資産整理にはいろいろな場面がありますが、多くの不動産を所有している人が相続対策として売却することや、自己破産などの債務整理をするうえで仕方なく不動産を手放すことも資産整理に含まれます。

不動産は、売却するタイミングによって課税される税金に大きな差がでたり、売却時に注意するべき法的問題点などがあります。ご自身の希望に合った資産整理を行うためのポイントをご紹介します。

 

1.不動産の資産整理をする時の最善の売却のタイミングはいつなのか?

 

不動産の購入希望者は、1月から3月にかけての時期と9月に多くなるといわれています。

まず、1月から3月の時期に購入希望者が増える理由としては、入学や進級、入社などといった4月の年度替わりに合わせて、その少し前に転居を完了させたいと考える方が多いためです。この時期は年間を通じて最も不動産市場が活発になる時期です。

次に9月前後に購入希望者が多い理由としては、この時期も人事異動による転勤が多く行われる時期であり、転居に伴う不動産の購入需要が高まるためです。 

 

2.相続税対策として不動産を資産整理して売却する場合

 

相続により土地や建物を取得した場合、自分で住んだり、賃貸などで活用をする予定もないときには、維持費や固定資産税などがかかってしまうことを考えると、売却することも選択肢の一つになってきます。

ここで気をつけなければならないのが、不動産を売却するときには税金がかかるということです。節税対策をするかどうかによって、支払う税金の額が大きく変わってしまうこともあります。そこで、相続した不動産の売却にはどんな税金がかかるのか、節税できる方法などをまとめました。

 

2-1.譲渡所得課税

不動産を売却して利益(売却益)が出ると、「譲渡所得課税」の課税対象になり、所得税と住民税がかかります。譲渡所得にかかる税額は「売却(譲渡)価格」から「取得費」と「譲渡費用」を差し引いた売却益(譲渡所得)に税率をかけたものです。

相続した不動産の売却価格が取得費+譲渡費用よりも低い金額だった場合は譲渡所得が発生しないので、譲渡所得課税はかかりません。購入時よりも高い価格で売れて、取得費と譲渡費用を差し引いても利益がある場合は、所得税と住民税がかかることになります。

 

引用:国税庁HP(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_2.htm

 

2-2.相続税の取得費加算の特例

相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができる特例を「相続税の取得費加算の特例」と言います。

この制度を利用すると、取得費を多く設定することができますので、課税譲渡所得金額が低くなり譲渡所得税を節税することができます。

 

「相続税の取得費加算の特例」を使うためには、以下の要件を満たす必要があります。

①相続、遺贈などで不動産を取得していること

②取得した人に相続税が課税されていること

③ 不動産が、相続が発生したときから3年10か月以内に譲渡されていること 

 

参考:国税庁HP(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm)

 

3.投資目的の不動産を売却する場合 

 

譲渡所得課税は、自分がその不動産の所有者になってから売却した年の1月1日までの保有期間が5年超なのか5年以下なのかで税率が違ってきます。

この保有期間が5年を超えるものを「長期譲渡所得」といい、税率は所得税15%、住民税5%となります。保有期間5年以下で売却したものを「短期譲渡所得」といい、税率は、所得税30%、住民税9%となります。

支払う税金は、 課税譲渡所得金額×(所得税+住民税)となるため、長期譲渡取得のほうが支払う税金が安くなります。

 

ここで、注意しなければならないのが、相続した土地・建物を売却する場合、相続した人ではなく、被相続人がその不動産を取得した日からを保有期間となります。例えば、平成30年中に譲渡した場合は、その土地や建物の取得が平成24年12月31日以前であれば「長期譲渡所得」に、平成25年1月1日以後であれば「短期譲渡所得」になります。

 

引用:国税庁HP(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_2.htm

 

4.自己破産などの債務整理のために不動産を売却する時の任意売却と競売の違い

 

任意競売とは、借り入れをしている金融機関など債権者の同意を得て、一般市場で不動産を処分することをいいます。

競売とは、債務者が住宅ローンや借入金の返済が滞ってしまった際に、債権者が裁判所に申し立てることによって、担保として提供を受けていた不動産や債務者の財産を差し押さえ、裁判所の権限によって強制的に売却をし、その売却代金から支払いを受け、債権の回収に充てる手続きであり、その手続きは民事執行法により定められています。

競売手続きの流れとしては、債権者が裁判所へ申立をして、対象物件の評価が決定した後、入札に参加した買受申出人の中から最高額で落札した人へ不動産の権利を移転させます。 

任意競売は通常の売買契約と同様、売主と買主の契約によって成立するのに対して、競売は、裁判所主導で強制的に進みます。

 

5.不動産の資産整理を依頼する時は誰に相談するべき?

 

①税理士

先に述べたように、不動産を売却した際、売却益が出た場合には、譲渡取得課税がなされます。自分で税金の申告をすることもできますが、手続きが複雑であり、また書類の量も膨大になります。また場合によっては特例などを利用することによて節税を行うこともあります。

そのため、適切な申告をするためには、専門手知識が必要となるため、実際には税理士に相談する方がよいでしょう。

 

②司法書士

不動産を売却する場合は、不動産の名義変更が必須です。不動産の名義変更は法務局に自分で出向き、手続きをすることも可能です。しかし、必要書類の作成や提出などには、かなりの時間と手間、そして知識を要します。

そのため、日ごろから、不動産に関する事案を多く扱い、トラブル対処法や不動産に対する法律知識を十分に有している専門家である司法書士に任せる方が無難です。

登記費用などを含めてかかる費用は、一般的に弁護士に依頼するよりも高くありません。

 

③弁護士

法律職の最高位であり、裁判所で訴訟の当事者の代理人として法廷に出廷できます。税理士や司法書士に比べて費用は高くなりますが、不動産の資産整理に際してトラブルが発生し、訴訟に発展した場合は税理士や司法書士では対応できないことが多々あります。その場合には、やはり法律職の最高位である弁護士に依頼するのがよいでしょう。また、当初からトラブルが予想される場合なども、「トラブルの予防」として弁護士に相談することをおすすめします。

 

このように、資産整理を依頼するときには、その時々で相談するべき相手は変わってきます。まずは税理士と司法書士に相談し、訴訟等のトラブルが発生した場合、またはトラブルが予想される場合には弁護士に相談するのが一般的です。

 

6.資産整理のために不動産を売却するときの注意点

 

迅速に資産整理をするためには、その資産について権利関係が明確であり、トラブルがないことが重要です。以下で詳しく述べますが、境界線について争いがないことや、売却したい不動産の名義が自己の名義になっていることなどに注意しなければなりません。

 

7.資産整理しようとする不動産土地の境界線で争いがないこと

 

境界とは、法的には不動産登記された土地の地番と地番の境目のことを言いますが、一般的には自分の土地と他人の土地との境目(隣地境界)、ならびに道路との境目(道路境界)の意味として使います。

土地建物を売ろうとした際、隣人の建物や建物の付属物が、敷地境界線を越えていたり、樹木の枝葉が隣の家にはみ出している場合や地下に埋設された水道管や配水管、ガス管などが他の敷地を通っていたりする場合に問題となります。

他人の物を勝手に売ることが出来ないため、このような場合、取引自体が難しくなってきます。

 

境界トラブルの解決方法として以下をご紹介します。

①境界問題解決センターへの相談

境界がはっきりしていないのであれば、土地家屋調査士に正しい境界線を確定してもらい、その結果、隣がはみだして使っている部分を隣地の所有者に買ってもらうなどの解決方法が考えられます。しかし、当事者同士で話し合ってもまとまらないとか、そもそも話し合いができそうにない場合には、専門的な機関の助けを借りることになります。

全国の土地家屋調査士会の運営する境界問題相談センター(地域によって名称は異なります)という相談所が各地あり、境界や隣接地をめぐるトラブルについて、土地家屋調査士と弁護士に相談することができます。土地家屋調査士と弁護士が協力し、円満な形でトラブルが解決するようサポートしてくれます。

 

②筆界特定制度の利用

筆界特定制度とは、法務局の筆界特定登記官が、現地の土地の境界を特定する制度です。原則として、境界がどこなのかを示す境界標の設置までは行いませんが、公的な判断として境界の位置を明確にできるため、トラブルを回避、または解決することにつながりやすいといえます。

しかし、この結果に不満がある当事者は,後述する境界確定訴訟を提起することができるため終局的な解決にならない場合もあります。

 

③裁判(境界確定訴訟)

境界問題を最終的に解決したい場合は、裁判所に境界確定訴訟を提起することになります。

この場合、自分と隣接地の所有者双方が主張する境界を示した測量結果、境界確定した経緯などを示す証拠を提出し、最終的には裁判所が境界を確定する判断をします。

 

8.資産整理しようとする不動産の土地に登記されていること

 

登記簿にはその土地がどこにあり、誰が所有者で、その所有者は誰から土地を譲り受け、この土地はどのように利用されているのかなど、その土地に関する重要な情報が記されています。登記簿は法務局の管轄で、手数料を支払えば誰でも閲覧できます。そのため、登記簿を見るとその土地の経歴が分かるため、その土地を買いたいと思う者は安心して取引関係に入ることができます。

土地を売却すると土地の名義が買主に移りますが、このときに行う登記が「所有権移転登記」です。不動産登記は売主と、買主が共同で登記申請をするのが原則であり、所有権を問題なく移転できるように、売主は買主に協力義務があります。

未登記の不動産でも個人間で売買することは可能です。しかし、未登記の建物の売買はトラブル発生のリスクが高いため、なかなか買い手が見つかりません。ここで、発生しうるトラブルについて具体的に説明します。

 

未登記建物の所有者である売主Aから、買主Bが未登記建物を買い受けて、その後、その建物に住んでいたとします。BはAからその建物について所有権移転登記を受けていないため、この建物の所有者であることを公示されていません。この取引関係を知らない第三者からすれば、Bは、誰が建物を所有しているかわからない建物に住んでいる人になります。

仮にこの状況で元の所有者であるAが所有権保存の登記をA名義で行い、他の誰かに、再度この建物を売却したとします。当事者間で有効に成立した権利関係を第三者に主張するためには登記が必要となります。そのため、新たな買主に所有権移転登記をされてしまうと、既に住んでいるBは新しい所有者に自分が所有者であると主張することが出来ず、立ち退かなくてはなりません。

 

このように、買主にとって登記のされていない未登記建物を買うことは大変リスクを伴うため、よっぽどのことがない限り、買主は未登記不動産を買うことはありません。

よって、迅速な資産整理をするためにも、自己名義の登記があることが必要となります。

 

9.売却しようとする不動産・土地の相続人の了承を得ていること

 

遺言書がなく、また遺産分割協議が行われていない相続財産は、相続人全員の共有(民法第898条)状態となります。その財産を利用・処分等する際には、全員の同意(民法第251条)が必要となります。したがって、相続人が複数いる場合、相続財産を売却したい場合には、相続人全員の同意が必要となります。

具体的には、不動産を売却する際に不動産業者と媒介契約を結ぶには、

①相続人全員が署名捺印する

②相続人のうちの1人が代表者となり、他の相続人が代表者に不動産の売却とそのための媒介契約の締結を委任(印鑑証明書付委任状)する、という2通りの方法があります。

 

10.まとめ

 

資産整理による不動産の売却は、目的も多岐に渡ります。また、どのような目的売却するかによって、売却時期も方法も異なります。そして、売却する際に、法的にトラブルが発生しやすい点に注意しなければなりません。

また、売却益がある場合には税金がかかります。しっかりと納税しながらも、自己の財産を守ることも大切になってきます。資産整理の目的に合わせて専門家や業者に相談することにより、自分の希望に合った資産整理を達成することができるでしょう。

 

11.さいごに

 

不動産の資産整理について網羅的に述べてきましたが、「どの専門家に相談すれば良いのか?」ということについては、事例ごとに異なってくるため断定はできません。しかし、まずは誰かに相談することが大切です。

例えば、司法書士は税金の相談は専門外なので応じられませんが、税金の専門家である税理士を紹介することは可能です。税理士は不動産の名義変更登記の相談は専門外なので応じられませんが、登記の専門家である司法書士を紹介することは可能です。

税理士・司法書士・弁護士等の士業は、自身のお客様のニーズにできるだけお応えできるように他の士業と必ず繋がっています。一人で悩まずにまずは専門家にご相談ください。

投稿者: 木村拓

東京都足立区の司法書士木村拓と申します。 親切かつ迅速をモットーに、わかりやすく丁寧な説明と提案を心がけており、おかげさまで足立区を中心に多くの方々にご相談をいただいております。 「司法書士」と聞くと敷居が高いと感じる方もいらっしゃるでしょうが、 街の法律家として皆様に寄り添う存在でありたいと考えております。 お困りごとがございましたら、どうぞ買い物ついでにお気軽にご相談ください。