1.土地と建物の名義人が異なる時の売却方法 

土地と建物の名義人が異なる場合も、法律的には自由に売却できます。

建物の名義人に断りなく土地を売却したり、土地の名義人に何も言わず建物を売却することは可能です。自分が持っていない土地や建物を一緒に売ることはできませんが、法律は自分の所有している土地又は建物を単独で売却することは禁止していません。

法律的には売却が可能でも、他人の土地にある建物や、他人の建物のある土地を好んで買う人は少ないと思います。少なくとも、該当の土地と建物の関係がはっきりしていて、その権利関係をそのまま自分が継承するのでなければ、買主は現れないと思います。

例えば、購入予定の建物の底地(建物の建っている土地)が、土地の所有者との間で土地賃貸借契約により使用が許可されており、その賃借する権利が自分(買主)に移転することに対して所有者の同意が約束されている場合は安心して買うでしょう。

また、買主が土地・建物を別々の契約書で購入するが、同時に引き渡されることが確定しており、買主が購入後に自分の名義に一本化されるような場合も、買主は購入に踏み切ると思います。

ただ、土地の名義人と建物の名義人との関係が不明瞭なままでは、買主は購入に踏み切れないと思います。

そこで、具体的に、どのようにすれば売却できるか、考えてみましょう。

 

1-1.土地と建物の名義を単独所有にする方法

最も簡単な方法は、売却前に土地と建物の所有者の名義を一本化して、土地も建物も単独所有にする方法です。具体的には、一方が他方に自分の持っている土地又は建物を売却することになります。売却ですから、当然、価格と支払いという問題が発生します。土地はいくら、建物はいくらとそれぞれに評価して、それに基づいて、一方が他方に売却する形で土地と建物の所有者名義を一本化することになります。

この方法は、価格の合意がなされれば楽ですが、お互いが自分の利益に執着するあまり、交渉が難航することもあります。そのような場合、二者間ではなく、売却に関連する専門家である不動産仲介業者や司法書士を交えて相談するのが良いと思います。

 

1-2.土地と建物の名義が異なる時の注意点

妻名義の土地に夫名義で家を建てた、あるいは、親名義の土地に子供名義の家を建てたが、親が死亡し、相続により自分の兄弟の土地になったなどというケースはよくあります。夫婦や兄弟の関係がよく、売却の話がスムーズに行けば良いのですが、離婚や相続でもめているような場合は、名義の一本化はなかなか進展しません。

しかし、もめているホットな時期を避けて、クールダウンしてから、再度協議すると決めるのは絶対に避けるべきです。離婚や相続での紛争を発端とする不動産の売却は、調停に持ち込んででもその時点で解決してしまいましょう。少なくとも売却時の借地権割合だけでも確認・合意しておきましょう。

ここで、借地権割合とは、更地の状態での底地の価格を100%としたときに、上の建物の借地権(建物の所有を目的とする、地上権又は土地の賃借権)の価値が何%に相当するかという割合です。大都市では、借地権の割合は70%程度であることが多いのですが、国税庁のホームページで調べることができます。

買主は、権利関係に関して問題のある土地や建物を購入することを躊躇します。せっかく良い条件で売れる機会を、土地と建物の名義が一本化できないだけの理由で逃すのはもったいないです。不動産屋、弁護士、司法書士などの第三者の専門家を交えて、全員が満足する解決策を冷静に探りましょう。

 

 

2.土地や建物の権利の種類は何があるの?

土地とその上に建てられた建物が複数の所有者のものである場合の権利関係について説明します。土地の持ち主も建物の持ち主も、自分の持っている土地や建物に所有権を持っています。

建物の所有者は賃貸借契約により土地の所有者から建物の底地を借りています。これを借地権と言います。建物の所有者は、建物の所有権と底地の借地権を持っていることになります。ずっと昔からその土地に建物があったり、親の土地などで、文書になった土地賃貸借契約を取り交わしていなくても、そこに土地の賃貸借契約は存在します。日本の法律は、文書でなくても事実上の状態が貸借関係であれば、それを認めます。

  

ここでちょっと難解ですが、専門的な話をします。権利には「物権」と「債権」の2種類があります。債権というのは、誰かとの約束(契約)に基づく権利です。これに対して、物権は、約束や契約に関係なく、もともと持っている権利です。物権はもともと持っている権利なので、誰に対しても主張できます。これに対して、債権は契約に基づく権利ですので、契約の関係者以外には主張できません。

つまり、所有権は物権ですので、建物の所有者は誰にも遠慮することなく、自分の判断で所有権を譲渡することができます。しかし、借地権は、土地の所有者と借りていた人との契約で生まれた権利ですので、借地契約に関係がない建物を買った人には、土地の所有者に自分が土地を借りる権利である借地権を主張できません。土地の所有者の同意が必要になります。

土地や建物に関連する権利には、抵当権やいろいろな権利がありますが、土地と建物の売買に直接関係する権利は、物権である所有権と債権である借地権が重要です。

ただし、日本の借地や借家に関する法律は、伝統的に借主に有利に作られています。法律が作られた当時は、借主の方が弱い立場にあり、借主を保護すべきであるという政策的配慮によるものです。具体的に言えば、借地権の場合、契約期間は最低30年以上でなければならず、貸主は正当な理由がなければ契約の更新を拒否することが認められません。借地権が債権であるのに、物権に近く考えられてきました。

これに対して、あまりに貸し手に不利な法律は却って貸す人を少なくするという観点から、新しい借地借家法は期間を定めてその期間が経過した後は、更新がなく更地で土地が返還される種類の借地権が新設されました。

土地や建物に関連する権利には、所有権の他、旧法による借地権、新法による借地権が関連してきます。

 

 

3.土地や建物の名義を単独名義にするメリットデメリット

土地や建物の名義には、名義人が一人だけの単独名義と名義人が複数いる共有名義があります。共有名義の場合は、それぞれの共有割合を確定しておかなければなりません。例えば、共稼ぎの夫婦が、お互い頭金を出し、ローンを組んだ場合、夫(あるいは妻)の単独名義にした方が良いのか、それぞれの費用負担の割合を計算して共有とするのか、いずれも一長一短あります。

単独名義のメリットは、名義人だけで売却などの意思決定ができるということです。もし、妻や親・兄弟でも共有者がいれば、その同意が必要になります。親と共有名義にすれば、親が死亡した際に、兄弟などが親の共有部分を相続して共有者が多数になることもあります。妻と共有名義にして離婚ということになれば、財産処分が簡単にいかなくなることもあります。離婚や相続があっても、土地や建物の処分が他者の同意なくできるのが、単独所有のメリットです。

デメリットは、実際は親や妻が資金を一部拠出しているときに、その部分も含めて自分名義にすれば、その部分が贈与とみなされ、贈与税が課せられる可能性があります。贈与税は相続税より課税率が高いので、親の出資に応じて共有名義として、相続の際に自分の名義に変更する方が、税金が安くなるケースがあります。

 

 

4.土地や建物の名義を共有名義にするメリットデメリット

共有名義にするメリットは、税制面のメリットです。居住用財産を売却した場合、売却時の譲渡所得から3,000万円を控除できる制度がありますが、これは1軒あたりではなく、1人当たりの控除額です。2名が50%ずつ持っている居住用財産を売却した場合、2人合わせて合計6,000万円の控除ができることになります。

一方のデメリットに関しては、以下があります。

・売却の意思決定には、共有者全員の合意が必要になるる。

・共有者の死亡による相続で、共有者の人数が増え、権利関係が複雑になる。

・離婚や相続による財産分割で、売却して換金せざるをえない場合がある。

・実際の資金の拠出割合を反映していない共有持分は贈与とみなされることがある。

・固定資産税は代表1名に請求が来るので、都度共有者に精算請求する必要がある。

・その他、所有者の数に比例して発生する費用(登記など)が単独所有より増加する。

 

5.土地や建物の売却の相談は司法書士に相談

 

土地(底地)と建物の所有名義が異なる場合や共有名義で名義人が複数存在するなどの場合は、客観的な立場から売主にも買主にも最善の途を選択するためにも、早い段階から司法書士を交えるのが得策と思います。まずは、司法書士にご相談ください。

司法書士は、売却後の登記の変更も含めて、最初から最後まで扱うことができます。

 

6.まとめ

 

以上、土地と建物の名義が異なる場合や複数の共有者が存在するなど権利関係が複雑な不動産の売買に関する基礎知識をご案内しました。

家族や親族は、永久に良好な関係が続くのが理想ですが、具体的な財産の処分時には私利私欲に走りやすいものです。泥沼の紛争にならないように、早めに専門家を入れて対策を検討しましょう。

投稿者: 西嶋健一郎

介護、相続、認知症など身近に起きる高齢者の問題を専門とする司法書士です。高齢者の家族が抱える悩みや不安を気軽に相談できる窓口でありたいと考えております。いつでもお気軽にご相談ください。