土地などの価値の高い不動産を所有している場合、どういう方法によって子供や孫に渡そうと悩まれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。ご自分が亡くなられて相続で土地を引き継ぐ方法もありますが、土地の『生前贈与』を行うことで効率的に財産の分配を行うことができ、相続税の軽減になる場合もあります。今回は『生前贈与』の手続きやメリットにデメリットについてご紹介したいと思います。

 

1.  土地を生前贈与する時の流れ

 

『土地の生前贈与』と聞いて難しいのではないかと感じ、専門家の司法書士や弁護士に依頼する方もいらっしゃると思います。専門家に任せるのが一番ですが、専門家への報酬額が5万円から10万円程かかってきます。

土地の生前贈与の手続き自体は決して難しいものではありません。手続きの流れは以下の5つのステップです。

① 生前贈与の対象となる土地の現物を確認する。

② 贈与税がいくら位かかるか計算する。

③ 不動産贈与登記に必要な書類を集める。

④ 贈与契約書を作成する。

⑤ 法務局へ不動産贈与登記の申請を行う。

 

2.  土地を生前贈与する時の手続き

 

土地を生前贈与する流れを簡単に見ていきましたが、具体的な手続きは何をすればいいのでしょう。一つ一つ見ていきたいと思います。

①   生前贈与の対象となる土地の確認は、法務局から登記簿謄本や公図を発行してもらい、贈与者と受贈者が実際の対象となる土地に行って現況確認します。特に土地の境界については、贈与後の近隣問題になる場合があるので、贈与者から受贈者に説明しておく必要があります。境界は公図を見て判断しますが、公図が現況と必ずしも一致しない場合があるため十分な確認が必要です。

登記簿謄本と公図は法務局のオンラインサービスで簡単に取得できるので、前もって取得しておくとよいでしょう。

②   贈与税がいくら位かかるか計算する。具体的な計算方法は記事の後半に記載しています。

③   不動産贈与登記に必要な書類を集めます。対象の土地の登記識別情報(登記済証)、贈与者の印鑑証明書、受贈者の住民票(マイナンバーの記載がないもの)、対象の土地の固定資産評価証明書が必要になります。全て市町村役場で発行されます。ご本人が窓口へ行けない場合は、『委任状』を持参すれば代理人でも手続きをすることができます。

④   贈与契約書を作成して、贈与者、受贈者の署名押印を行います。具体的な作成方法は記事の後半に記載しています。

⑤   法務局へ不動産贈与登記(所有者移転登記)の申請を行います。具体的な申請方法は記事の後半に記載しています。

 

3.  土地を生前贈与するには、贈与契約書を作成する。

 

贈与契約書の作成は土地の生前贈与の所有権移転登記に必要な書類になります。また、贈与税の申告書にも添付が必要です。贈与契約書とは、財産をあげる人ともらう人が合意した証であり、相続時のトラブルを未然に防ぐこともできるため、必ず作成しましょう。

贈与契約書をどのように作成すればよいかというと、贈与者と受贈者の名前と住所、贈与日、贈与物件が記載されていなければなりません。

具体的には法務局のホームページに“贈与契約書の例”が記載されているため参考にするとよいでしょう。

http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001207215.pdf

 

 土地を生前贈与するには名義変更登記をする

 

法務局へ不動産贈与登記(所有者移転登記)の申請を行います。③で集めた書類と、④の贈与契約書を持参して、生前贈与する土地を管轄している法務局へ行きましょう。法務局では“登記申請書”を作成して申請します。法務局に記入例が用意してありますので、住民票や登記簿謄本を確認しながら記入しましょう。登記申請書には登録免許税の納付が必要になります。生前贈与対象になる土地の固定資産評価額(③で取得した固定資産税評価証明書の額)の2%が登録免許税になります。例えば土地の評価が1,000万円だった場合は、20万円分の収入印紙を法務局で購入して納付します。

他には土地の所有権が移転したことで不動産取得税が課税されます。不動産所得税は、不動産の譲渡、贈与があった場合に都道府県が課税する税金です。その土地の課税標準額の3%の納付が必要です。(平成33年3月31日まで取得分) 受贈者が住んでいる住宅の土地の場合軽減措置があるため確認が必要です。また、納付については、都道府県が所有権移転を確認した後に『納税通知書』を送付しますので、その通知書により納付します。

 

5.  土地を生前贈与するには贈与税の申告を行う

 

生前贈与をすると贈与税が発生します。贈与税とは、財産をもらった人が支払うべき国税であり、生前贈与により相続税の課税を回避することを防ぐための税金です。贈与税の税率は相続税より高く設定されていますが、相続税の“相続時にすべての相続資産に課税する”ものとは違い、“11日から1231日までの1年間で贈与された財産”に課税されるものです。また、基礎控除として年間110万円の控除があります。

土地を生前贈与した場合の贈与税の額は、土地の評価額によって変わってきます。

土地の評価額の算定は、2つの方法があります。1つは『路線価方式』といい、都市部で使われる計算方法です。国税庁が公開している『路線価』という評価基準を使い、1㎡あたりの価格に、土地の総面積を乗じて評価額を算定することができます。正確には、土地が二路線に面していた場合は評価額が高くなったり、土地が正方形では無い場合は評価額が低くなったりします。

もう1つの方法は、『倍率方式』といいます。主に都市部でない地域で使われます。計算方法は、市町村が課税する固定資産税の評価額を使って計算します。地域によりその固定資産税評価額の1.1倍や1.2倍など決まっていますので、その倍率を乗じることで評価額を算定します。

では例をつかって、実際に土地を生前贈与した場合の税額を計算してみましょう。

例)評価額1,000万円の土地を贈与した場合(一般的な場合)

土地の評価額の1,000万円から基礎控除の110万円を控除し、その額に贈与税率を乗じて計算します。

{1,000万円-110万円)×40}125万円=231万円

この場合の贈与税の納付額は231万円となります。

贈与税の税率は国税庁のホームページで確認することができます。

https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/4408.htm

贈与税は、『一般的な場合』以外に『特例贈与財産』として、“直系尊属”(祖父母や父母)から20歳以上の者への贈与は特例税率で計算されます。

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku-zoyo/201510/index.htm

その他に土地を生前贈与する場合の贈与税にはいくつかの特例があります。

①    配偶者控除

住宅用不動産、または不動産の購入資金を配偶者が贈与を受けた場合は課税対象額から2,000万円までの控除ができます。婚姻期間が20年以上必要などの適用条件があります。

②    相続時精算課税制度

2,500万円以下の贈与であれば相続時にその土地の財産価格を加算することにより、今回の贈与税を繰延することが可能です。将来的に価値の上がる土地であれば有効な特例です。

贈与税の申告は、贈与が行われた翌年の315日までに最寄りの税務署へ申告、納付を行わなければなりません。

 

6.  土地を生前贈与するメリットとデメリット

 

土地を生前贈与する場合の主なメリット、デメリットを紹介します。

 

  6-1.メリット

① ご自分がその土地を引き継いでもらいたい方に確実に渡せます。相続時に遺言を残すことも考えられますが、土地を生前贈与することによって確実に土地の引渡しができます。

②相続財産が減らせます。生前贈与をすることによって、その土地は相続財産に含まれません。相続税が課税になるか、ならないかの資産額の方は、土地を生前贈与することにより相続税の申告が必要なくなる場合があります。

③    配偶者控除や相続時精算課税制度の贈与税の特例を使うことができます。

 

  6-2.デメリット

受贈者が贈与された土地の登録免許税、不動産取得税、贈与税を支払わなければならないため、     土地の評価によっては多額の負担が必要になります。

②    生前贈与する場合かかる不動産取得税ですが、相続で土地を取得した場合は課税されません。

 

7.  生前贈与により土地を贈与する時の注意点

 

土地を生前贈与することは、ご自身の希望通りに土地を譲る確実な方法です。ですが、受贈者の贈与税、不動産取得税、登録免許税の金銭的負担があることを忘れてはいけません。また、相続により土地を引き継ぐと、小規模宅地等の減額特例や物納、配偶者控除などの特例が関わってきますので、土地を生前贈与で渡すべきか、相続で渡すべきか十分の検討される必要があります。