不動産は持っているけどそのまま遊ばせているのはもったいないので、子どもに活用してもらいたいと考えている人は多いのではないでしょうか。

不動産を贈与するときに税金や費用はどのくらいかかるのか、どのような方法で贈与したらいいのかについてご紹介します。

なお、わかりやすくするために、両親と子ども一人(20歳以上)の家族で、現金2,000万円と土地2,000万円(時価)を持っている場合をモデルケースとしてご説明します。

1.不動産贈与には贈与税がかかる

 

民法では、「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」とされています。
例えば親が自分の土地をあげようと子どもに意思表示をし、子どもがそれを受諾すれば贈与は成立します。
贈与は個人から個人へ、個人から法人へ等色々なパターンがありますが、贈与税がかかるのは、個人から個人への贈与です。

贈与税の税率には「一般税率」と「特例税率」の二つがあります。
「特例税率」は、祖父母や父母(直系尊属といいます)からその年の1月1日に20歳以上の子や孫(直系卑属といいます)への贈与に適用され、それ以外の贈与は「一般税率」が適用されます。

「特例税率」の方が税率が低くなっており、今回のモデルケースでは「特例税率」で計算しています。

贈与税の一般的な計算方法は、まず1月1日から12月31日の間に贈与された財産から基礎控除額の110万円を差し引きます。
そして残った金額に税率をかけ、さらに控除額を差し引き決定されます。

例えば今回のケースの場合、現金2,000万円を子に贈与した場合の贈与税は、(2,000万円-110万円)×45%-265万円=585.5万円 となります。

土地2,000万円(時価)を贈与した場合、土地の評価額は時価ではなく路線価や固定資産税評価額に一定の倍率を乗じた額となります。
一般的に路線価は時価の70%~80%程度と言われていますので、70%と仮定して計算すると、(2,000万円×0.7-110万円)×40%-190万円=326万円 となります。

モデルケースの場合、2,000万円の現金を贈与した場合と時価2,000万円の土地を贈与したの場合の贈与税には259.5万円もの差が生まれます。

 

2.不動産を贈与するメリットとデメリット

 

このように、贈与する場合、同じ価値を持つ財産でも、現金よりも土地の評価額が低くなり、贈与税も低額になることから、土地の贈与のほうがメリットがあると言われています。
また、親の土地に自分で家をたてることも可能ですが、土地の贈与を受け家も土地も自分のものとすることにより、社会的評価が上がることもメリットの一つでしょう。

一方、デメリットもあります。
土地の贈与を受けてすぐに自分が住む家を建てる場合はあまりデメリットはありませんが、遠くに住む両親から土地の贈与をうけた場合、その土地に対する管理費用が必要となるとともに管理責任が生まれます。

また、現金での贈与であれば、贈与を受けた金額の中から贈与税を納めればいいのですが、不動産の贈与の場合は、手持ちの現金や預貯金から税金等を収める必要が生じます。

なお、通常の相続をした場合の相続税や各種費用の合計額と比較して贈与の場合が不利な場面が生じることもありますが、このことについては、後述します。

 

3.不動産を贈与するときの節税方法

 

次に、不動産を贈与するときに選択できる節税の方法、「相続時精算課税の制度」をご紹介します。

国税庁のホームページでは、次のように説明されています。
「相続時精算課税の制度とは、原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。」

適用対象者は、「贈与者は贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母又は祖父母、受贈者は贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の者のうち、贈与者の直系卑属(子や孫)である推定相続人又は孫」とされています。

贈与税の税額の計算は、「贈与財産の価額の合計額から、複数年にわたり利用できる特別控除額(限度額:2,500万円。ただし、前年以前において、既にこの特別控除額を控除している場合は、残額が限度額となります。)を控除した後の金額に、一律20%の税率を乗じて算出します。」とされています。

モデルケースの場合、現金2,000万円、土地2,000万円(時価)について、すべてこの制度を利用した場合、贈与財産の価額が(2,000万円+2,000万円×0.7)-2,500万円=900万円 となり、税額は、900万円×20%=180万円となります。

「相続時精算課税の制度」を活用しないで一括で贈与をうけた場合は、贈与財産の価額が(2,000万円+2,000万円×0.7)-110万円=3,290万円 となり、税額は、3,290万円×50%-415万円=1,230万円となります。

1,230万円-180万円=1,050万円という大きな違いがでてきます。

このように「相続時精算課税の制度」は贈与税という面だけ見ればいい制度ですが、実際は相続税や不動産取得税、登録免許税等を考慮して検討することが必要です。

モデルケースについていうと、例えば父親が亡くなった場合の相続税の基礎控除額が3,000万円+600万円×2=4,200万円となり相続税は発生しません。
相続税の精算時に払いすぎた分は還付されますが、相続税の申告書を提出しなければならず、無駄な手間が必要となります。

また、不動産取得税についても考えなければなりません。
相続の場合は不動産取得税は課税されませんが、贈与の場合は不動産取得税が課せられます。
税額は3%ですので、2,000万円×0.7×3%=42万円となります。

さらに登録免許税額も違いがあり、相続の場合は0.4%であるのに対し贈与の場合は2%となりますので、2,000万円×0.7×(2%-0.4%)=22.4万円の差が生まれます。

贈与される土地の評価額や相続財産、相続人の数等によっていろいろなパターンがあるので一概には言えませんが、単純に「相続時精算課税の制度」を活用したほうがいいとは言えません。

 

4.不動産を贈与するときの節税の種類

 

「相続時精算課税の制度」以外にも節税に利用できる制度があります。

「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」という制度があります。
直接土地等の不動産を贈与するのではなく、例えば土地を売却してその売却した得た現金を

子どもに贈与する方法です。

直系尊属から自分が住む住宅の新築や増改築等の対価に充てるために、贈与を受けた年の1月1日において、20歳以上である直系卑属が贈与をうけた場合、贈与税が一定額非課税となる制度です。
平成30年現在、省エネ等住宅以外の住宅で、700万円まで非課税となっています。

また、「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」という制度もあります。
「婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例」です。

両制度とも、詳しくは国税庁のホームページでご確認ください。

 

5.不動産を贈与する時の手続方法

 

不動産を贈与するときは、一定の手続きが必要です。
まず、贈与契約書の作成を行い、次に不動産の名義変更登記、そして、贈与税の申告を行います。

 

6.不動産の贈与手続きは贈与契約書の作成を行う


不動産の贈与は、贈与するという意思表示(申込み)とそれを受けるという意思表示(承諾)が必要です。
当事者の間では書面は必ずしも必要ではありませんが、所有権移転の登記をする際には必要となります。

法務局のホームページには、贈与契約書の例が載っていますので、それらを参考に作成すればいいでしょう。

 

7.不動産の贈与手続きには名義変更登記を行う

 

次に、所有権の名義変更登記を行うことが必要です。
まず、登記申請書の作成です。
登記の目的、原因、権利者、義務者、課税価格、登録免許税、不動産の表示といった項目を記載する必要があります。
また、添付情報として登記識別情報(又は登記済証)、登記原因証明情報、代理権限証明情報、印鑑証明書、住所証明情報等が必要となります。

 

8.不動産の贈与手続きには贈与税の申告を行う

 

そして贈与税の申告が必要です。
国税庁のホームページには、「贈与税がかかる場合及び相続時精算課税を適用する場合には、財産をもらった人が申告と納税をする必要があります。申告と納税は、財産をもらった年の翌年2月1日から3月15日の間に行ってください。」とあります。
 また、相続時精算課税については、「相続時精算課税を適用する場合には、納税額がないときであっても財産をもらった年の翌年2月1日から3月15日の間に申告する必要があります。」とされていますので注意してください。

また、同ホームページには、「贈与税の申告のしかた」や「贈与税の申告書等の様式一覧」もありますので、これらを参考に申告を行うことができます。

なお、お忙しい場合も多いかと思いますので、登記や税務申告については司法書士や税理士等にご相談するのもいいかもしれません。

 

9.不動産の贈与をする時の注意点

 

これまで述べてきたとおり、不動産の贈与には注意すべき点がいくつもあります。
特に「相続時精算課税の制度」を活用するかどうかについては、相続税、不動産取得税、登録免許税等、相続との関係でさまざまなケースが考えられますので、いろんな観点から検討していくことが大切です。

投稿者: 益本正藏

1967年 佐賀県生まれ 90年慶応義塾大学商学部を卒業。91年、大手監査法人に入所。97年、公認会計士・税理士事務所に入所。2000年、益本公認会計士・税理士事務所を開設。13年、税理士法人総和、益本公認会計士事務所を開設。数多くの知識と経験を活かし、事業継承や相続にかかわる税務相談・セミナーを行っている。特に不動産オーナー向けにプライベートカンパニーを設立して資産運用や節税のためのセミナーを展開している。 趣味は水泳と自転車、美術館巡り 主な著書に「土地を相続したら還付請求で税金を取り戻す」(共著)など多数。