわって必要な書類を問い合わせ、書類を整理して準備をし、その後にまとめて手続きを行うのがよいでしょう。

 

このような苦労を少しでも減らすためには、遺言書を用意して、預金について記載しておくことが効果的です。その場合、遺言書の記載方法としては、「すべての預金を○○に相続させる」としておくよりも、銀行と口座番号を特定しておいた方が、手続がスムーズにいくことが多いです。

 

凍結解除についてのスムーズな対応、必要書類の減らし方、遺産分割のやり直しや協議書の訂正が必要となる場合への対応、遠方に相続人がいる場合への対応については、各専門家は独自のノウハウをもっています。弊所では、特に関東以外の遠方にいる相続人やおいめいの関係にあたる者が共同相続人となる場合など、通常困難な部類に属する相続事案について解決事例が複数ございます。もっとも、個別具体的な事情をお聞きしてからでなければ、不正確なアドバイスとなりかねませんので、この点につきましては、よろしければ直接お問合せくださいませ。

 

参考文献

内藤久『もしものときに迷わない遺品整理の話』SBクリエイティブ株式会社、2014年

吉田太一『親の家を片付けるなら「プロ整理業者」に任せなさい』株式会社主婦の友社、2015年

木村榮治『プロに学ぶ遺品整理のすべて』WAVE出版、2015年

赤澤健一『遺品は語る〜遺品整理業者が教える「独居老人600万人」「無縁死3万人」時代に必ずやっておくべきこと』株式会社講談社、2016年

古田雄介『ここが知りたい!デジタル遺品〜デジタル遺品・資産を開く!託す!隠す!』株式会社技術評論社、2017年

【弁護士監修】土地(不動産)の相続を孫にさせたいときどうすればいいの?

 「孫が家を建てるから、自分の持っている土地を相続させたい」、「孫の就職が決まったので、自分の投資用マンションを早めに相続させられないだろうか」とお考えの方がいらっしゃるかもしれません。

 今回は、土地(不動産)の相続を孫にさせたいときどうすればいいのかについてお話します。

 

1.土地(不動産)を孫に相続させる方法

 

 まず民法によると、相続人となれるのは被相続人の配偶者と子です。

 孫は子が非相続人より先に亡くなっていた場合に代襲相続人として相続することができるようになります。

 したがって、祖父母が土地(不動産)の相続を孫にさせたいと考えても、子どもが元気でいれば通常の形では相続させることはできません。

 

2.土地(不動産)の相続を子が放棄しても、孫は代襲相続できない

 

 それでは、子が自分の相続を放棄してその相続分を孫に相続させたいといったらどうなるでしょうか。

 民法には、「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。」とされています。

 これは子が先に亡くなった場合と同じだから、子が相続放棄をすれば孫に相続させることができるのではないかとも思えますが、子の相続放棄は孫への代襲相続の対象となっていませんので、子が相続放棄しても孫は代襲相続することはできません。

 

3.土地(不動産)を孫に相続をする方法は養子縁組

 

 それではどうすれば孫に自分の土地を相続させることができるのでしょうか。

 その方法は、孫を被相続人(祖父や祖母)の養子とすることです。

 民法では、「養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。」とされていて、孫を養子にすれば配偶者や子と同じ相続人となることができます。これは孫を複数人養子にしても同じです。

 「それなら孫を何人か養子にすれば、相続税がかからないようにできるのではないか」とお考えの方がいらっしゃるかもしれませんが、相続税の計算上は相続人に加算される養子の数は、被相続人に実の子供がいる場合は1人まで、被相続人に実の子供がいない場合は2人までと限度がありますのでご注意ください。

 

4.土地(不動産)を孫に相続するのと実質的に同じような効果を生む方法

 

 養子にするのではなく、他になにか孫に土地(不動産)を相続するのと実質的に同じような効果を生む方法はないのでしょうか。

 

  土地(不動産)を孫に貸す

 まず考えられるのが、例えば孫が家を建てる際に祖父母が敷地を無償で貸すことです。

 無償で貸した場合は「使用貸借」となり、贈与とはみなされません。

 当面祖父母が孫に土地を無償で貸し、その土地が相続を重ねて最終的に孫に相続されるようにすればいいことになります。

 ただし、祖父母から孫へ市価より安く土地を売ったり、安い賃料で貸したりする場合は贈与とみなされる可能性がありますのでご注意ください。

 

  遺贈による方法

 民法では、「遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。」とされていて、遺言で特定の土地(不動産)を特定の孫に遺贈することができます。土地を孫に譲るという点では、相続と同様の効果を生むことができます。

 

  相続時精算課税の制度

 平成27年1月祖父母から孫への贈与も対象となった「相続時精算課税の制度」をご紹介します。

 相続時精算課税の制度とは、「原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。」

 贈与財産の価額の合計額が2,500万円以内の場合、贈与税がかからなくなり、2,500万円を超えても一律20%の税率で済みます。

 また、これは相続時に精算されることから、この制度を利用すれば実質的に特定の不動産を孫に相続させたと同じ効果を生みます。

 

5.土地(不動産)を孫に相続させるときは相続登記の変更を行う

 

 次に、相続によりその土地(不動産)を孫のものとして他人に対抗するためには所有権の名義変更登記を行うことが必要です。

 まず、登記申請書の作成です。

 登記の目的、原因、権利者、義務者、課税価額、登録免許税、不動産の表示といった項目を記載する必要があります。

 添付情報として登記識別情報(又は登記済証)、登記原因証明情報(受贈者)、代理権限証明情報、印鑑証明書、住所証明情報等が必要となります。

 

6.土地(不動産)の相続を孫にするときに発生する税金

 

 土地(不動産)を相続する場合は、相続により取得する財産の価額から基礎控除額を差し引いた課税遺産総額に応じて相続税を納める必要があります。

 

 養子にした孫が払う相続税額は、「財産を取得した人が被相続人の配偶者、父母、子供以外の者である場合、税額控除を差し引く前の相続税額にその20%相当額を加算した後、税額控除額を差し引きます。」となっていますので、法定相続人が払う相続税より税率が高くなりますのでご注意ください。なお、代襲相続の場合は加算の必要はありません。

 また、通常土地の売買には不動産取得税が3%課せられますが、相続の場合は課税されません。

 登録免許税額は必要です。相続の場合は0.4%です。

 

7.土地(不動産)を孫に相続させるときの節税対策

 

 相続税の一般的な計算は、各人の課税価額の計算、相続税の総額の計算、各人ごとの相続税額の計算、各人の納付税額の計算の順に行われます

 相続税は、課税価額の合計額から基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引いて課税される遺産の総額を計算しますので、相続税を節税するためには、相続人を増やすか課税価額を減額すると相続税を節税できることになります。

 相続税の計算上は相続人に加算される養子の数は、被相続人に実の子供がいる場合は1人まで、被相続人に実の子供がいない場合は2人までということは先に述べました。

 直接孫に相続させるときの対策にはなりませんが、孫を養子にすれば相続税総額の節税にはなります。

 

8.土地(不動産)を孫に相続させるときの節税対策の具体例

 

 土地(不動産)を孫に相続させるときには「小規模宅地等の特例」が大きな節税方法になります。

 「小規模宅地等の特例」は、亡くなった被相続人所有の家屋をそこで一緒に暮らしていた配偶者や孫等の親族等が相続する場合など、土地の課税価額が減額される制度です。

 対象は、「被相続人等の事業の用に供されていた宅地等」及び「被相続人等の居住の用に供されていた宅地等」です。

 このうち一定の要件に該当する土地について、限度面積までの部分について相続税の課税価額が50%から最大80%減額されます。(詳しくは国税庁のホームページを御覧ください。)

http://www.mlit.go.jp/

 また、課税価額を減額するためには、更地を所有している場合、賃貸マンションなどの建物を立てる方法も有効です。

 貸家が建てられている土地の評価額は、借地権及び借家権の割合で評価が下がることにより、更地で所有しているよりも課税価額が下がります。

9.土地(不動産)を孫に相続させるときの注意点

 

 相続でのトラブルをみなさんよく耳にされると思います。兄弟姉妹で遺産をめぐって争う事例が多くあります。

 そのような中、子どもを飛ばして孫に相続させるのですから、孫の親である子どもたちとのコミュニケーションをより以上緊密にして、相続が円滑に進むよう心がけましょう。

 

10.まとめ

 

 土地(不動産)の相続を孫にさせたいときどうすればいいのかについてお話してきました。

 自分の持っている土地を孫に相続したり相続と同様の効果を持つ方法としては、養子縁組、使用貸借、遺贈、相続時精算課税などがあります。

 みなさんそれぞれの事情があり、家族構成や子どもたち・孫たちとの距離感もさまざまですので、一概にどの方法をとったほうがいいとは言えません。

 孫に不動産を相続させる場合、いろいろな角度から検討し家族が納得してもらえるような方法を選んでください。

 

【弁護士監修】不動産を贈与するときにするべきこととは?メリット・デメリットや節税対策は?

いま持っている土地を子どもに贈与して家を建てる支援をしたいけど、どんな手続があるのだろう。税金はどの程度かかるのだろう、何か節税できる制度はないのだろうかとお考えの方がいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、不動産を贈与するときにするべきこと、贈与するときのメリット・デメリット、節税対策についてのお話です。

 

1.不動産の贈与とは?

 

不動産の贈与とは、贈与により土地や建物などの不動産の所有権を別の者に移すことです。贈与を原因とした土地・建物の登記の名義変更を行うことが必要です。

贈与は「生前贈与」「死因贈与」「負担付き贈与」の三種に分類できます。

「生前贈与」は所有者が存命中に所有権を移転することです。「死因贈与」は所有者が死んだら所有権を移転することを生前に約束するもので、遺言と同じ効果があります。「負担付き贈与」は所有権移転するに際して金銭の負担や土地の無償使用などの条件を課すことです。

 

2.不動産を贈与することにより発生する影響とは?

 

不動産を贈与した場合、最も大きい影響は税金が課せられるということです。

「生前贈与」は不動産を贈与された者に贈与税が課せられます。「死因贈与」は不動産を贈与された者に相続税が課せられます。「負担付き贈与」は贈与された不動産の評価額から負担すべき債務費を差し引いた金額に対して贈与税が課せられます。

またいずれ場合も、贈与された者は不動産取得税や土地や建物登記の名義変更手続で登録免許税がかかります。

 

3.不動産を生前贈与するメリット・デメリット

 

それでは不動産を生前贈与した場合、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

 

  メリット

(1)自分の意思どおりに不動産を贈与できる

遺言で不動産を相続させることは可能ですが、相続には遺留分というものがあって、他の相続人が最低限の取り分を請求すると、必ずしも被相続人の意思どおりにはならない可能性があります。

その点生前贈与だと自分の意思どおりの贈与ができます。

 (2) 配偶者控除で節税ができる

相続税に比べて贈与税の方が負担が大きいので、一般的にはメリットがないのですが、「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」の制度を利用すれば節税をすることができます。

婚姻期間が20年以上の夫婦の場合に適用され、2千万円まで非課税になります。さらに1年110万円の基礎控除と合わせて2,110万円が非課税となります。

この制度については後の項で詳しくご説明します。

  (3) 現金を直接贈与するよりも節税効果がある

不動産の評価額は実勢価格の60%~80%になるため、直接現金で渡すより節税効果があります。

  (4) 将来土地の高騰が明白な場合は節税効果がある

市街化調整区域から市街化区域への編入が見込める土地や新駅予定地の隣接地などの将来土地の高騰が明白な場合は、評価額が上がる前に贈与した方が、結果的に節税になる場合があります。

  (5) 所有権の移転登記がスムーズにできる

相続による所有権の移転登記は当事者間の契約書があればスムーズに所有権を移せます。

 

  デメリット

(1) 税負担が大きい

相続税に比べて贈与税の方が税率が高いために税負担が大きくなります。

 (2)  土地が大幅に下落した場合の負担差が大きい

贈与税の負担が大きいのを承知で贈与を受けた場合であっても、その後土地が大幅に下落すると、結果的に贈与の時期を見誤ったということになります。

 

4.不動産の生前贈与税にかかる税金とは?

 

不動産を生前贈与された場合は贈与税が課せられます。また不動産取得税や名義変更登記で登録免許税がかかります。

このうち最も影響の無大きい贈与税についてみていきましょう。

税率は、国税庁の速算表で以下のとおり示されています。相続税などに比べて高い税率が設定されています。

 

 基礎控除後の課税価格 税率 控除額(一般用)
 200万円以下 10% ―
 300万円以下 15% 10万円
 400万円以下 20% 25万円
 600万円以下 30% 65万円
 1,000万円以下 40% 125万円
 1,500万円以下 45% 175万円
 3,000万円以下 50% 250万円
 3,000万円超 55% 400万円

 

上の速算表は、一般用ですが、直系尊属(祖父母、父母)から20歳以上の者への贈与は、以下の「特別贈与財産用」の表が適用されます。控除額が一般用に比べて多いので一般用に比べて税負担は軽くなります。

 

 基礎控除後の課税価格 税率 控除額(特別贈与財産用)
 200万円以下 10% -
 300万円以下 15% 10万円
 400万円以下 20% 30万円
 600万円以下 30% 90万円
 1,000万円以下 40% 190万円
 1,500万円以下 45% 265万円
 3,000万円以下 50% 415万円
 3,000万円超 55% 640万円

 

それでは贈与税の負担がどれくらいなのかみていきましょう。

贈与税の課税対象になる価額は、

贈与財産価額-110万円(基礎控除)=基礎控除後の課税価格

で決まります。

贈与財産価額が5,000万円だとすると

5,000万円-110万円=4,890万円の計算結果から

基礎控除後の課税価額は、4,890万円になります。

 

次に税額を算出しましょう。

祖父から孫への贈与だとすると特別贈与財産用の表が適用されます。­税額は〈課税価格×税率-控除額〉で算出します。基礎控除後の課税価額が4,890万円だと、表の一番下が適用されますから、

 

4,890万円×55%-640万円=20,495,000円の計算結果により、

税額は2,049万5千円になります。

 

5.不動産の生前贈与をする時の手続方法

 

不動産の生前贈与をするときの手続は、法務局で土地と建物の名義変更登記を行います。

手続を開始するには、まず当該不動産の登記事項証明書を法務局で入手して、記載事項が現状と変わっていないか確認をします。最初に登記した時点から住所が変更していたり、結婚によって名前が変わっていたりしている場合には、先に住所変更登記や氏名変更登記が必要になります。

所有権移転登記申請をする際には、添付書類として贈与契約書が必要になります。任意の書式ですが、住所・氏名・物件の表示はもちろん、いつ誰が何を贈与したのかの表示が必要です。

準備が整えば、所有権移転登記申請書に必要事項を記入して贈与契約書などの添付書類を添えて法務局に申請します。

 

6.不動産を生前贈与する時の節税方法

 

不動産を生前贈与する場合の節税方法をご紹介します。

 

  6-1.配偶者控除を利活用する

婚姻期間が20年を超えた夫婦であれば、2千万円まで控除されます。さらに基礎控除年110万円を加えて最高2,110万円まで控除されます。

ただし自分が住むための居住用不動産であり、贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与を受けた者が実際に住み、その後も引き続き居住を続ける見込みであることが条件です。

この特例は、相続開始前3年以内の贈与財産は相続財産とするいう税法上の規定からも除外されていますから、相続直前の対策としても有効です。

 

  6-2.基礎控除枠を活用する

基礎控除年110万円以内の評価額の不動産を譲与する方法があります。相続税路線価が安い土地だと、ひとつの土地を数年間にわたって譲渡すれば全土地の譲渡が完了します。ただしそのつど分筆と変更登記が必要なので手間と手数料を要します。

 

  6-3..生前贈与は現金ではなく不動産を活用する

なにかの事情で資産を贈与する場合は、現金で渡すよりもマンションなどの不動産で渡した方が贈与税の節税になります。税制上不動産の評価額は相続税路線価で判断しますが、これは市場の実勢価格よりの60%~80%の価額になります。したがって課せられる税額も現金で渡すよりは安くなります。

 

7.不動産の生前贈与は相続時精算課税制度で節税する

 

相続時精算課税制度は、贈与を受けた際に本来かかるはずの贈与税を先送りにして、贈与者が亡くなった時点で相続税として納める制度です。贈与を受けた額が累計で2,500万円以下であればこの制度を適用できます。

 

  7-1.有効に活用すれば節税になる

相続時精算課税制度では 贈与した者が亡くなった時点で、相続財産と贈与財産の合算額が相続税の課税対象になります。一般的に贈与税に比して相続税の方が税率が低いため節税になります。

 

  7-2.デメリットがあるので慎重に判断する

相続時精算課税制度で注意すべきことは、いったんこの制度が適用されると、贈与者が亡くなるまで自動継続され、基礎控除(年間110万円)が適用されなくなる点です。基礎控除にも大きなメリットがあるので、どちらを選択するかは慎重に判断した方がいいでしょう。

また不動産の評価額が変動する点にも注意が必要です。税法上は不動産の評価額は贈与時で固定されます。評価額が贈与時よりも相続時に高騰していれば節税効果があったことになりますが、相続時に評価が下がっていれば事実上税金の負担が増えたことになります。

 

  7-3.相続税の申請が必要

相続時精算課税制度や配偶者控除の非課税枠制度は、何もしなくても勝手に非課税になるのではありません。贈与のあった年の翌年の3月15日までに贈与税の申告をして初めて非課税枠が適用されるます。申告が一日でも遅れると、この非課税枠制度が使えなくなるどころか、たちまち贈与税が課せられますから、必ず贈与税の申告をしましょう。

 

8.まとめ

 

不動産の生前譲渡について説明をしてきましたが、いかがでしたでしょうか。

不動産の生前譲渡は、税率の高い贈与税が課せられますが、しっかりと自分が渡したい人に不動産が引き継げるというメリットがあります。さらには、現金でそのまま渡すよりも不動産で渡した方が節税になります。

いくつかある非課税枠を上手に活用しながら、どのように不動産を譲渡するのか。あるいは相続するのか、じっくりと考えてみてください。

 

【弁護士監修】土地を贈与する時の手続方法を紹介。生前贈与のメリットとデメリットとは

土地などの価値の高い不動産を所有している場合、どういう方法によって子供や孫に渡そうと悩まれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。ご自分が亡くなられて相続で土地を引き継ぐ方法もありますが、土地の『生前贈与』を行うことで効率的に財産の分配を行うことができ、相続税の軽減になる場合もあります。今回は『生前贈与』の手続きやメリットにデメリットについてご紹介したいと思います。

 

1.  土地を生前贈与する時の流れ

 

『土地の生前贈与』と聞いて難しいのではないかと感じ、専門家の司法書士や弁護士に依頼する方もいらっしゃると思います。専門家に任せるのが一番ですが、専門家への報酬額が5万円から10万円程かかってきます。

土地の生前贈与の手続き自体は決して難しいものではありません。手続きの流れは以下の5つのステップです。

① 生前贈与の対象となる土地の現物を確認する。

② 贈与税がいくら位かかるか計算する。

③ 不動産贈与登記に必要な書類を集める。

④ 贈与契約書を作成する。

⑤ 法務局へ不動産贈与登記の申請を行う。

 

2.  土地を生前贈与する時の手続き

 

土地を生前贈与する流れを簡単に見ていきましたが、具体的な手続きは何をすればいいのでしょう。一つ一つ見ていきたいと思います。

①   生前贈与の対象となる土地の確認は、法務局から登記簿謄本や公図を発行してもらい、贈与者と受贈者が実際の対象となる土地に行って現況確認します。特に土地の境界については、贈与後の近隣問題になる場合があるので、贈与者から受贈者に説明しておく必要があります。境界は公図を見て判断しますが、公図が現況と必ずしも一致しない場合があるため十分な確認が必要です。

登記簿謄本と公図は法務局のオンラインサービスで簡単に取得できるので、前もって取得しておくとよいでしょう。

②   贈与税がいくら位かかるか計算する。具体的な計算方法は記事の後半に記載しています。

③   不動産贈与登記に必要な書類を集めます。対象の土地の登記識別情報(登記済証)、贈与者の印鑑証明書、受贈者の住民票(マイナンバーの記載がないもの)、対象の土地の固定資産評価証明書が必要になります。全て市町村役場で発行されます。ご本人が窓口へ行けない場合は、『委任状』を持参すれば代理人でも手続きをすることができます。

④   贈与契約書を作成して、贈与者、受贈者の署名押印を行います。具体的な作成方法は記事の後半に記載しています。

⑤   法務局へ不動産贈与登記(所有者移転登記)の申請を行います。具体的な申請方法は記事の後半に記載しています。

 

3.  土地を生前贈与するには、贈与契約書を作成する。

 

贈与契約書の作成は土地の生前贈与の所有権移転登記に必要な書類になります。また、贈与税の申告書にも添付が必要です。贈与契約書とは、財産をあげる人ともらう人が合意した証であり、相続時のトラブルを未然に防ぐこともできるため、必ず作成しましょう。

贈与契約書をどのように作成すればよいかというと、贈与者と受贈者の名前と住所、贈与日、贈与物件が記載されていなければなりません。

具体的には法務局のホームページに“贈与契約書の例”が記載されているため参考にするとよいでしょう。

http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001207215.pdf

 

 土地を生前贈与するには名義変更登記をする

 

法務局へ不動産贈与登記(所有者移転登記)の申請を行います。③で集めた書類と、④の贈与契約書を持参して、生前贈与する土地を管轄している法務局へ行きましょう。法務局では“登記申請書”を作成して申請します。法務局に記入例が用意してありますので、住民票や登記簿謄本を確認しながら記入しましょう。登記申請書には登録免許税の納付が必要になります。生前贈与対象になる土地の固定資産評価額(③で取得した固定資産税評価証明書の額)の2%が登録免許税になります。例えば土地の評価が1,000万円だった場合は、20万円分の収入印紙を法務局で購入して納付します。

他には土地の所有権が移転したことで不動産取得税が課税されます。不動産所得税は、不動産の譲渡、贈与があった場合に都道府県が課税する税金です。その土地の課税標準額の3%の納付が必要です。(平成33年3月31日まで取得分) 受贈者が住んでいる住宅の土地の場合軽減措置があるため確認が必要です。また、納付については、都道府県が所有権移転を確認した後に『納税通知書』を送付しますので、その通知書により納付します。

 

5.  土地を生前贈与するには贈与税の申告を行う

 

生前贈与をすると贈与税が発生します。贈与税とは、財産をもらった人が支払うべき国税であり、生前贈与により相続税の課税を回避することを防ぐための税金です。贈与税の税率は相続税より高く設定されていますが、相続税の“相続時にすべての相続資産に課税する”ものとは違い、“11日から1231日までの1年間で贈与された財産”に課税されるものです。また、基礎控除として年間110万円の控除があります。

土地を生前贈与した場合の贈与税の額は、土地の評価額によって変わってきます。

土地の評価額の算定は、2つの方法があります。1つは『路線価方式』といい、都市部で使われる計算方法です。国税庁が公開している『路線価』という評価基準を使い、1㎡あたりの価格に、土地の総面積を乗じて評価額を算定することができます。正確には、土地が二路線に面していた場合は評価額が高くなったり、土地が正方形では無い場合は評価額が低くなったりします。

もう1つの方法は、『倍率方式』といいます。主に都市部でない地域で使われます。計算方法は、市町村が課税する固定資産税の評価額を使って計算します。地域によりその固定資産税評価額の1.1倍や1.2倍など決まっていますので、その倍率を乗じることで評価額を算定します。

では例をつかって、実際に土地を生前贈与した場合の税額を計算してみましょう。

例)評価額1,000万円の土地を贈与した場合(一般的な場合)

土地の評価額の1,000万円から基礎控除の110万円を控除し、その額に贈与税率を乗じて計算します。

{1,000万円-110万円)×40}125万円=231万円

この場合の贈与税の納付額は231万円となります。

贈与税の税率は国税庁のホームページで確認することができます。

https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/4408.htm

贈与税は、『一般的な場合』以外に『特例贈与財産』として、“直系尊属”(祖父母や父母)から20歳以上の者への贈与は特例税率で計算されます。

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku-zoyo/201510/index.htm

その他に土地を生前贈与する場合の贈与税にはいくつかの特例があります。

①    配偶者控除

住宅用不動産、または不動産の購入資金を配偶者が贈与を受けた場合は課税対象額から2,000万円までの控除ができます。婚姻期間が20年以上必要などの適用条件があります。

②    相続時精算課税制度

2,500万円以下の贈与であれば相続時にその土地の財産価格を加算することにより、今回の贈与税を繰延することが可能です。将来的に価値の上がる土地であれば有効な特例です。

贈与税の申告は、贈与が行われた翌年の315日までに最寄りの税務署へ申告、納付を行わなければなりません。

 

6.  土地を生前贈与するメリットとデメリット

 

土地を生前贈与する場合の主なメリット、デメリットを紹介します。

 

  6-1.メリット

① ご自分がその土地を引き継いでもらいたい方に確実に渡せます。相続時に遺言を残すことも考えられますが、土地を生前贈与することによって確実に土地の引渡しができます。

②相続財産が減らせます。生前贈与をすることによって、その土地は相続財産に含まれません。相続税が課税になるか、ならないかの資産額の方は、土地を生前贈与することにより相続税の申告が必要なくなる場合があります。

③    配偶者控除や相続時精算課税制度の贈与税の特例を使うことができます。

 

  6-2.デメリット

受贈者が贈与された土地の登録免許税、不動産取得税、贈与税を支払わなければならないため、     土地の評価によっては多額の負担が必要になります。

②    生前贈与する場合かかる不動産取得税ですが、相続で土地を取得した場合は課税されません。

 

7.  生前贈与により土地を贈与する時の注意点

 

土地を生前贈与することは、ご自身の希望通りに土地を譲る確実な方法です。ですが、受贈者の贈与税、不動産取得税、登録免許税の金銭的負担があることを忘れてはいけません。また、相続により土地を引き継ぐと、小規模宅地等の減額特例や物納、配偶者控除などの特例が関わってきますので、土地を生前贈与で渡すべきか、相続で渡すべきか十分の検討される必要があります。

 

【司法書士監修】土地や家を相続するときどうする?土地や家を相続したときにするべきこと

1.土地や家を相続する方法とは

両親はまだ元気だけど、いつの日か相続しなければならない。今両親が住んでいる家や貸している駐車場を相続するとき、どのような手続が必要なんだろうとお考えの方がいらっしゃると思います。

今回は土地や家を相続したときの手続きについてのお話です。

 

  1-1.土地や家を相続するときは、遺産分割協議を行う

相続財産について誰がどの財産を相続するかについて決める際、一般的には次のような流れになります。

1 遺言書の確認
まずは遺言書があるかどうか確認します。遺言書には、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。
この中で「自筆証書遺言」については、必要な事項が書かれていなかったり書き間違えがあったりして遺言書として無効であったり裁判で無効とされたりする事例も多いので注意が必要です。
遺言書が有効で具体的に相続財産について決められていれば遺産分割協議は必要ありません。

自筆、つまり手書きの遺言書の場合、家庭裁判所で検認手続きが必要となり、その際、全ての相続人に通知がいくことになることも注意が必要です。

 

2 相続財産の確認

次に相続財産を確認します。相続財産には現金、土地、生命保険などのプラスの財産と借入金等のマイナスの財産があります。

 

また、マイナスの財産が明らかにプラスの財産よりも多い場合、相続放棄の検討も必要です。相続放棄は、相続があったことを知ってから3ヶ月以内と期限が短いため注意が必要です。

 

3 相続人の確定

相続人の確定も重要です。子どもも知らない両親の過去があることも珍しくはありません。

戸籍謄本、除票等で確認します。

 

4 遺産分割協議を行う

遺言がなかったり、一部の相続財産しか遺言で指定されていない場合には、相続人全員で被相続人の遺産の分割方法について、協議をして決めることが必要です。

土地や家を相続するにあたっては、誰がどの土地・家を相続するのか、1人で相続するか複数人で相続するかなど、具体的に決めることが必要です。

 

5 遺産分割協議書の作成

分割協議が整ったら、その内容を遺産分割協議書として書面にします。遺産分割協議書は不動産を相続して所有権移転登記を行ったり、預金を相続する場合等に必要になります。

 

6 まとまらなかったら調停(審判)も

円滑に分割協議が整えばいいのですが、いろいろな事情でどうしても全員の意見が一致しないことが少なくありません。その際は遺産分割調停・審判の手続きになることもあります。

  1-2.土地や家を相続するときは遺産分割協議書の作成を行う

遺産分割協議書に記載する項目の主なものは次のとおりです。

 

1 被相続人の氏名

2 死亡日

3 本籍地

4 合意した旨の記載

(平成○年○月○日、被相続人○○○○の死亡によって開始した遺産相続を、○○○○の相続人全員で遺産分割協議を行った結果、下記のとおりに遺産を分配、取得することに合意したことを認める。)

5 分配、取得の内容

(不動産の場合・相続者・所在地、地番・家屋番号・種類・構造・床面積 等)

6 相続者全員の署名及び実印の押印

 

相続人の数の遺産分割協議書を作成し、相続人それぞれが保有します。

また、将来の争いを避けるため、遺産分割協議書を公正証書にすることも一つの方法です。

  1-3.土地や家の分割方法

土地や家の分割方法には、現物分割、代償分割、共有、換価分割の4種類が代表的です。

 

現物分割は、例えば土地が3筆ABCあった場合、Aの土地は妻に、Bの土地は長女にとその現物を相続させる方法です。

土地が広い場合など、土地を分筆して分筆後の土地をそれぞれの相続人が相続することも可能です。

 

代償分割は、例えば被相続人が住んでいた住宅を相続人の1人が土地を相続する際、他の相続人は住宅を相続した人から不動産に代えて相応の金銭を取得する方法によるものです。

 

共有は、土地を相続人共同で取得する方法によるものです。

共有で相続する場合、土地の管理・処分をめぐってトラブルになりやすいので注意が必要です。

 

換価分割は、土地を売却し売却代金を相続人で分ける方法によるものです。

換価分割については、不動産譲渡所得税について注意が必要です。

 

  1-4.土地や家を相続するときは相続登記を行う

相続によりその土地(不動産)を他人に対抗するためには所有権の名義変更登記を行うことが必要です。
法律上、所有権自体は、登記をしなくても取得することはできますが、相続した財産を守り有効活用するためにも、必ず相続登記をするようにしましょう。

 

  1-5.相続登記により家や土地の名義を変更するときにかかる費用

相続登記により土地の名義変更をするのにかかる費用として、法務局への申請時にかかる登録免許税、調査費用、書類の取得費用、司法書士への報酬などが必要です。

 

登録免許税は、土地を建物を固定資産税評価額で計算し、1,000円未満を切り捨て課税標準価額を決定します。

次に、課税標準価額に税率(1000分の4)をかけて計算された額から100円未満を切り捨て登録免許税額を決定します。ただし、計算した額が1,000円未満であった場合には1,000円となります。

その他、調査費用が約3000円、書類の取得費用が1~3万円、司法書士への報酬約5~10万円が目安ですので、参考にしてください。

 

  1-6.相続登記により家や土地の名義を変更するときに必要な書類

相続による不動産の所有権移転登記に必要な書類は次のとおりです。

 

まず、登記申請書です。
登記の目的、原因、申請人、被相続人、課税価額、登録免許税、不動産の表示といった項目を記載する必要があります。

 

添付情報としては次のものが必要です。

・被相続人の住民票の除票(本籍の記載があり、かつ登記簿上の住所と繋がるもの)
・被相続人の死亡時から出生時までの戸籍謄本一式
・相続人全員の現在の戸籍謄本
・遺産分割協議書もしくは遺言
・相続人全員の印鑑証明書
・物件を取得する相続人の住民票
・対象物件の固定資産評価証明書
・手続きを司法書士や弁護士などの代理人に委任する場合には、委任状

 ※遺言がある場合は多少必要書類が減ります。

 

2.相続登記をしなかった場合

相続登記をしなくても、土地の所有権自体は相続人が取得することができますが、相続登記をしなかった場合、どのようなデメリットがあるのでしょうか。

 

不動産の売買は必ず所有権移転登記を伴います。相続した不動産を売買しようと思えば、必ず事前の相続登記が必要です。所有権移転登記ができない不動産を購入する人はまずいません。

 

また、相続登記をせずに相続した人が亡くなった場合には、登記簿に記載されている所有者からの相続になりますので、相続関係者が増加したり複雑化したりします。

相続した不動産の売却が決まりいざ登記をしようとしても、それまで音信のなかった親族などの承諾と印鑑が集まらず、なかなか登記ができない事態を生むことがよくあります。

 

不動産を相続した場合、出来るだけ早く相続登記をするようにしましょう。

 

3.相続した家や土地を売却する方法

不動産を売却する際は、不動産業者に仲介してもらうのが一番スムーズに売る方法となります。登録済証(権利証)や測量図、固定資産税納税通知書などの必要書類を準備しておきましょう。


まず、不動産会社に売却する物件の査定を依頼します。
複数の会社に依頼し、比較検討を行ったほうがいいでしょう。
信頼できる業者か、価格は妥当かなどを総合的に検討し、お願いする業者を決めたら、売買の仲介を正式に依頼する媒介契約を結びます。

 

不動産会社は、売手と相談しながら、会社の査定価格や周辺の事例等を踏まえて、売値を決め売り出します。購入希望者がすぐ見つかる場合もありますが時間がかかる場合もあります。

 

買い手が見つかり、売買条件を合意したら売買契約を結びます。
一般的には契約書を交わす際、物件価格の10~20%程度の手付金が支払われます。

 

そして最終段階が残金決済、所有権移転等の登記申請、引渡しとなります。

 

4.まとめ

今回は、相続の流れ、遺産分割協議、土地や家の分割方法、相続登記、相続した家や土地を売却する方法など基本的な事項についてお話してきました。

 

平成27年から相続税の基礎控除額が3,000万円+相続人の数×600万円と減額されたことから相続税を課せられる方が大幅に増えてきました。相続税申告は、相続から10ヶ月以内に行わなければならず時間が限られており、節税のための特例も各種あることから、専門的な知識も必要となります。

 

相続にはさまざまなトラブルをよく耳にします。

円滑な相続をするため、遺産分割協議、不動産の相続・登記、相続税の申告などについて専門家の力を借りることも検討してみてはいかがでしょうか。

 

【司法書士監修】家(不動産)の登記変更の手続き方法は?さまざまなケースで解説

1.家(不動産)を、遺産相続するときの登記変更手続きの仕方

遺産に家などの不動産が含まれる場合、遺産分割協議や遺言によって相続人に指名された人が、新たにその家の所有者となります。

相続人が確定した時点でその不動産の所有権は移転しているのが法律上の扱いですが、通常はさらにその権利保護を確実にするために、不動産登記の名義を変更する手続きを行うのが一般的です。

具体的には、相続登記を行っていないと、他の相続人に相続人全員での共有名義で登記されてしまったり、売却しようと考えていても手続きが進まなかったりします。


不動産登記名義の変更は、法務局に次のような書類を提出して行います。

・亡くなった人の戸籍謄本(生まれてから亡くなるまで)
・亡くなった人の住民票の除票(登記簿上の住所と本籍地がつながるもの)
・法律上の相続人となる人全員の現在戸籍謄本
・遺産相続の根拠となるもの(遺産分割協議書や遺言書)
・実際に不動産を相続する人の住民票又は戸籍の付票
・相続物件の固定資産評価証明書(最新のもの)

上の「遺産相続の根拠となるもの」というのは、亡くなった人が残した遺言書や、相続人全員で作成した遺産分割協議書です。

遺言書が手書きで書かれている場合、家庭裁判所の検認手続きを受けていることが必要で、もし検認を受けていない状態の遺言書を法務局に提出しても、登記の手続きは認められません。これに対して、公正証書で作成されている場合は、上記検認手続きは不要です。

これらがどちらもない場合(遺産分割協議がうまくまとまらなかったので、共有名義にするような場合)は法定相続分による全員の共有の相続登記を行うこともあります。

 

  1-1.家(不動産)を、生前贈与での登記変更手続きの仕方

相続が発生する以前に、贈与によって財産を渡すことを生前贈与といいます。

生前贈与によって取得した不動産の登記名義を変更する場合には、贈与を原因とする所有権移転登記の形で登記名義変更を行います。

法務局に提出する必要書類としては以下のようなものがあります。

・贈与の契約書
・譲渡を行う人の登記済証(又は登記識別情報)
・譲渡を行う人の印鑑証明書
・贈与を受ける人の住民票
・贈与する物件の固定資産評価証明書(最新のもの)

・登記原因証明情報

なお、贈与の場合の所有権移転登記は、名義変更を行う物件所在地を管轄する法務局で行います。

生前贈与は相続税対策として利用されることの多い方法です。他には、相続人間のトラブル予防に利用されることもあります。

20年以上婚姻関係にある配偶者への居住用不動産の購入資金の贈与や、60歳以上の親から20歳以上の子への贈与、子や孫への教育資金の贈与など、利用できる節税対策の方法があるので、税理士などにアドバイスを受けながら活用してみると良いでしょう。

 

  1-2.家(不動産)を、財産分与での登記変更手続きの仕方

配偶者との離婚にともない、財産の所有権を妻や夫に対して譲り渡すことを財産分与といいます。

財産分与によって不動産を譲り渡した後には、法務局で財産分与に基づく所有権移転登記を行う必要があります(登記はしなくても所有権は移転しますが、権利保持を確実にするために登記を行います)

財産分与による所有権移転登記は、協議離婚によって財産分与が行われた場合には両者が協力して手続きを行わなくてはなりません。

一方で、家庭裁判所の調停などによって行われた離婚(調停離婚)の場合には新たに権利者となる人が単独で手続きを行うことが可能なことがほとんどです。

財産分与による所有権移転登記を行う際には、次のような書類が必要となります。

・財産分与を受ける人の住民票
・物件の登記済権利証(登記識別情報)
・財産分与を行う人の印鑑証明書(発行から3か月以内)
・物件の固定資産評価証明書(最新分)
・離婚後の戸籍謄本
・登記原因証明情報

・財産分与があったことを証する書面等

 

  1-3.家(不動産)を不動産売買での登記変更手続きの仕方

不動産を売買によって取得した場合には、新しい所有権者となる人は取得した不動産の登記名義変更を行う必要があります。

登記名義変更を行わなかったとしても、契約書があれば売買の当事者に対して自分の権利を主張することは可能ですが、契約の当事者以外の人に対して自分の所有権を証明するためには登記が必要となるためです。

売買契約に基づく登記名義変更を行う際に必要な書類は次のようなものです。

・物件の登記済証や登記識別情報
・物件を売却する人の印鑑証明書(発行から3か月以内)
・物件を購入する人の住民票
・固定資産評価証明書(最新の年度のもの)
・登記原因証明情報

・売買契約書

 

2.家(不動産)の登記変更の手続きを自分で行う方法

売買などによって登記変更の手続きを行う際には、売主側と買主側が協力し合って登記手続きを行う必要があります。

一般的に登記変更手続きを自分で行うのは信頼関係のある親族同士での売買などに限られるでしょう。

一方で、赤の他人同士の場合には「登記変更手続きを自分で行う」ということは普通はありません。

通常は不動産業者及び司法書士などの専門家に間に入ってもらい、必要書類を預けて手続きの代行を依頼します。

売買契約書や贈与契約書などの重要な書類についても専門家に書式を準備してもらって行うのが一般的で、その手続きの流れの中で登記についてもお願いする、というケースが圧倒的に多いでしょう。

 

3.家(不動産)の登記変更の手続きを自分でする時の費用

登記変更の手続きを自分で行う場合にも、法務局に対して納める税金が発生します。

具体的には、次のような費用が必要です。

登録免許税:物件の固定資産税評価額×税率(登記原因によって異なります)
その他実費:戸籍謄本や住民票の取得、法務局に行くための旅費などです

登記を行うための費用としてもっとも大きいのが登録免許税ですが、登録免許税の税率はどのような原因によって登記を行うのかによって異なります。

平成30年現在、それぞれの登記原因による税率は以下のようになっています。

・売買:建物は1000分の20、土地は1000分の15(平成31年3月31日まで)

 ※但し住宅用家屋証明書がある場合は、軽減措置があります。
・相続:1000分の4
・贈与:1000分の20

例えば、3000万円の建物を売買した場合に行う登記の登録免許税は、3000万円×1000分の20=60万円となります。

 

4.家(不動産)の登記変更手続きを司法書士に依頼する場合のメリットデメリット

不動産の登記変更手続きは、司法書士に依頼して行うのが一般的です(法律の専門家としてはほかにも弁護士や行政書士がいますが、登記については司法書士が専門です)

司法書士に登記変更手続きを依頼するメリットとしては、面倒な手続きの労力的負担をすべて専門家に安心して任せることができる点です。

登記変更手続きを行うためには必要書類の準備から、登記申請書の作成、法務局担当者とのやりとりなど(書類不備があれば都度法務局に行く必要があります)が必要になりますので、これらの負担をすべて専門家に任せられるのは大きなメリットといえるでしょう。

一方で、司法書士に依頼した場合のデメリットとしては、専門家に対して支払う費用が発生することです。

司法書士に登記変更手続きを依頼した時の費用相場については次の項目で説明します。

 

5.家(不動産)の登記変更手続きを司法書士に依頼するときの費用

平成15年以前は司法書士の費用は一律で決まっていましたが、それ以降はそれぞれの司法書士が自由に報酬額を決められるようになっています。

そのため、どの司法書士にどのような手続きを依頼するかによってかかる費用は変わってくるのですが、登記手続きの代行を依頼した場合のおおよその費用相場は5~10万円程度です。

ただし、遺産分割協議書の作成や売買契約書の作成、贈与契約書の作成も依頼したような場合には、上記費用に加算されることもあります。

 

6.まとめ

今回は、家の登記変更手続きを行う際の手続き方法について、登記を行う原因別に解説しました。

登記は不動産に関する権利を守るためにとても大切な手続きですから、司法書士などの専門家にアドバイスを受けながら進める事も検討してみてください。

【税理士監修】マンションを相続するときの注意点。節税対策やトラブル対策は?

1.マンションを相続する手続方法とは?

マンションを相続したら、まず名義変更の手続が必要です。
名義変更は法務局に相続登記申請書、戸籍謄本、住民票などの必要書類を提出し、登録免許税を納付して行います。
名義変更は自分で行うこともできます。しかし、名義変更の書類は非常に細かいところまでチェックされるため、修正のために何度も法務局に行ったり、書類を取り直すなど、手間がかかることがあります。そこで、専門家である司法書士に手続を代理で行ってもらうよう依頼することもできます。
名義変更は必ずしなければいけないわけではありませんし、期限も設けられていません。しかし、名義変更をしないとマンションを処分したり、マンションの所有権を担保に借り入れをしたりすることができません。費用がかかることもあり名義変更は先延ばしにしがちですが、相続後なるべく早く名義変更の手続をしましょう。

 

2.マンションを相続するときに発生する税金とは?

続いて、マンションを相続するときに発生する税金について解説します。

 

  2-1.不動産取得税

形式的には不動産を取得することになりますが、不動産取得税はかかりません。

  2-2.登録免許税

名義変更に伴って発生する税金です。売買による移転登記が固定資産税評価額の2%であることに対して、相続による場合は固定資産税評価額の0.4%と低くなっています。

 

  2-3.相続税

相続税は、亡くなった方の相続財産のすべての合計額から基礎控除額を引いた残額に課せられますので、マンションの相続税評価額と他の相続財産の合計額が基礎控除額を超えてしまうと、相続税が発生します。相続税の基礎控除額は次の計算式で求められます。
3000万円+600万円×法定相続人の数

相続を受けた人が配偶者の場合には、配偶者控除の対象となります。配偶者は亡くなった方の財産形成に大きく貢献していることや、亡くなった方と同世代の場合が多く、相続から何年も経たないうちにその配偶者が亡くなり、また相続が発生することになると短期間で同じ不動産に二重で課税することになるため、特別な控除額が適用されます。
配偶者控除額の計算式は次のとおりです。

 

配偶者控除額=相続税の税額×(次のABのいずれか少ない金額÷課税価格の合計)
A: 配偶者の法定相続分(法定相続分が1億6,000万円未満なら1億6,000万円)
B: 配偶者の課税価格(配偶者が相続する財産分)
つまり、配偶者の課税価格が1億6,000万円までであるか、法定相続分以内であれば相続税はかかりませんので目先の相続税額が大きくなるのが嫌だ、という場合には配偶者に相続させるとよいでしょう。

なお、マンションを生前贈与することを考える方もいらっしゃるかもしれません。

不動産に限らず、相続税を抑えるために、生前贈与が使われることがあります。亡くなる前に贈与をしておくと相続財産が減少しますので、相続税を減らすことができます。
ただし、贈与税の基礎控除額(年110万円)を利用するとなると、マンションの場合は持分を贈与していく形になります。登記も必要になる他、継続的に贈与していくことになるので、そもそもすべてを譲渡していたとして遡って贈与税が課される可能性もあり、お勧めできません。4-2に後述する相続税精算課税やローンが残っていれば負担付贈与とし、返済金額を現金で贈与するなどの対策が有効でしょう。ただし、負担付贈与の場合は、贈与であるにも関わらず、相続税評価額ではなく、取引時の時価で評価とされますのでご注意ください。

 

3.マンションの評価額の計算方法

 

  3-1.土地の評価方法

マンションの評価額は土地と建物に分けて計算します。
土地の評価額を求めるときは、まずマンション全体の土地の相続税評価額を求めます。計算式はマンションが市街地にあるか郊外にあるかによって計算式が異なります。
マンションが市街地にある場合には、「路線価方式」で評価額を計算します。計算式は以下のとおりです。
マンション全体の土地の相続税評価額=路線価×地積×画地補正率
マンションが郊外にある場合には、路線価がないため、「倍率方式」で計算します。計算式は以下のとおりです。
マンション全体の土地の相続税評価額=固定資産税評価額×倍率
こうして求められたマンション全体の土地の相続税評価額に、持分割合をかけてマンション各戸の土地の相続税評価額を計算します。
マンション各戸の土地の相続税評価額=全体の相続税評価額×持分割合

 

  3-2.建物の評価方法

マンションの建物の相続税評価額は固定資産税評価額と同じになります。固定資産税評価額の確認方法には2つあります。
一つは課税証明書を見ることです。マンションなど固定資産の所有者には、毎年「固定資産税・土地計画税課税証明書」という明細書が送付されます。この課税証明書に建物の固定資産税評価額が記載されています。
もう一つの方法は、役所で固定資産評価証明書を取得することです。相続による名義変更手続を行うためにはこの固定資産評価証明書を法務局に提出しなければいけませんので、早めに取得しておくとよいでしょう。

 

4.マンションを相続する時の節税対策

 

  4-1.配偶者控除を利用して節税対策

マンションを相続するときに相続税をできるだけ安くするためにはいくつかの方法があります。
一つは、すでに説明した配偶者控除を利用することです。

さらに小規模宅地等の特例(自宅であれば8割、投資用であれば5割の土地評価減)も利用できます。マンションがご自宅であれば、配偶者が取得する場合は、無条件で8割の評価減を受けられますし、投資用であっても賃貸を継続すれば5割の評価減が受けられますので、配偶者控除と合わせて利用することで大きな節税効果を生みます。

ただし、そのほかにも不動産があった場合、配偶者控除の適用がない相続人が小規模宅地等の特例を利用したほうが、相続税が低くなる可能性もありますので、ご注意ください。

 

  4-2.相続時精算課税制度を利用して節税対策

マンションの価額が2.500万円以下の場合には、相続時精算課税制度を使うこともできます。相続時精算課税制度とは、60歳以上の親または祖父母から、20歳以上の子どもや孫に対する贈与のうち、2500万円までを非課税をする制度です。ただし、2.500万円を超える場合は一律で20%の贈与税が課されます。

なお、相続が発生した時に、相続財産に加算されますのでご注意ください。その名の通り、相続時に精算するという意味合いなので、税金が全く課されないというわけではありませんが、相続税率は贈与税率より低いため、次世代に早く資産を移して有効活用したいという方には節税対策としても有効です。ただし、相続税の計算時に小規模宅地等の特例の対象から外れてしまいますので、注意が必要です。一旦、相続時精算課税を選択すると同じ贈与者からの贈与は、暦年贈与を適用できない(基礎控除の110万円を利用できない)ことにも注意してください。

 

5.まとめ

マンションを相続すると相続税がかかりますが、相続税をできるだけ抑えるために様々な方法や利用できる制度があります。どの方法や制度を利用すると節税効果が高いかはケースバイケースです。マンションを相続するときの相続税を節税したいときには、税理士、司法書士などの専門家と相談することをお勧めします。

【税理士監修】生命保険には贈与税が発生するの?生命保険を利用した節税対策とは?

生命保険をかけているけど、保険の契約者や受取人によってかかる税金が違うと聞くけど、難しくてよくわからないというお話をよく聞きます。

今回は、生命保険にはどんなときに税金が発生するのか、生命保険を利用した節税対策にはどのようなものがあるのかについてのお話です。

 

1.生命保険で発生する3種類の税金とは?

 

生命保険には、被保険者の死亡時に保険金を受け取る場合や、満期により保険金を受け取る場合など様々です。いずれのケースも保険金の受取人が課税対象者ですが、契約者との関係性によって課せられる税金の種類が異なってきます。今回は、生命保険のうち、死亡保険に焦点を当てて解説したいと思います。

 

それぞれのケースごとにみていく前に、まず生命保険に関わる人物の役割を確認しておきましょう。以下の表に示します。

 

 保険との関わり 役割 途中変更の可否
 契約者 保険の内容を決め、保険会社と契約を結ぶ 可
 被保険者 保険の対象者・死亡することで保険金が出る 不可
 受取人 保険金を受け取る 可

 

契約者と受取人は名義人の変更が可能ですが、被保険者の変更はできません。被保険者を変更する場合は、本契約を解約して別途契約をする必要があります。

なお、契約者と保険料負担者は同一の場合が多いですが、契約者以外が保険料を負担する場合があります。今回は契約者=保険料負担者としてお話しします。

 

生命保険における税金の種類を考える場合は次の二点に着目します。

①保険金支払い事由発生時における契約者の存否

②契約者と受取人の関係性

 

これらを基本に考えるとたいへん分かりやすくなります。それでは税金の種類ごとに順に説明していきましょう。

 

  1-1.生命保険には相続税が発生する場合がある

相続税が発生するのは、契約者である被保険者が亡くなったことで保険金が支払われた場合です。

 

▼生命保険により相続税が発生する具体例

 

一例を表すと以下のようなケースです。

 契約者 被保険者 受取人
 夫(死亡) 夫(死亡) 妻

契約者であり被保険者である夫が保険料を負担していたことで死亡保険金が支払われたのですから、この場合は相続により受け取った保険金ということになります。相続財産にこの死亡保険金を加えた金額が相続税の対象になります。

 

  1-2.生命保険には贈与税が発生する場合がある

契約者が生存中に死亡保険金が支払われた場合は、被相続人ではない契約者が負担した保険料によりに死亡保険金が受取人に渡されたと考えるので贈与税の対象になります。

▼生命保険により贈与税が発生する具体例

 

一例を表すと以下のとおりです。

 契約者 被保険者 受取人
 夫(生存) 妻(死亡) 子

保険料を負担している夫が生存していますから、相続ではなく贈与ということです。これが満期型の保険で、満期によって子が保険金を受け取った場合もまったく同じです。

この場合、贈与税がどれくらいかかるのかシミュレーションしてみましょう。

贈与には基礎控除(110万円/年)があります。

1,000万円の保険金が支払われたと想定した場合、

1,000万円 - 110万円 = 890万円

基礎控除後の課税価格は890万円になります。

これを贈与税の速算表に当てはめます。

直系尊属(祖父母、父母)から20歳以上の者への贈与は「特別贈与財産用」の速算表が適用されます。

 

 基礎控除後の課税価格 税率 控除額(特別贈与財用)
 200万円以下 10% -
 300万円以下 15% 10万円
 400万円以下 20% 30万円
 600万円以下 30% 90万円
 1,000万円以下 40% 190万円
 1,500万円以下 45% 265万円
 3,000万円以下 50% 415万円
 3,000万円超 55% 640万円

基礎控除後の課税価格が890万円なので、速算表の1,000万円以下が適用されます。

したがって贈与税は、890万円×40%-190万円=166万円になります。

 

  1-3.生命保険により所得税が発生する場合がある

契約者と受取人が同一人の場合は所得税の対象になります。

▼生命保険により所得税が発生する具体例

一例を表すと以下のとおりです。

 契約者 被保険者 受取人
 夫(生存) 妻(死亡) 夫

妻の死亡が原因で死亡保険金が夫に支払われたのですが、夫が保険料を支払っていたため、相続税ではなく所得税の対象になります。

なお、一時所得となりますので、死亡保険金の全額が所得としてカウントされるのではなく、一部控除されます。

計算式は次のとおりです。

(保険金額-支払った保険料-特別控除額50万円)×1/2=一時所得の金額

具体的に計算をしてみましょう。

1,000万円の保険金が支払われ、これまで500万円の保険料を支払った場合

(1,000万円-500万円-50万円)×1/2=225万円の計算式から

この年に225万円の所得があったと見なされ、他の給与所得等と合算されます。

たとえば所得税率が10%とすると、保険金が支払われたことにより、所得税が22万5千円アップすることになります。

 

2.生命保険を利用することは節税対策になるのか?

 

生命保険を利用することで節税対策になるのでしょうか。ここでは、節税対策になる二つの方法をご説明します。

 

  2-1.生命保険の非課税枠を利用する

相続人が受け取った保険金は (500万円×法定相続人の数)までの非課税枠があります。たとえば相続人が妻と子どもが2人の計3人とすると、500万円×3人=1,500万円が非課税となります。

 

2,000万円の保険金を受け取った場合は、2,000万円-1,500万円=500万円が相続税の対象です。

例えば一時払い終身保険に加入すると、まとまった現金を保険料として移せます。上記の例でいうと、本来相続税の対象になるはずだった2,000万円の現金が、2,000万円の保険金として支払われることで500万円の現金と同等の扱いとなりますので十分な節税効果が期待できます。

 

そのため、加入される年齢によって支払った保険料よりも受け取る保険金が少なくなる場合もありますが、相続に備えて一時払い終身に加入する方が、結果的に相続人に資産を残せるケースもあり得ます。

なお、生命保険の非課税枠は法定相続人の数により考えますので、たとえ直系であっても孫が受取人の場合、子が生きていれば法定相続人ではないため、非課税枠は適用されません

(代襲相続により相続人になった場合には適用されます。)

 

  2-2. 生前贈与金で生命保険を活用する

 

生前贈与する場合、毎年基礎控除分の110万円までは贈与税がかかりません。これを生命保険に利用する方法があります。

例えば次のような組み合わせです。

 契約者 被保険者 受取人
 子 父 子

契約者を子とし、被保険者である父が子に基礎控除の範囲内に設定した保険料相当額を贈与することで、贈与税と相続税を回避する方法です。なお、上述した1-3のケースと同じ形ですので、所得税の対象になる点には注意が必要ですが、一時所得として課税される金額は小さくなりますので、相続税率が高くなることが予想される場合には効果的です。また通常は支払った保険料よりも将来受け取る死亡保険金の方が上回りますので、現金でそのまま贈与するより資産を残すこともできます。

 

3.生命保険を利用することのメリットとデメリット

 

生命保険を利用した節税対策のメリットとデメリットをご紹介しましょう。最大のメリットはもちろん節税効果があるということですが、それ以外にもメリットもありますのでご紹介します。また生命保険を利用する際に注意をしないとデメリットになる事項もご説明します。

 

  3-1. メリット

(1)納税に必要な資金をすぐに調達できる

相続税は相続が発生した日から10カ月以内に相続税の申告と納税をしなくてはいけません。相続税は延納や物納といった納付方法も認められますが、基本的には現金で納付する必要があります。現金が足りない場合は不動産を売り払うなどして、現金を調達しなくてはなりません。死亡保険金は確実に現金として受取人の手元に入りますから納税用の資金として活用できます。

(2)遺産相続が円滑にできる

相続でもめて遺産分割協議でもめてしまったとしても、死亡保険金の受取人は決まっているので、協議の進捗とは無関係に支払われます。死亡保険金は、法定相続人の遺留分の対象にもなりませんので、遺したい人に確実にお金を渡すことができます。

 

  3-2. デメリット

(1)生命保険が利用できない場合がある

生命保険を活用した節税対策は、いうまでもなく生命保険の契約をすることが前提です。生命保険はすべての人が加入できるわけではありません。健康状態や年齢が理由で契約できないこともありますから、少々、気が早いと思う方でも契約できる生命保険があるのか一度調べてみることをお勧めいたします。

 

(2)保険料が高い

高齢の方が節税目的のための生命保険に加入できたとしても、想定どおりの時期にお亡くなりになられるか誰にもわかりません。高齢になられてからの保険料は高くなることが予想されますので、想定より長く保険料を支払ったため、結果的に思ったほどの節税にならない場合もあります。

 

4.生命保険の契約者の名義を変更する時の注意点

 

生命保険の契約者の名義変更をする場合、どんな点に注意しないといけないのでしょうか。以下の表のように、契約者が妻から夫に変更したケースで考えてみましょう。

 (契約期間10年) 契約者 被保険者 受取人 税の種類
 変更前(8年) 妻 夫 妻 所得税
 変更後(2年) 夫(死亡) 夫(死亡) 妻 相続税

税金の種類は保険料を支払った実績に応じて決まります。夫死亡時の契約者が夫だったからといって、死亡保険金のすべてが相続税の対象になるのではなく、変更前の妻と変更後の夫が支払った保険料の比率に応じて所得税と相続税に配分されます。

 

表のケースだと死亡保険金の80%が所得税、20%が相続税の対象になります。

 

また契約者の名義ばかりでなく、受取人の名義にも注意が必要です。例えば離婚があった場合、前妻を受取人として契約した生命保険が離婚後もそのままで継続されていて、被保険者である夫の死亡時に保険金が相続人に支払われなかったということもあります。古い生命保険は受取人を確認しておいた方がいいでしょう。

 

5.まとめ

 

これまでに例にしたケースの税額を表に並べると次のようになります。

想定税額は、500万円の保険料を支払い、1,000万円の死亡保険金が入ったという前提で計算しています。

 契約者 被保険者 受取人 税金の種類 想定税額
 夫(死亡) 夫(死亡) 妻 相続税 0円・(妻+子)の非課税枠
 夫(生存)
 妻(死亡)
 子 贈与税 166万円
 夫(生存) 妻(死亡) 夫 所得税 22万5千円

贈与税は暦年課税(その年に贈与された金額を合計して計算)、所得税も累進税率によって変わってきますので、想定税額は条件によって変わってきますが、いずれにしても贈与税が最も高いことに変わりはありません。生命保険を活用した節税を検討する際はもちろん、節税目的以外の生命保険についても契約者、被保険者そして受取人の関係性をよく考えたうえで契約をしましょう。

【税理士監修】相続する時に発生する贈与税の金額は?生前か死後どちらのほうがいいの?

2015年1月1日より施行された相続税及び贈与税改正のうち、特に注目されたのが「相続税の基礎控除額の変更」でした。基礎控除額が60%に減額されたので、それまでは相続税がかからなかった人も相続税を払う必要に迫られたからです。

そのため、死後相続に伴う相続税の支払いを回避するために、生前贈与を選択する人が増えてきています。多額の相続税の支払いを子や孫に課すよりも、財産をあげた方が良いという理由からです。

そこで問題になるのが、贈与税です。場合によっては、相続税を支払うよりも高額の贈与税を取られることさえあります。この記事では相続税と贈与税の仕組みや違い、改正内容、それぞれのメリット・デメリット、注意点などについて紹介します。

 

1.相続時に贈与税っていくらかかるの?

 

まず、相続税と贈与税の違いを明らかにしましょう。相続税・贈与税共に、金銭や財産を他人に譲った際に発生する税金です。しかし、その発生原因と、譲る対象が大きく異なります。

相続税は、被相続人が死亡したときに発生します。相続の対象は配偶者、子ども、親などの親族になるのが通例です。それに対し贈与税は、個人から金銭や財産をもらった時に発生します。死亡による相続や給与をもらった時以外は原則として贈与税を払う義務が生じます。例えば、自分が保険料を負担していない生命保険を受け取った場合は、贈与を受けたと見なされます。

それをふまえると、被相続人が死亡したときにかかる税金は相続税であって、贈与税ではないことがおわかりでしょう。でも、相続は被相続人が死亡した時だけに行うとは限りません。

相続にはもう一つ、生前に子や孫などに財産を渡す「生前相続」の意味もあります。この意味での相続を、以下「生前贈与」と表現します。そして、生前贈与の時にかかる税金が贈与税です。

贈与税には、「暦年課税」と「相続時精算課税」との2種類があります。

暦年課税の場合、受贈者一人当たり、基礎控除額が毎年110万円です。110万円を超えた場合、基礎控除後の課税価格に応じて10~55%の税率をかけた金額が贈与税額になります。

贈与税の税率の目安は、一般税率の場合で基礎控除後の課税価格に応じ、以下の通りです。

200万円以下:10%

300万円以下:15%

400万円以下:20%

600万円以下:30%

1,000万円以下:40%

1,500万円以下:45%

3,000万円以下:50%

3,000万円超:55%

相続時精算課税の場合、累計2,500万円までは控除され、贈与税を支払う必要がありません。2,500万円を超えた分は、一律20%の贈与税がかかります。

 

2.生前贈与にかかる費用

 

生前贈与が行われると、受贈者に対し、贈与税を支払う義務が課されます。ところがこの贈与税は、毎年110万円までなら非課税ですし、申告の必要もありません。ご高齢の方が孫にお小遣いを上げる程度の金額は関係ないということです。

しかし、生前贈与にかかる費用は、贈与税だけではないので、注意しましょう。例えば、不動産を贈与し、名義変更をする際には「登録免許税」と「不動産取得税」が必要です。

登録免許税は、生前贈与する土地建物の固定資産税評価額×2%です。不動産取得税は、固定資産税評価額×3%で、合わせると5%の税金が必要になります。ただし、軽減措置などにより、税金を安くすることもできますし、不動産取得税は受贈者に支払義務がありますが、登録免許税に関しては贈与する人が払うことも可能です。

また、生前贈与に伴う手続きを司法書士や税理士に依頼する場合や、法的トラブルに対処するために弁護士に相談する場合などには、それらの専門家に支払う費用も発生します。ケースによりますが、少なくとも約5~10万円の費用が発生すると考えましょう。

その他、戸籍謄本、住民票、固定資産評価証明書などの各種書類が必要になる場合があります。1通あたり数百円ですが、積み重なると数千円の出費になります。

 

3.生前贈与とは

 

生前贈与とは、被相続人が生きている間に、財産を譲ることです。死後相続にかかる相続税が多くなりすぎる時に、節税の意味で行うことができます。特に、冒頭で述べたように相続税の基礎控除額が60%に減額されたため、相続税がそれまで無税だったご高齢の方が2015年亡くなることにより、相続税が払えずに土地を手放さざるを得なくなるなどのトラブルも発生しています。そのような事態にならないためにも、生前贈与の仕組みを知っておくことは大切です。

生前贈与を行うと、贈与を受けた方に対し、贈与金額に応じて贈与税がかかります。生前に行われた金銭や土地の評価額などに対し、基礎控除額を引いた金額を支払う必要がありますが、贈与税がかからないケースもあります。

贈与税がかからないのは、会社などからもらう給料、親などからもらう生活費や教育費、冠婚葬祭に伴う香典や祝物などがあります。

 

4.生前贈与のメリット・デメリット

 

生前贈与は、基礎控除額以内の控除を繰り返すことにより、節税の効果があります。ただし、贈与する金額や資産評価額が110万円を超える場合には贈与税がかかりますし、贈与税以外の各種費用がかさむと、かえって出費が多くなることもありますので、トータルの出費を考えた上で、生前贈与を行いましょう。

また、生前贈与には相手を自由に選択できるメリットがあります。死後相続だと、仮に遺言を書いていても、法定相続分などがあるため遺族への相続が法的に優先される上、相続争いなどになることもあります。それに対し、生前贈与なら自分がお世話になった相手や財産を譲りたい相手に自由に行うことができます。

通常の生前贈与以外にも、メリットが大きいいくつかの特例がありますので、以下に紹介します。ただし、それぞれにメリットだけでなくデメリットもあるため、注意が必要です。

婚姻関係が20年以上の夫婦の間で不動産または不動産に関する金銭の贈与が行われた場合、基礎控除以外に配偶者控除が適用されます。一生に一度限りですが、基礎控除額110万円の他に、特例で最高2,000万円までの控除を受けることができる制度です。条件に当てはまる方には、大きなメリットになります。

ご高齢の方が、孫の教育費として教育資金の一括贈与を行うと、孫一人につき最大で1,500万円が非課税になります。適用される条件は、贈与者が直系尊属であることで、銀行などを通じた信託会社(三菱UFJ銀行の「まごよろこぶ」など)を通じて孫などの受益者と教育資金管理契約という信託を結ぶ必要があります。また、2019年3月31日までと、期限が決まっているデメリットもあります(延長される可能性もあります)。さらに、受益者は30歳未満に限られます。

ここで言う教育資金は、入学金、授業料、教育に関する役務の提供として直接支払われる金銭などです。通学定期券や、留学の渡航費などにも使えます。しかし、贈与の取り消しはできません。残高がある状態で30歳以上になると、贈与税がかかります。用途が限られているので、残高が残らない範囲で利用しましょう。

相続時精算課税制度を使うと、現金でも土地でも贈与された物は2,500万円まで一時的に無課税になるため、便利です。しかし、これは相続の時に精算される、支払いの先延ばしに過ぎない上、暦年贈与に戻すことができないデメリットもあります。慎重に検討しましょう。

 

5.死後相続にかかる相続税

 

生前贈与が生きている間に行う相続なのに対し、死後相続は被相続人の死亡による相続です。そして、死後相続の際には相続税がかかります。

相続税の金額は、相続財産総額から基礎控除額を引いた金額×税率です。

相続税の税率の目安は、法定相続分の取得金額に応じ、以下の通りです。

1,000万円以下:10%

3,000万円以下:15%

5,000万円以下:20%

1億円以下:30%

2億円以下:40%

3億円以下:45%

6億円以下:50%

6億円超:55%

法定相続人ごとの税額を合計したものが、相続税の総額になります。相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。

相続時精算課税制度を利用している場合、贈与者が亡くなって相続する時に、相続税の課税対象になります。納税額の有無に関わらず、翌年の2月1日から3月15日の間に申告し、納税しましょう。

 

6.死後相続とは

 

死後相続とは、被相続人が亡くなった時に行う相続です。被相続人が亡くなった直後は、お通夜や葬儀などが行われるため、それらが一段落ついてから遺族間で死後相続の手続きが行われるのが通例です。

死後相続にあたり、まずは相続人を確定させる必要があります。民法で定めによると、配偶者がいる場合は常に相続人となり、配偶者以外は以下の順位で相続人となります。

第1順位:死亡した方の子ども

第2順位:死亡した方の直系尊属(父母・祖父母)

第3順位:死亡した方の兄弟姉妹

遺言がまず優先され必ずしも民法の順位に従った遺産分割をする必要はありませんが、遺言に上記以外の人が相続人に指定されているなどで争いになった場合には、最低限度の遺産の取り分として遺言分の主張ができます。

 

相続人が確定したら、相続財産の範囲を決定します。相続財産の候補は以下の通りです。

金銭

家や土地などの不動産の評価額

金などの貴金属

有価証券

各種債権

借金

その後、遺産分割協議および遺産分割手続きが行われます。

 

7.死後相続のメリット・デメリット

 

死後相続の場合、2015年の改正により基礎控除額が60%に減額されましたが、それでも3,000万円+法定相続人数×600万円は相続税が非課税なので、例えば法定相続人が4人の場合は、5,400万円まで相続税はかかりません。金銭や不動産などの財産を合計した金額が基礎控除額以下であれば、

死後相続は、一度に払えない場合は延納することもできます。数年に分けて納税できる代わりに、利子税を支払う必要があります。金銭で支払うのが困難な場合に、少しずつ払うことができるメリットがありますが、相続税額が10万円以上でないと利用できず、延納税額が100万円超または延納期間が3年を超える場合には、担保の提供が必要などの条件があります。

被相続人に借金があった場合、その借金が法定相続人に相続されます。この場合、相続の放棄ができます。放棄は、相続の開始があったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所で手続きをする必要があります。

死後相続は、相続争いに発展しやすいデメリットがあります。遺言で法定相続人以外の名前があった場合、婚外子(隠し子)がいることが分かった場合などでは、法廷で争うことにもなりかねません。

それらの争いを回避する意味では、生前贈与を行った方が良いでしょう。

 

8.生前贈与の方法

 

贈与税には、「暦年課税」と「相続時精算課税」との2種類があります。通常は暦年課税が適用されますが、相続税対策のために、相続時精算課税を選択することが可能です。ただし、一度相続時精算課税を選択すると、暦年課税に戻すことができないため、注意が必要です。

暦年課税で生前贈与する場合、年間110万円までの贈与であれば贈与税が非課税であることを利用して、複数年にわけて贈与すると、大きな節税につながります。仮に相続人が一人でも、1,000万円の土地を10年に分けて100万円ずつ分割贈与することもできます。相続人が二人なら、5年ですみます。

基礎控除額は、暦年、つまり1月1日から12月31日までの期間に適用されます。年度とは違うので、同じ年の1月と12月に100万円ずつ贈与したら、超過分は贈与税がかかってしまいます。

 

9.生前贈与の節税方法

 

生前贈与を活用した、具体的な節税方法を説明しましょう。贈与税以外の費用や資産価値の変動は無視しています。

例えば、被相続人が7,000万円の資産を持つ、健康な方だとします。そして、相続人が子ども2人、孫3人だとします。

このまま生前贈与を行わない場合、以下の相続税がかかります。

7,000万-基礎控除額(3,000万+600万×5)×10%=100万円

この100万円を0円にすることができれば、大きな節税になります。

そこで、相続人の子どもと孫それぞれに対し、毎年100万円の贈与を5年間にわたり行うとしましょう。すると、100万×5人×5年=2,500万円が贈与され、贈与税はかかりません。

その後、被相続人が死亡した場合の資産額は、7,000万-2,500万=4,500万円です。基礎控除額が6,000万円を下回るため、相続税が0円になります。

被相続人が証券会社に株式を保有している場合、その株式を相続人の証券口座に贈与する方法があります。証券口座の開設は年齢制限が設けられていますが、未成年口座を開設できる証券会社を探し、そこで親と未成年の子の口座を作ることもできます。未成年口座は、0歳からでも開設できるところがあります。ジュニアNISAを活用すると、毎年80万円まで非課税です。

 

10.相続時に発生する贈与税の注意点

 

生前贈与と死後相続を比較し、生前贈与の方が節税などのメリットが大きい場合は、生前贈与を始めましょう。しかし、相続時に発生する贈与税にはいくつか注意点があります。

まず、相続時精算課税は贈与者の条件が2015年の改正により従来の65歳以上から60歳以上に変更され、受贈者も孫が追加され、累計2,500万円まで贈与税がかからないため便利ですが、再び暦年課税に戻すことはできません。基礎控除額110万円で十分な場合は、むやみに変更しない方が無難です。

また、贈与は贈与契約書などを作り、内容が証明できることが必要です。一度に多額の現金が移動するような資金移動には、国税は目を光らせているので、贈与したことをごまかすのは得策ではありません。あえて年間111万円など、基礎控除額より少し上の金額を贈与して、少額の贈与税(この場合、1,000円)を支払うことで、贈与した証明にするのも有効です。

贈与税はもらった人一人当たりにかかる税金です。ご高齢の方が孫に100万円贈与しただけなら非課税ですが、その孫が別の誰かから同一年内に10万円の贈与を受けた場合、贈与税がかかります。

土地などの不動産を贈与する場合、すでに述べたとおり贈与税以外の税金や経費が発生する可能性があります。その金額を合計したら、相続税を支払った方が安く済んだというケースもあります。また、土地の価格は上下動しますし、近年では日本全体の時価は下落傾向にあるため、現在は相続税の対象でも被相続人の死亡時には相続税が発生しなくなる可能性もあります。

また、贈与したつもりでも贈与とみなされない場合は、死後相続の対象になる場合があります。例えば、ご高齢の方が孫のために口座を作って贈与したつもりでも、贈与として認められない場合があります。贈与は契約の一種だからです。孫が幼い場合、いくらご高齢の方と孫との同意があったとしても、それが法律上有効とはみなされないため、贈与は無効となるのです。贈与契約書を親権者と交わすなどの措置が必要です。

最後に、暦年課税を活用して数年にわたり分割する贈与にも落とし穴があります。それは、被相続人が早く死亡してしまう場合です。5年計画で贈与を行って相続税がかからないようにしようと思っても、被相続人が1年以内に死亡してしまうと、多額の相続税がかかることもあります。いつ亡くなるかは誰にも分からないことですが、健康上の不安が大きい方などは相続時精算課税を選択した方が良いかもしれません。