不動産の名義は基本的に、購入代金を支払う(住宅ローンも加えて)人の名義にするのが基本です。夫が全額出すのであれば、その不動産を夫名義にし、複数の人物が代金を分けて負担した場合、その負担割合に合わせて持ち分を計算して、複数の共有名義にするのが大原則です。

例えば、5,000万円のマンション購入するとして、頭金として、夫が500万円、妻も500万円出して、残額4,000万円を夫名義で住宅ローンを組めば、夫所有分4,500万円/5,000万円=90%、妻所有分500万円/5,000万円=10%として共有登記するのが普通です。

女性の社会進出が盛んな現在、結婚後もダブルインカムな夫婦も当たり前の状況になってきました。住宅ローンも、夫だけでなく、妻も組むケースも増えています。上の例で、残額4,000万円を夫のローン3,000万円、妻のローン1,000万円を組めば、夫の持ち分70%、妻の持ち分30%として登記します。

この原則にもかかわらず、不動産の名義人をどうする?という疑問が出てくるのは、三つの観点でいろいろ心配事を考えてしまうからです。

1つ目は、税金の観点から

2つ目は、相続の観点から

3つ目は、離婚の観点から

以上の3点から、夫婦の住宅の名義に関して、問題点と対策を検討しましょう。

 

1.夫婦の住宅の名義を税金の面から検討する

1-1 夫婦の住宅の名義と贈与税

不動産を購入すると、税務署から「お尋ね」が来ます。これは資金の出所を確認して、親族間で無届けの贈与などがないか調査する目的のものです。もし、贈与と認定できるお金の移動があれば、贈与税が課せられますが、資金調達方法通りに説明すれば、何の問題もありません。

住宅の購入資金は次のように夫の資金と妻の資金に分けられます。

1)夫(妻)名義の預貯金や金融資産(株や債券)からのお金は、夫(妻)の資金です。

2)夫(妻)名義の住宅ローンを組めば、ローンの借り手の夫(妻)の資金です。夫婦それぞれがローンを組めば、それぞれの資金です。

3)前に住んでいた家を売ったお金は名義人の物になります。100%夫(妻)の名義であれば、これは夫(妻)の資金です。前の家が親と共有であれば、親の所有分は、親からの援助となりますので、下の親からの援助の項を参照してください。

4)親からの援助に相当する部分は、基本的に、親の名義になりますが、2,500万円までは、住宅購入時に親から子への「相続時課税精算制度」を利用して、贈与税を支払うことなく、子である夫(妻)の名義にできます。夫が夫の親から、妻が妻の親から、別々にこの制度を利用できます。(2,500万円を超えた場合は、超えた金額に対して20%の贈与税が発生します。)

また、平成33年12月21日までに住宅取得等資金を父母や祖父母から贈与を受ける契約を締結した場合には、一定の限度で非課税措置を受けることができます。(平成30年9月時点では700万円または1,200万円の限度で贈与税が非課税です。)

以上で得た資金を元に、夫の所有割合、妻の所有割合を計算して、夫婦の共有名義にすれば、税務署から贈与税が課税されることはありません。この資金負担を無視して、一方の名義にすれば、妻(夫)から夫(妻)への贈与になりますので、注意してください。

 

1-2 夫婦の住宅の名義と住宅ローンによる所得税控除

自分が住む住宅に対して住宅ローンを組めば、購入の年から10年間、毎年住宅ローンの残額の1%が、所得税(所得税を超えたら住民税)から控除されます。

この制度は、ローンの名義が夫婦別々であれば、それぞれの住宅ローンに対して適用されます。

共稼ぎの場合、夫婦両方がこの恩恵を受けることも可能です。

税額控除(支払う税金から差し引かれる)ですので、大きな金額になります。

1,000万円のローン残高に対して10万円の控除です。

超低金利の現在、定期預金をくずして頭金にするより、組めるならローンを組む方がお得とも考えられます。

注意するのは、妻が途中で出産や育児で無収入になった場合、夫が妻名義のローンを支払えば、その分は夫から妻への贈与となることです。

でも、1年間に110万円までの贈与は贈与税非課税(贈与税暦年非課税枠)ですので、もし、妻もローンを組むなら、年間返済額を110万円以下にすれば、夫が支払いを代行しても、贈与税の対象にはなりません。

住宅ローンには、通常、団体生命保険の加入が義務付けられています。

ローンの借り手が死亡した場合、そのローンの残債は生命保険から返済され、ローン残高がゼロになります。

夫と妻が別個にローンを組んでいた場合、残債がゼロになるのは、死亡した夫(妻)の分だけですので、この点も注意してください。

 

1-3 夫婦の住宅の名義と不動産売却益の免除

自分が住んでいる住宅を売却し売却益が出た場合、3,000万円まで非課税になる制度がありますが、夫婦共有名義であれば、それぞれが、最大3,000万円まで非課税にすることができます。

過去のバブル期のように、3,000万円のマンションが9,000万円で売れるようなことはないでしょうが、将来の値上がりが期待できる物件を夫婦で購入する際には、検討に値するかもしれません。

 

 

2.夫婦の住宅の名義と相続の関係

夫婦の財産である自宅の所有権が、夫(妻)が死亡することによって、夫(妻)の親族が共有者になるのは嫌なものです。

夫が亡くなったときの相続を考えましょう。妻が亡くなった場合も同じです。

 

2-1 夫婦の住宅の名義と相続ー夫婦に子がいる場合

この場合、夫婦に子どもがいるかいないかで変わります。

子どもが居れば、夫の遺産の法定相続人は妻と子です。

妻と子だけですので、他の親族は入ってきません。前妻の子がいれば複雑になりますが、今回は省略します。

 

2-2 夫婦の住宅の名義と相続ー夫婦に子がいない場合

問題は、子がいない場合です。

夫婦に子がなく、死亡した夫に父母または祖父母が生存している場合は、その父母(祖父母)が法定相続人に入ってきます。

法定相続人には、遺留分と言って、故人の遺志に反してでも貰える最低限の割合があります。

夫が全財産を妻に遺すと遺言を書いても、夫の財産の最低6分の1は父母(祖父母)に渡さねばなりません。

遺留分は、全財産の合計ですので、住宅以外の財産で相続させることも可能ですので、夫婦の住宅は、妻の所有も登記して、できる限り、夫の父母(祖父母)に所有権を渡さないように計算しておきましょう。

では、夫の父母(祖父母)が一人も生存していない場合はどうでしょうか?この場合は夫の兄弟姉妹が法定相続人になります。

兄弟姉妹が居たが、亡くなった場合は、兄弟姉妹の子つまり甥や姪が親である兄弟姉妹に代わって相続します(代襲相続)。

これは大変な事態ですが、この場合の兄弟姉妹には遺留分がありません。この場合、夫が妻に全財産を相続させると遺言すれば、兄弟姉妹の相続権は消滅します。

遺言は重要なものです。特に子の居ない妻には重要ですので、縁起でもないなどとは言わず、きっちりとお互いに遺しましょう。

 

2-3 婚姻期間が20年以上の夫婦の住宅の名義移転の特例

婚姻期間が20年以上の夫婦には、相手側に2,110万円相当まで、贈与税非課税で住宅の所有権を贈与することができます。このうちの、110万円は、その年の暦年贈与税非課税枠です。結婚20年のお祝いのときにしておくのも良いのではないかと思います。

 

3.夫婦の住宅の名義と離婚の関係

熱烈な恋愛で結婚しても、離婚のリスクは完全に否定できません。

リスクが存在する以上は対応策を検討しておきましょう。

この記事は、あくまで離婚時の財産分与に関する不動産の取り扱いを述べるだけですので、有責配偶者(離婚の原因を作った方)や養育費の算定などには触れません。

 

3-1 夫婦の離婚時の不動産の名義と財産分与

夫婦が離婚するときには、婚姻中に作った財産は分与の対象になります。

分与の対象にならないのは、結婚前から持っていたもの、自分で使用する身の回りのもの、婚姻中に親その他から個人的にもらったもの(夫からのプレゼント含む)です。

不動産は、名義と分与には関連がありません。

結婚前から持っていた資金や自分の親からの援助部分は所有を主張できますが、ローンの分は夫だけの名義であっても婚姻期間中に協同して返済したと認められ、分与の対象になります。

 

3-2 夫婦の離婚時の住宅ローンが残っている場合の処理

分与は基本的にすべて現金化して行うのが原則です。

住宅も売却し、ローンの残債を返済して、残ったものを分けます。

ただ、売却するのが嫌で、一方が売りたくない場合は、その評価額を自分の分与分に加えます。

問題は、家の売却評価がローンの残債額より低いときです。

マイナスの財産も分与の対象です。ローン付きの住宅をローンを含めて継承する方は、相手側に応分の負担を求めることができますが、負担する方は時間の経過とともに履行を怠るようになることが多いです。

財産分与は複雑な取り決めです。

弁護士や司法書士などによる約束の文書化を行い、禍根を残さないようにしましょう。

 

 

4.まとめ

夫婦の住宅の名義をどうするのがよいか、税金の観点、相続の観点、離婚の観点からご説明しました。

利用できる控除制度は最大限使うのが得策なので、基本は実態通りに名義を登記するのが良いと思います。また税務署から登記の持分について指摘をされ、いったん登記した持ち分を更正して贈与税の課税を回避できたとしても、不動産取得税を課されてしまう恐れがあります。(地域によって最初の登記から1年以内に更正できれば課税しないなどの取り扱いもあるようです。)詳細な方針は、ぜひ、専門家とご相談ください。

投稿者: 西嶋健一郎

介護、相続、認知症など身近に起きる高齢者の問題を専門とする司法書士です。高齢者の家族が抱える悩みや不安を気軽に相談できる窓口でありたいと考えております。いつでもお気軽にご相談ください。