1.不動産の贈与で登記の変更手続きの仕方

土地や建物といった不動産の贈与を行う際には、所有権者が誰であるかを第三者に対してもわかるようにしておくために登記変更手続きを行います。

贈与を行った当事者(財産をあげた人と、もらった人の2人)の間では、口頭での約束だけでも贈与は成立します。

 

しかし、当事者以外の人に対して、不動産をもらった人がもらったことを主張するには、登記名義を、もらった人名義にしておかなければなりません。

 

甲が不動産を乙に贈与した後、甲がその不動産を丙にも贈与したときは、乙丙のうち先に登記名義を取得した方が相手にその所有権を主張することができるという仕組みです。

贈与を受けた場合の登記変更手続きのおおまかな流れを説明すると、次のようになります。

・①贈与を受ける不動産の調査を行います
・②登記手続きを行うための書類を集めます
・③登記のために必要になる書類を作成します
・④贈与契約書に署名捺印します
・⑤法務局で登記変更手続きを行います

以下、それぞれの手続き内容について説明していますので、参考にしてみてください。


2.不動産の贈与で登記の変更を自分で行う方法

贈与に関する不動産登記の手続きは、自分で行うことも決して不可能ではありません。

後で説明する贈与契約書を要件を満たす形で作成し、必要書類をそろえて法務局で手続きを行いさえすれば、書類の不備が無ければ登記手続きを完了することが可能です。

ただし、市役所や法務局での手続きは平日の日中に行う必要があるほか、法律書類の作成には労力がかかることも考慮しておく必要があります。

時間短縮をしつつ確実な形で手続きを完了するのであれば、司法書士などの専門家を利用することもメリットがあるでしょう。

3.贈与の対象となる不動産の調査を行う

贈与の対象となった不動産について、正確な地番や所有権者の情報、不動産の上に設定されている抵当権などの状況を確認します。

贈与を行った人が「この不動産は自分が所有権を持っている」と言っていたとしても、その所有権の上に設定されている権利(土地を耕作するための権利など)が設定されていて、実質的に利用できない状態になっていることも考えられるからです。

 

贈与を行った人が不動産を所有していると勘違いしている可能性もゼロではないでしょう。

不動産を所有することには、固定資産税などのコストも発生しますから、贈与を受ける不動産がどのような状況なのかについてくわしく理解しておかなくてはなりません。

具体的な手続き方法としては、法務局で登記簿謄本を取得して不動産の状況についての調査を行います。



4.登記を変更するために必要な書類を集める


登記手続きを法務局に申請するためには、まずは必要書類を集めなくてはなりません。

贈与による所有権移転登記を行う際には、贈与を行う人の登記済権利証(あるいは登記識別情報)や印鑑証明、贈与を受ける人の住民票、贈与の対象となる不動産に課せられる固定資産評価証明書が必要です。

印鑑証明や固定資産評価証明書については最新のものを準備する必要がありますので注意してください。


5.登記を変更するために必要な書類の種類

上で見た必要書類は、それぞれ以下の場所で取得することが可能です。

・贈与を行う人の登記済権利証(あるいは登記識別情報)
一般的には「権利証」と呼ばれるもので、過去に登記した際に法務局から受け取っているはずです。

ただし、平成17年以降に行った登記については権利証の代わりに「登記識別情報」という12桁の番号が通知される扱いになっていますので、こちらの番号が準備できれば問題ありません。

・贈与を行う人の印鑑証明
印鑑証明は、住基カードやマイナンバーカードがある場合にはコンビニなどでも取得できますが、ない場合には市役所で取得します。

法人が贈与者である場合には、法人の印鑑証明は法務局で取得します。


・贈与を受ける人の住民票
住民票についても住基カードやマイナンバーカードがある場合にはコンビニで、ない場合には市役所で取得します。

住民票は本人以外の人が取得する場合には委任状が必要ですので注意してください。



・贈与の対象となる不動産の固定資産評価証明書
登記手続きを行うためには登録免許税を納付しますが、登録免許税の金額を計算するためには贈与の対象となる不動産の固定資産税評価額を知る必要があります。

固定資産税評価額は毎年4月~5月にかけて自宅に届く固定資産税の納税通知にも記載されていますが、登記申請書の添付書類として固定資産税評価証明書を提出しなくてはなりません。

固定資産税評価証明書は市役所や都税事務所で取得できます。


6.登記を変更するための書類作成を行う


登記を行うためには、「どのような原因で登記変更手続きを行うことになったのか」を説明する情報として、登記原因証明情報と呼ばれる書類を作成する必要があります。

登記原因証明情報は、贈与の場合には贈与契約書を作成するのが一般的です。

贈与契約書には決まった形式は存在していませんが、最低限必要な情報として次のような情報を含める必要があります。

贈与を行う人(贈与者)の氏名と住所
贈与を受ける人(受贈者)の氏名と住所
贈与契約を締結した日時
贈与の対象となる物件の情報(登記簿謄本から転記します)
贈与者は贈与を行い、受贈者は贈与を受諾する旨の記載
登記を共同で行うことの約束
登記費用の負担を誰がするのかの約束


7.登記を変更するための書類作成を行う上での注意点


登記をするために作成する書類は、原則として原本を提出する必要があるのに注意が必要です。

贈与契約書や固定資産税評価証明書、権利証などは原本の還付を請求することができますが、委任状や印鑑証明などは原本を提出したら返還を受けることができないので注意しておきましょう。

また、郵送によって登記申請手続きを行う際には、宛名記載済みの返信用封筒と書留郵便を送ってもらうための郵券を同封が必要になります。



8.贈与契約書を作成し、署名捺印を行う


贈与契約書が作成できたら、贈与者と受贈者が署名押印します。

押印に使う印鑑は認め印でも問題はありませんが、トラブルを未然に避けるためには印鑑証明書を取得している印鑑(実印)を使うのが良いでしょう。

なお、贈与契約は契約書を作成しなくても、口頭で「この財産をあげる」と約束するだけでも成立しますが、契約書で約束をしていない場合には贈与を行う側が自由に撤回することができます。

権利関係を確定的なものにするとともに、登記変更手続きをスムーズに行うためにも、上で説明した要件を満たす贈与契約書を作成するようにしましょう。


 

9.作成した資料を法務局へ申請し登記の変更手続きを行う

必要書類がそろい、贈与契約書への署名押印が完了したら、いよいよ法務局で登記変更手続きを行います。

法務局は全国にありますが、手続きを行うのは贈与の対象となる不動産所在地を管轄している法務局です。

法務局に備え付けてある登記申請書に記入を行い、上で説明した必要書類を添付して提出しましょう。

登記変更手続きを行うためには、登録免許税という費用を負担しなくてはなりません。

登録免許税の金額は「物件の固定資産税評価額×税率」で計算します。

登録免許税の税率はどのような原因で登記を行うのかによって異なりますが、贈与に基づく所有権移転登記の場合には1000分の20です。

例えば、5000万円の不動産の贈与を行ったとすると、登記のために必要な登録免許税は5000万円×1000分の20=100万円となります。

なお、登録免許税は印紙税を購入して貼り付ける形で納税を行う必要があります。


10.不動産の贈与で登記の変更手続きを司法書士に依頼するメリットデメリット

 

司法書士に贈与登記を依頼した場合には、登録免許税などの費用に加えて、司法書士に対して支払う手数料が発生するというデメリットがあります。

司法書士に支払う費用の相場は、およそ5万円~10万円程度となりますので、決して安いコストではないでしょう。

一方で、登記手続きは不動産という経済的価値が大きい資産の権利保護を目的として行うものですから、登記手続きそのものに不備があってはなんのための登記かわからない…ということにもなりかねません。

司法書士に依頼した場合には安全かつ確実に登記手続きを完了することができるほか、面倒な書類作成などの事務負担をする必要もなくなることは、司法書士を利用するメリットといえるでしょう。

 

11. 不動産の贈与と贈与税

 

不動産をもらうときは、もらう人は単に受け取るだけでメリットしかないようにも思えます。

 

しかし、登録免許税を支払う人は任意で決めることができますが、上記のとおり登記をするには登録免許税がかかります。

 

加えて、贈与税については事前に十分検討しておいた方がいいでしょう。

 

ここでは贈与税の詳細については割愛しますが、土地の価格は安いものではなく、そして贈与税の税率は低くはありません。

贈与税を知らずに土地をもらい、後で高額の納税をしなければならなくなってしまった、、、ということにならないように注意してください。

 

 

12.まとめ

今回は、不動産の贈与を行う場合の登記手続きについて、おおまかな流れや必要書類を説明しました。

贈与は契約だけでも当事者間では有効ですが、登記をしていないと契約当事者以外の人に対しては権利主張ができなくなる可能性があります。

登記は贈与した相手が権利を確実に取得できるようにするためにとても大切なものですから、できる限り速やかに手続きを完了するようにしましょう。

 

投稿者: 石川宗徳

司法書士。汐留司法書士事務所の代表。 著作は『円満相続をかなえる本』(幻冬舎、共著)、『外国人・外資系企業の日本進出支援実務Q&A』(日本法令、共著)。 趣味はフットサル。将棋を見るのも好き。山葵が大好物。