いま持っている土地を子どもに贈与して家を建てる支援をしたいけど、どんな手続があるのだろう。税金はどの程度かかるのだろう、何か節税できる制度はないのだろうかとお考えの方がいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、不動産を贈与するときにするべきこと、贈与するときのメリット・デメリット、節税対策についてのお話です。

 

1.不動産の贈与とは?

 

不動産の贈与とは、贈与により土地や建物などの不動産の所有権を別の者に移すことです。贈与を原因とした土地・建物の登記の名義変更を行うことが必要です。

贈与は「生前贈与」「死因贈与」「負担付き贈与」の三種に分類できます。

「生前贈与」は所有者が存命中に所有権を移転することです。「死因贈与」は所有者が死んだら所有権を移転することを生前に約束するもので、遺言と同じ効果があります。「負担付き贈与」は所有権移転するに際して金銭の負担や土地の無償使用などの条件を課すことです。

 

2.不動産を贈与することにより発生する影響とは?

 

不動産を贈与した場合、最も大きい影響は税金が課せられるということです。

「生前贈与」は不動産を贈与された者に贈与税が課せられます。「死因贈与」は不動産を贈与された者に相続税が課せられます。「負担付き贈与」は贈与された不動産の評価額から負担すべき債務費を差し引いた金額に対して贈与税が課せられます。

またいずれ場合も、贈与された者は不動産取得税や土地や建物登記の名義変更手続で登録免許税がかかります。

 

3.不動産を生前贈与するメリット・デメリット

 

それでは不動産を生前贈与した場合、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

 

  メリット

(1)自分の意思どおりに不動産を贈与できる

遺言で不動産を相続させることは可能ですが、相続には遺留分というものがあって、他の相続人が最低限の取り分を請求すると、必ずしも被相続人の意思どおりにはならない可能性があります。

その点生前贈与だと自分の意思どおりの贈与ができます。

 (2) 配偶者控除で節税ができる

相続税に比べて贈与税の方が負担が大きいので、一般的にはメリットがないのですが、「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」の制度を利用すれば節税をすることができます。

婚姻期間が20年以上の夫婦の場合に適用され、2千万円まで非課税になります。さらに1年110万円の基礎控除と合わせて2,110万円が非課税となります。

この制度については後の項で詳しくご説明します。

  (3) 現金を直接贈与するよりも節税効果がある

不動産の評価額は実勢価格の60%~80%になるため、直接現金で渡すより節税効果があります。

  (4) 将来土地の高騰が明白な場合は節税効果がある

市街化調整区域から市街化区域への編入が見込める土地や新駅予定地の隣接地などの将来土地の高騰が明白な場合は、評価額が上がる前に贈与した方が、結果的に節税になる場合があります。

  (5) 所有権の移転登記がスムーズにできる

相続による所有権の移転登記は当事者間の契約書があればスムーズに所有権を移せます。

 

  デメリット

(1) 税負担が大きい

相続税に比べて贈与税の方が税率が高いために税負担が大きくなります。

 (2)  土地が大幅に下落した場合の負担差が大きい

贈与税の負担が大きいのを承知で贈与を受けた場合であっても、その後土地が大幅に下落すると、結果的に贈与の時期を見誤ったということになります。

 

4.不動産の生前贈与税にかかる税金とは?

 

不動産を生前贈与された場合は贈与税が課せられます。また不動産取得税や名義変更登記で登録免許税がかかります。

このうち最も影響の無大きい贈与税についてみていきましょう。

税率は、国税庁の速算表で以下のとおり示されています。相続税などに比べて高い税率が設定されています。

 

 基礎控除後の課税価格 税率 控除額(一般用)
 200万円以下 10% ―
 300万円以下 15% 10万円
 400万円以下 20% 25万円
 600万円以下 30% 65万円
 1,000万円以下 40% 125万円
 1,500万円以下 45% 175万円
 3,000万円以下 50% 250万円
 3,000万円超 55% 400万円

 

上の速算表は、一般用ですが、直系尊属(祖父母、父母)から20歳以上の者への贈与は、以下の「特別贈与財産用」の表が適用されます。控除額が一般用に比べて多いので一般用に比べて税負担は軽くなります。

 

 基礎控除後の課税価格 税率 控除額(特別贈与財産用)
 200万円以下 10% -
 300万円以下 15% 10万円
 400万円以下 20% 30万円
 600万円以下 30% 90万円
 1,000万円以下 40% 190万円
 1,500万円以下 45% 265万円
 3,000万円以下 50% 415万円
 3,000万円超 55% 640万円

 

それでは贈与税の負担がどれくらいなのかみていきましょう。

贈与税の課税対象になる価額は、

贈与財産価額-110万円(基礎控除)=基礎控除後の課税価格

で決まります。

贈与財産価額が5,000万円だとすると

5,000万円-110万円=4,890万円の計算結果から

基礎控除後の課税価額は、4,890万円になります。

 

次に税額を算出しましょう。

祖父から孫への贈与だとすると特別贈与財産用の表が適用されます。­税額は〈課税価格×税率-控除額〉で算出します。基礎控除後の課税価額が4,890万円だと、表の一番下が適用されますから、

 

4,890万円×55%-640万円=20,495,000円の計算結果により、

税額は2,049万5千円になります。

 

5.不動産の生前贈与をする時の手続方法

 

不動産の生前贈与をするときの手続は、法務局で土地と建物の名義変更登記を行います。

手続を開始するには、まず当該不動産の登記事項証明書を法務局で入手して、記載事項が現状と変わっていないか確認をします。最初に登記した時点から住所が変更していたり、結婚によって名前が変わっていたりしている場合には、先に住所変更登記や氏名変更登記が必要になります。

所有権移転登記申請をする際には、添付書類として贈与契約書が必要になります。任意の書式ですが、住所・氏名・物件の表示はもちろん、いつ誰が何を贈与したのかの表示が必要です。

準備が整えば、所有権移転登記申請書に必要事項を記入して贈与契約書などの添付書類を添えて法務局に申請します。

 

6.不動産を生前贈与する時の節税方法

 

不動産を生前贈与する場合の節税方法をご紹介します。

 

  6-1.配偶者控除を利活用する

婚姻期間が20年を超えた夫婦であれば、2千万円まで控除されます。さらに基礎控除年110万円を加えて最高2,110万円まで控除されます。

ただし自分が住むための居住用不動産であり、贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与を受けた者が実際に住み、その後も引き続き居住を続ける見込みであることが条件です。

この特例は、相続開始前3年以内の贈与財産は相続財産とするいう税法上の規定からも除外されていますから、相続直前の対策としても有効です。

 

  6-2.基礎控除枠を活用する

基礎控除年110万円以内の評価額の不動産を譲与する方法があります。相続税路線価が安い土地だと、ひとつの土地を数年間にわたって譲渡すれば全土地の譲渡が完了します。ただしそのつど分筆と変更登記が必要なので手間と手数料を要します。

 

  6-3..生前贈与は現金ではなく不動産を活用する

なにかの事情で資産を贈与する場合は、現金で渡すよりもマンションなどの不動産で渡した方が贈与税の節税になります。税制上不動産の評価額は相続税路線価で判断しますが、これは市場の実勢価格よりの60%~80%の価額になります。したがって課せられる税額も現金で渡すよりは安くなります。

 

7.不動産の生前贈与は相続時精算課税制度で節税する

 

相続時精算課税制度は、贈与を受けた際に本来かかるはずの贈与税を先送りにして、贈与者が亡くなった時点で相続税として納める制度です。贈与を受けた額が累計で2,500万円以下であればこの制度を適用できます。

 

  7-1.有効に活用すれば節税になる

相続時精算課税制度では 贈与した者が亡くなった時点で、相続財産と贈与財産の合算額が相続税の課税対象になります。一般的に贈与税に比して相続税の方が税率が低いため節税になります。

 

  7-2.デメリットがあるので慎重に判断する

相続時精算課税制度で注意すべきことは、いったんこの制度が適用されると、贈与者が亡くなるまで自動継続され、基礎控除(年間110万円)が適用されなくなる点です。基礎控除にも大きなメリットがあるので、どちらを選択するかは慎重に判断した方がいいでしょう。

また不動産の評価額が変動する点にも注意が必要です。税法上は不動産の評価額は贈与時で固定されます。評価額が贈与時よりも相続時に高騰していれば節税効果があったことになりますが、相続時に評価が下がっていれば事実上税金の負担が増えたことになります。

 

  7-3.相続税の申請が必要

相続時精算課税制度や配偶者控除の非課税枠制度は、何もしなくても勝手に非課税になるのではありません。贈与のあった年の翌年の3月15日までに贈与税の申告をして初めて非課税枠が適用されるます。申告が一日でも遅れると、この非課税枠制度が使えなくなるどころか、たちまち贈与税が課せられますから、必ず贈与税の申告をしましょう。

 

8.まとめ

 

不動産の生前譲渡について説明をしてきましたが、いかがでしたでしょうか。

不動産の生前譲渡は、税率の高い贈与税が課せられますが、しっかりと自分が渡したい人に不動産が引き継げるというメリットがあります。さらには、現金でそのまま渡すよりも不動産で渡した方が節税になります。

いくつかある非課税枠を上手に活用しながら、どのように不動産を譲渡するのか。あるいは相続するのか、じっくりと考えてみてください。