【行政書士監修】韓国の相続制度について解説。

1.はじめに

 

在日韓国・朝鮮人の方で、ご家族の相続について不安やお悩みを抱えている方は決して少なくないと思います。現在、日本に定住している在日韓国・朝鮮人は約33万人と言われていますが、本記事では、主に在日韓国人の方の相続、韓国の相続制度についての知識をまとめていきたいと思います。

 

 1-1.在日韓国人の相続で適用される法律は韓国法

在日韓国人が日本で死亡した場合、原則として韓国の法律を適用し相続手続きを進めていくことになります。

「どの国の法律を適用するか」という問題を、専門用語で準拠法の問題と言いますが、準拠法については、法の適用に関する通則法第36条に「相続は被相続人の本国法による」と定められており、韓国籍の方は、たとえ死亡時に日本に住所があったとしても原則として韓国の法律が適用されることとなります。

 

 1-2.韓国法の適用除外

上述のように、在日韓国人の死亡時には韓国法によって相続が開始されますが、その適用を受けない例外的なケースもあります。

(1)遺言によって相続準拠法を定めた場合

韓国国際私法第49条第1項では、「相続は死亡当時の被相続人の本国法による」と規定していますが、一方で、遺言による準拠法の指定を認めており、遺言者がその意思を明示的に記載すれば、相続の準拠法を日本法に変更することが可能です。(韓国国際私法第49条第

2項)

例えば、日本で暮らす在日韓国人が、遺言で「私の相続は日本法を準拠法とします。」と記載すれば、韓国法ではこの指定は有効なものと解されますので、相続準拠法は日本法ということになります。ただし、この指定は被相続人が死亡時まで日本に住所を維持した場合に限ります。

(2)韓国と日本の二重国籍の場合

法の適用に関する通則法第38条では、「(略)ただし、その国籍のうちのいずれかが日本の国籍であるときは、日本法を当事者の本国法とする。」と定めており、被相続人が死亡時に韓国と日本の二つの国籍を有していた場合には、日本法を本国法とすることが可能です。

 

2.韓国の相続制度

 

 2-1.法定相続人と相続順位

まず、韓国籍の方が亡くなられた場合の相続人とその順位について見ていきます。

韓国民法では、配偶者・直系卑属・直系尊属・兄弟姉妹の他に4親等内の傍系血族も法定相続人になるとされています。(韓国民法1000条第1項)

【第1順位 : 被相続人の直系卑属】

子、孫、曾孫等

子が全員相続放棄した場合には、孫が直系卑属として相続人となり、孫が数人いる場合には、孫の共同相続となります。

【第2順位 : 被相続人の直系尊属】

父母、祖父母等

直系卑属がいない場合には、直系尊属が相続人となります。

【第3順位 : 被相続人の兄弟姉妹】

日本民法と異なり、兄弟姉妹は、被相続人に直系卑属・直系尊属がいないだけでなく、配偶者もいない場合にのみ相続人となります。兄弟姉妹は、自然血族や法定血族、父系・母系を問わず、また、兄弟姉妹の直系卑属にも代襲相続が認められています。

【第4順位 : 被相続人の4親等内の傍系血族】

被相続人に直系卑属・直系尊属・兄弟姉妹がいないだけでなく、配偶者もいない場合にのみ、4親等内の傍系血族が相続人となります。3親等の傍系血族としては、おじ・おば・甥・姪が該当し、4親等の傍系血族としては、いとこ、祖父母の兄弟姉妹、兄弟姉妹の孫が該当します。

なお、配偶者は常に第1順位の相続人となり、直系卑属や直系尊属がいる場合にはそれらの者と同順位で共同相続人となります。

 

 2-2.代襲相続

代襲相続とは、被相続人の子や兄弟姉妹が相続の開始以前に死亡等により相続権を失っていた場合に、その者の子がその者に代わって相続をする制度です。例えば、父親(被相続人)よりも先に息子(本来の相続人)が亡くなってしまっていたときに、息子の子(父親から見て孫)が父親を相続するような場合です。

韓国民法においても代襲相続が認められており、直系卑属や兄弟姉妹が相続開始以前に死亡したり相続欠格となった場合には、それらの者の直系卑属は代襲相続人となることができます(韓国民法1001条)が、直系尊属と4親等内の傍系血族にはこの代襲相続は認められていません。

なお、韓国民法では配偶者も代襲相続人となり、この点が日本法と大きく異なります。

相続開始以前に死亡したり相続欠格となった者の配偶者は、その者の直系卑属と同順位で共同相続人となり、同順位の直系卑属がいない場合には単独相続人となります。(韓国民法1003条第2項)

 

 2-3.法定相続分

韓国民法では、同順位の相続人が複数人いる場合には、その相続分はすべて均等とすることとしており(韓国民法1009条第1項)、配偶者についてのみ5割を加算することとしています(同条2項)。例えば、夫が死亡し妻と子で相続する場合、日本法では配偶者は総相続分の2分の1は確保されますが、韓国法の場合、子が多いほど配偶者の相続分は減少することになります。

 

 2-4.遺留分

遺留分とは、一定の範囲内の法定相続人に保障された相続分のことです。例えば、被相続人が遺言で相続財産のすべてを第三者に遺贈してしまうと、残された家族が生活に困ってしまいます。このようなとき、被相続人の配偶者や子等には遺留分という最低限の取得分が保障されており、一定の相続財産を取り戻すことができます。

日本民法とは違い、韓国民法では、被相続人の配偶者、直系卑属、直系尊属の他に、被相続人の兄弟姉妹にも遺留分を認めています。遺留分の割合は、直系卑属と配偶者が法定相続分の2分の1、直系尊属と兄弟姉妹が法定相続分の3分の1となっています。

 

3. 在日韓国人の相続における留意点

 

 3-1.遺言の作成と遺産分割協議

遺言を残しておくことは、在日韓国人の方の相続を円滑に執行するために極めて重要です。在日韓国人の方が亡くなられた場合、通常韓国の相続法が適用されますが、遺言によって日本法を指定することが可能です。少なくとも日本国内の財産については、「日本法を適用する」とすることで、日本法によって相続手続きを進めることが可能になります。

仮に遺言が存在しない場合、法定相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成する必要がありますが、法定相続人は誰なのか、実際に協議は可能なのか、実務においては困難な問題に直面することも少なくありません。在日韓国・朝鮮人の方は、行政書士や司法書士等の専門家に相談の上、公正証書遺言を作成されておくことが先々のことを考えた場合に有用であると考えます。

 

 3-2.相続放棄と方式

相続放棄は、被相続人の一切の財産(プラス財産とマイナス財産の全部)を相続せずに放棄してしまう手続き・制度です。主に、被相続人に負債があるような場合に利用されます。

韓国籍の方が相続放棄をされる場合、日本・韓国どちらの家庭裁判所で手続きを行うかが問題になりますが、結論から申し上げれば、日本国内の相続財産については日本の家庭裁判所に、韓国内の相続財産については韓国の家庭裁判所に、申告を行う必要があります。日韓両国には他方における相続放棄の効力を自国において認める制度がないため、双方の家庭裁判所で手続きを行う必要があります。

 

 3-3.相続登記

主に不動産等について、その名義を被相続人から相続人に書き換える際には登記の申請が必要です。韓国籍の方も日本国内にある不動産を相続した場合には、日本人と同じく相続の登記をする必要があります。

韓国籍の方の相続登記については、

(1)被相続人の出生から死亡までのすべての除籍謄本

(2)被相続人の基本証明書及び家族関係証明書

等が必要であるため、韓国本国から取り寄せなければなりません。これらは、駐日韓国大使館・領事館で取得できますが、韓国の本籍(「登録基準地」)と言います)をご存じない方も多く、戸籍資料の収集が困難な場合もあります。また、当然すべてハングルで記載されているため、日本語訳文の添付も必要です。

 

 3-4.その他の手続き

ハングルで記載された戸籍類の日本語への翻訳作業の他、どうしても書類が揃えることができない場合等の上申書の作成など、国籍の違いから生じる特有の面倒な手続きが発生します。

 

4.まとめ

 

韓国の相続制度は、基本的には日本と類似していますが、相違点も存在しています。理論上は簡単に思えても、戸籍の収集や翻訳等煩雑な作業も多く、実務上は多くの手間がかかります。実際の相続手続きに際しては、韓国の相続制度をひととおり知っておかれた上で、必要な点について、税理士、司法書士、行政書士等の韓国法務に詳しい専門家に早めに相談されることをおすすめします。

 

【税理士監修】家(不動産)を相続するときに発生する税金とは?節税対策はどうするの?

1.家(不動産)を相続するときに発生する税金とは?

 

家(不動産)を相続するときに発生する税金にはどのようなものがあるのだろう。

なにか上手な節税対策はないのだろうかということについてお話します。

 

 1-1.家(不動産)を相続するときには登録免許税が発生する

不動産の相続登記をするときには登録免許税が課税されます。

納税義務者は登記や登録等を受ける者、納税地は納税義務者が受ける登記等の事務をつかさどる登記官署等の所在地です。

原則現金で納付をし、その領収証書を登記等の申請書に貼り付けて提出します。税額が3万円以下の場合には印紙納付をすることができます。

 

 1-2.登録免許税の計算の仕方

登録免許税は、不動産の価額に税率を乗じて計算されます。

ここでいう不動産の価額とは固定資産評価明細書に記載されている不動産評価額(1,000円未満を切り捨てます。)をさします。

そして税率は、相続人が取得した場合と相続人以外が取得した場合で異なります。相続人が取得した場合は税率が1000分の4に対して、相続人以外の人が取得した場合は税率が1000分の20になります(100円未満切捨て)。

なお、相続人以外が取得した場合には、登録免許税の他に不動産取得税(特定遺贈は3%(住宅)、4%(非住宅))も課税されますので、相続人以外の人が取得する場合には、不動産取得税・登録免許税についてご留意ください。

また、平成30年度の税制改正により、相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合の登録免許税の免税措置が設けられましたので、ご留意ください。

 

 1-3.家(不動産)を相続するときには相続税が発生する

「相続税は、個人が被相続人から相続などによって財産を取得した場合に、その取得した財産に課される税金です。」とされています。

家(不動産)は財産ですので、相続した場合は相続税が課せられます。

 

 1-4.相続税の計算の仕方

相続税の計算について、大まかな流れを示します。詳しくは国税庁のホームページでご確認ください。

 

具体的な計算方法及び計算の順序は次のとおりです。

 (1)まず、相続税総額を計算します。

「被相続人から相続などによって財産を取得した人それぞれの課税価格の合計額」から「相続財産の価額から控除できる債務と葬式費用の合計額」を差し引き課税価格の合計額を計算します。

 

課税価格の合計額から基礎控除額を差し引いて課税される遺産の総額を計算します。

「遺産に係る基礎控除額」 は3,000 万円 +(600 万円×法定相続人の数)となっています。

 

次に課税遺産総額を民法の法定相続分に従って取得したものとして、各法定相続人の取得金額を計算します。そして、法定相続人ごとの取得金額に税率を乗じて相続税の総額の基となる税額を算出します。

 

なお、「法定相続人の数」は、相続人のうち相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数をいいますが、被相続人に養子がいる場合に法定相続人の数に含める養子の数は、実子がいるときは1人(実子がいないときは2人)までとなりますのでご注意ください。

 

 (2)各人ごとの相続税額の計算

相続税の総額を、財産を取得した人の課税価格に応じて割り振って、財産を取得した人ごとの税額を計算します。

相続税の総額 × 各人の課税価格 ÷ 課税価格の合計額 = 各相続人等の税額

 

 (3)各人の納付税額の計算

各相続人等の税額から各種の税額控除額を差し引いた残りの額が各人の納付税額になります。

ただし、養子や遺贈などで財産を取得した人が被相続人の一親等の血族(代襲相続人となった孫(直系卑属)を含みます。)及び配偶者以外の者である場合、税額控除を差し引く前の相続税額にその20%相当額を加算した後、税額控除額を差し引きます。

 

2.家(不動産)を相続する時に発生する税金の節税方法

 

 2-1.小規模宅地等の特例

家(不動産)を相続する時に発生する税金の節税方法で効果が大きいものは、亡くなった被相続人所有の家屋をそこで一緒に暮らしていた配偶者や親族等が相続する場合など、課税価格が最大80%減額される「小規模宅地等の特例」の活用です。

対象は、「被相続人等の事業の用に供されていた宅地等」及び「被相続人等の居住の用に供されていた宅地等」です。このうち一定の要件に該当する土地について、限度面積までの部分について相続税の課税価格が最大80%減額されます。

 

この特例の適用を受けるためには、相続税の申告書にこの特例を受けようとする旨を記載するとともに、小規模宅地等に係る計算の明細書や遺産分割協議書の写しなど一定の書類を添付する必要があります。

 

 2-2.配偶者の税額の軽減

「配偶者の税額の軽減」は、配偶者の実際に取得した正味の遺産額が1億6千万円または法定相続分相当額のどちらか多い金額まで相続税がかからないという制度です。

したがって、評価額が大きい不動産を配偶者に相続することは、相続税の大きな軽減となります。

ただし、一次相続で「配偶者の税額の軽減」を活用して税額を減少させても、二次相続でその不動産は相続財産に含まれてしまい、一次相続と二次相続を合計するとかえって相続税が増加してしまう可能性もあります。したがって、実際には一次相続と二次相続をトータルで検討し、一次相続で配偶者に不動産を相続させるべきか否かを検討することをお勧めします。

 

3.家(不動産)を相続するときの注意点

 

相続に関してはトラブルを耳にします。

将来のトラブル(特に相続人間の争い)を事前に避けるためには、どの不動産は誰にと事前に決めておくことは有効な方法です。

例えば、遺言書の作成です。遺言書の作成は、遺産分割協議書と異なり、被相続人の意思で不動産を相続することができるため、相続人間のトラブルを避けることができます。

また、不動産を生前に贈与することでトラブルを回避することができます。

婚姻期間が20年以上の夫婦間において住んでいる家を贈与した場合に最高2,000万円まで配偶者控除ができる「贈与税の配偶者控除」や60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、2,500万円まで特別控除額を利用できる「相続時精算課税の制度」を活用して、不動産を事前に承継してトラブルを回避する方法も考えられます。

 

4.まとめ

 

一般的に相続財産に占める不動産の割合は非常に大きくなるケースが多いため、小規模宅地等の特例が適用できるか否かで相続税額が大きく変わる可能性があります。

小規模宅地等の特例含め、不動産の特例を適用する場合、いろいろな要件を満たさないと適用できないケースが多いため、適用できるか否か、適用するためにはどのような方法があるかなどの早めの検討が必要になります。

また、同様に相続財産に占める不動産の割合が多い場合、遺産分割時に相続人間で財産のバランスを取ろうと、財産の分け方が非常に難しくなるケースがよくあります。そのため、分割の方法等を早めに検討をしないと相続人間のトラブルの種になりかねません。

このように、少しでも相続税を節税したいと思う方、相続人間のトラブルを避けたい方は相続に詳しい税理士等専門家に早めに依頼することをご検討ください。

【税理士監修】贈与における特例制度ってどんなものがあるの?節税対策を紹介します

「生前贈与を行うと節税対策になる」という言葉が一人歩きし、安易に生前贈与を行う人が増えています。もしかしたら贈与に関して大きな誤解をしているかたも多いかもしれません。

「毎年110万円以内の贈与は必ず非課税」
「いったん贈与すれば、その分は相続税から減額される」
「孫に教育資金を一括贈与すれば全てうまくいく」

などは、場合によっては逆効果になる可能性すらあります。そこで、贈与について詳しく知り、正しい知識に基づく節税対策を行いましょう。

 

1.贈与とは?

 

生きている人が、他の誰かに財産を無償で譲ることを「贈与」と呼びます。そして、贈与を受けた人、つまり受贈者はもらった額に応じた税金を払う義務が生じます。これを贈与税と呼びます。

贈与のうち贈与税を払わなくても良いのは、両親や祖父母などからの生活費や教育費などです。

 

2.暦年贈与とは

 

贈与に関して、税制上2種類の課税制度があります。「暦年課税制度」と、「相続時精算課税制度」です。このうち、多くの方が利用する暦年課税制度は、1月1日から12月31日までの1年間で受け取った財産の価額に対し、贈与税を納める義務がある制度です。

この暦年課税制度には、年間110万円の基礎控除額が設けられています。この特例制度を利用することで、節税につながる可能性があります。

 

 2-1.暦年贈与で年間110万円まで非課税

暦年贈与は、使い方を間違えると節税対策にならないどころか、逆効果になりかねません。正しい手順で行いましょう。

まず、税務署から疑われない対策として、贈与契約書を作成しましょう。贈与契約書は、①いつ、②誰から誰へ、③なにを、④いくら贈与したかの証明する契約書です。公的に認められる文書として署名や実印で押印することをおすすめします。さらに客観的に証明されるためには、公証人役場で贈与契約書に確定日付のスタンプを押してもらいましょう。これにより、贈与契約書は客観的な証明となります。

また、贈与契約書の作成後、金銭などの受渡しを行います。銀行口座の振込を利用すると通帳に記録が残り、証明になります。

受贈者が1年間に贈与される金額が110万円を超える場合は、贈与税を納税する義務が発生します。

 

 2-2.暦年贈与のメリット・デメリット

暦年贈与で最も大きいメリットは節税と減税効果です。暦年贈与は毎年110万円まで非課税枠がありますので、例えば毎年110万円を4人(子供2人、孫2人)に10年間贈与すれば、それだけで4,400万円の節税になります。
また、贈与全般的なメリットになりますが、生前に財産を自分の渡したい人に渡すことができるので、亡くなった後の相続人間のトラブルを防止することができます。
いっぽう、デメリットとして相続発生前3年以内の贈与は贈与とはならず、相続財産の対象となります。例えば、先ほどの事例で毎年110万円を同様の4人に10年間贈与したが、10回目の贈与の直後に贈与者が亡くなったとします。そうした場合、直近3年間の贈与は相続財産に加算されることになります。ただし加算の対象になるのは、被相続人から相続財産を取得した人になりますので、孫が相続財産をもらわなければ、孫の直近3年分の贈与は相続財産となりません。

以下、贈与税の特例がありますのでいくつかご紹介します。この特例をうまく活用することで節税につながる場合があります。

 

3.教育資金贈与の特例を利用して節税する

 

2019年3月31日までの期限付き特例ですが、30歳未満の子どもまたは孫に対して贈与される教育資金については、1,500万円まで非課税です。

ここで定める教育資金とは、学校などに支払う入学金、授業料、給食費、検定料、学用品購入費、施設利用料などです。

 

 3-1.教育資金の贈与をするメリット・デメリット

教育資金の贈与は、非課税限度額が大きく、一括で贈与できてしかも非課税というメリットがあります。また、財産の持ち戻しがないため、資産が多い高齢者が書類作成などの事務負担を減らしながら、健康な内に生前贈与するのに効果的です。

しかし、いったん教育資金非課税申告書が取扱金融機関の営業所に受理されると、贈与した教育資金は返金されません。そのため、その後の老後資金や医療費など、多額なお金が必要になったときに困るデメリットがあります。

前述の暦年贈与を利用するだけで十分であれば、そちらを利用した方が良いでしょう。また、一括ではなくその都度贈与する場合は通常非課税なので、一括贈与する必要があるケースでない限りは、この特例は無理してまで利用すべきではありません。

また、受贈者が30歳に達すると、非課税期間が終了し、贈与された残高分の贈与税を支払わなければならないデメリットがあります。30歳までに教育資金として使い切れば問題ないのですが、使途が教育資金に限られているため、使い切れないケースが考えられます。

 

4.贈与税の配偶者控除

 

婚姻期間が20年以上の配偶者からの居住用不動産の贈与で一定の要件を満たした場合には、110万円の基礎控除とは別に、課税価格から2,000万円(居住用不動産の価額が限度)が控除されます。

 

5.相続時精算課税制度とは

 

相続時精算課税制度を利用すると、60歳以上の親または祖父母が20歳以上の子どもや孫に2,500万円まで非課税で贈与できます。ただし、2,500万円を超えた額に対し、一律20%の贈与税がかかります。

 

 5-1.相続時精算課税制度のメリット・デメリット

相続時精算課税制度は2500万円までの生前贈与は非課税というメリットがありますが、相続時に精算されてしまうデメリットがあります。つまり、相続時に税金の支払いを先延ばししただけという見方もできます。

そのため、相続時の税金を減らすためには、相続時精算課税制度でなく、暦年課税制度にした方が良いケースもあります。また、一度相続時精算課税制度を選択してしまうと、再び暦年課税制度に戻すことができませんので最初に相続時精算課税を選択するときは注意しましょう。

また、相続時精算課税制度を利用した後、贈与された財産の価値が上昇した場合は結果的に節税につながります。土地や株式、債権などの価格が上がると見越して贈与することもできますが、価格が下がる場合もありますので、このような財産を贈与する場合は慎重に行いましょう。

 

6.住宅取得資金贈与の特例を利用して節税する

 

住宅取得資金贈与の特例とは、2021年12月31日までの期間限定ですが、両親や祖父母から住宅取得資金を贈与された場合、最大3,000万円までの贈与が非課税になる制度です。マイホーム購入のために親などからお金を贈与してほしくても、贈与税がかかってしまうため諦めていた人にとってうれしい制度です。

この特例で贈与を受けるためには、その年の1月1日時点で20歳以上であることの他、引き渡し条件や登記簿面積が50平方メートル~240平方メートルであることなどの条件をクリアする必要があります。

 

 6-1.住宅取得資金贈与の特例のメリット・デメリット

住宅取得資金贈与の特例は、2016年1月1日~2020年3月31日の期間中は省エネ等住宅で1,200万円、それ以外で700万円まで非課税です。そして、この特例は、上記の相続時精算課税制度と併用できるメリットがあります。仮に住宅取得資金贈与の特例による1,200万円の非課税と、相続時精算課税制度による2,500万円の非課税を併用した場合、最大で3,700万円の非課税となります。

この非課税枠の特例は、徐々に減額されることが決まっています。ただし、消費税が10%になるとそれだけ多くの消費税を支払うことになり、この特例のメリットも少なくなってしまいます。そこで、2019年4月以降、住宅を消費税10%で取得した場合に省エネ等住宅で3,000万円、それ以外で2,500万円まで非課税となる予定です。

 

7.まとめ

 

贈与は節税効果があることは前述のとおりのため、贈与をうまく活用して相続税を節税する生前贈与が脚光を浴びています。

現在、贈与額の全国平均は年間300万円位といわれています。年間110万円以下であれば贈与税がかからないのに贈与額を300万円にしているということは、贈与税をある程度支払ってでも相続財産を減らした方がトータルで節税になると対策をしている方が増加している結果と考えられます(個人的な見解ですが)。

当事務所は、贈与する際には相続税も考慮して、トータルで一番税金が安くなる最適な贈与額をお客様にご提案しています。

また、贈与の特例についてもさまざまな要件があります。当事務所は贈与の特例を適用する際に要件に合致しているか、要件に合致するにはどのような方法があるかなどのアドバイスも行っていますので、贈与で節税をお考えの方は早めのご相談をお勧めします。

【司法書士監修】相続登記をするための必要書類は?遺言書が与える影響とは?

不動産(土地・建物)を所有されている方が亡くなった場合、その不動産の名義を亡くなった方(以下「被相続人」という。)から不動産を相続する方(以下「相続人」という。)に変更する相続登記の手続きを自分の力で行いたいと思われる方も多いようですが、手続きの方法により必要書類が異なることを知らないと、多くの時間と労力を使うことになりかねません。

特に、遺言書がある場合とない場合とでは、相続登記に必要な書類が異なります。それぞれの場合に応じた必要書類をまとめましたので、ご参考にしてください。

 

1.遺言書がない場合に相続登記に必要な書類

 

遺言書がない場合若しくは遺言書があってもその遺言書が無効な場合は、遺産分割協議による相続(相続人全員で話し合いをする場合)か法定された割合による相続(民法に定められた相続割合で相続する場合)の二通りで手続きを進めることが多いです。相続人が1名のみの場合は、その相続人の名義に変更します。相続人が2名以上いる場合は、相続人全員の共有名義で登記することも可能ですが、相続人のうちの誰かの名義に変更することが多いです。その理由は、共有名義の場合、売却等の処分をするときに共有者全員の関与が必要になること、相続を繰り返すと共有者が更に増加することなどが挙げられます。

それぞれの場合ごとの必要書類は以下のとおりです。

 

1-1.遺産分割協議による相続の場合

相続登記を申請する場合の必要な書類は、登記申請書と添付書類となります。添付書類は、「登記原因証明情報」「住所証明情報」「その他の書類」などに分けられます。添付書類の具体例は、以下のとおりです。

登記原因証明情報の具体例は、

・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍・改製原戸籍・原戸籍)

※.相続人の順位が下位(第2順位・第3順位)になるほど、必要となる戸籍が増えます。

・被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)

・相続人全員の戸籍謄本(被相続人が死亡した日以後の証明日のもの)

・相続関係説明図

・遺産分割協議書

・相続人全員の印鑑証明書

住所証明情報の具体例は、

・不動産取得者の住民票

その他の書類の具体例は、

・対象不動産の固定資産評価証明書

・相続放棄した相続人がいる場合は、相続放棄申述受理証明書

・司法書士に相続登記を依頼する場合は、代理権限証明情報となる委任状

遺産分割協議中にさらに相続が発生した場合、相続人に未成年者がいる場合等、場合によっては、必要となる書類が増えることがあります。また、打ち合わせ時に不動産の登記簿謄本や固定資産税についての納税通知書があるとスムーズに進みます。

 

1-2.法定された割合による相続の場合

遺言書がなく、かつ、遺産分割協議も行わずに民法で法定された割合による相続分で相続登記を申請する場合、遺産分割協議による相続登記の場合と比べて、必要書類が少なくなります。

登記原因証明情報の具体例は、

・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍・改製原戸籍・原戸籍)

※.相続人の順位が下位(第2順位・第3順位)になるほど、必要となる戸籍が増えます。

・被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)

・相続人全員の戸籍謄本(被相続人が死亡した日以後の証明日のもの)

・相続関係説明図

住所証明情報の具体例は、

・不動産取得者の住民票

その他の書類の具体例は、

・対象不動産の固定資産評価証明書

・相続放棄した相続人がいる場合は、相続放棄申述受理証明書

・司法書士に相続登記を依頼する場合は、代理権限証明情報となる委任状

 

2.遺言書がある場合に相続登記に必要な書類

 

遺言書(公正証書遺言を除く。)は、家庭裁判所での検認手続を受ける必要があります。また、封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人等の立会いの上開封しなければならないことになっています。検認とは、相続人に対して、遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。

遺言書で指定された法定相続人や、受遺者が不動産を取得することになります。

 

2-1.法定相続人が取得する場合

遺言書で法定相続人に不動産を相続させる場合は、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍が必要ないなど、必要書類が簡素化されます。

登記原因証明情報の具体例は、

・遺言書(公正証書遺言以外の遺言書の場合は、家庭裁判所の検認を経たもの)

・被相続人の戸籍謄本

・被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)

・相続人の戸籍謄本(被相続人が死亡した日以後の証明日のもの)

住所証明情報の具体例は、

・不動産取得者の住民票

その他の書類の具体例は、

・対象不動産の固定資産評価証明書

・司法書士に相続登記を依頼する場合は、代理権限証明情報となる委任状

 

2-2.受遺者が取得する場合

不動産を取得する方が相続人以外の第三者の場合の遺贈の登記は、登記権利者(受遺者と、登記義務者(遺言執行者または相続人全員)の共同申請によります。相続登記は、相続人による単独申請が可能なのに対し、遺贈の登記では遺言執行者(または遺言者の相続人全員)が登記義務者として手続きに関与しなければなりません。そのため、遺贈の登記は相続登記よりも難易度が増すことが多く、また、必要書類も大きく異なることになります。遺言執行者とは、遺言書の内容を具体的に実現する人のことをいいます。未成年者や破産人以外であれば誰でもなることができます。弁護士や信託銀行などが遺言執行者になることがよくあります。

登記原因証明情報の具体例は、

・遺言書(公正証書遺言以外の遺言書の場合は、家庭裁判所の検認を経たもの)

・被相続人の戸籍謄本(遺言執行者が定められていない場合は、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本と相続人全員の戸籍謄本(被相続人が死亡した日以後の証明日のもの)※.相続人の順位が下位(第2順位・第3順位)になるほど、必要となる戸籍が増えます。)

・被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)

住所証明情報の具体例は、

・不動産取得者の住民票

その他の書類の具体例は、

・権利証(または登記識別情報)

・遺言執行者の印鑑証明書(遺言執行者が定められていない場合は、相続人全員の印鑑証明書)

・対象不動産の固定資産評価証明書

・司法書士に相続登記を依頼する場合は、代理権限証明情報となる委任状

 

3.相続登記に関する相談は司法書士まで

 

相続に関する専門家はいろいろありますが、不動産の所有者が亡くなった時に必要となる相続登記に関する手続きに関しては、司法書士に相談することをお勧めします。

また、その他の専門家が必要になるケースとしては、相続税の申告を税理士に依頼する場合、相続トラブルの紛争解決を弁護士に依頼するような場合が挙げられますので、ニーズに応じて使い分けると良いでしょう。

 

4.まとめ

 

以上のように、相続登記に関する手続きは、遺言書がある場合とない場合とで異なります。また、必要書類を全てそろえるのも一苦労です。相続登記は一生のうちに何度も経験することはあまりないので、失敗しないためにも専門家に相談する方が時間や労力の節約になります。

また、相続登記は、いつまでに申請しなければならないという法律上の定められた期限はありません。その関係で、相続登記を申請せずに放置しているケースがよく見受けられます。そして、相続登記を放置することによる問題点もあります。問題点の具体例としましては、①何世代にもわたり相続登記をしていない場合(数次相続の場合)は、相続人が増え、多くの書類が必要となること・②相続した不動産を売却したい場合や担保提供したい場合は、その前提として相続登記をしなければならないこと・③相続人の債権者に不動産の相続持分を差し押さえられてしまう可能性があることなどです。これらの問題点は相続トラブルになりうる可能性があるため、相続登記は速やかに行うことをお勧めします。

【税理士監修】土地の贈与に関する税金はどれくらい?贈与税の計算方法と、節税のための具体的な方法とは?

1.土地の贈与にかかる税金とは?

 

 両親などから土地の贈与を受ける予定のある方は、税金がどれくらいかかるのか? かかるとすれば節税の方法はないだろうか? とついあれこれと気になるのではないでしょうか。

 はたして実際にどんな税金がかかってくるでしょうか。

 まず土地の価格が110万円を超える場合は贈与税がかかってきます。詳しい計算は後述しますが、基礎控除後の価格が3,000万円を超えると約55%の税金がかかります。

 また土地の名義変更を行うことで、登録免許税と不動産取得税がかかります。

 

2.土地の贈与にかかる税金の計算方法とは?

 

 それでは贈与税の計算方法をみていきましょう。

 贈与税の課税対象になる価格は、

 贈与財産価格-110万円(基礎控除)=基礎控除後の課税価格

 で決まります。

 贈与財産価格が5,000万円だとすると

 5,000万円-110万円=4,890万円の計算結果から、

 基礎控除後の課税価格は、4,890万円になります。

 次に税額を算出しましょう。

 税率は、国税庁の速算表で以下のとおり示されています。

 基礎控除後の課税価格 税率 控除額(一般用)
 200万円以下 10% ―
 300万円以下 15% 10万円
 400万円以下 20% 25万円
 600万円以下 30% 65万円
 1,000万円以下 40% 125万円
 1,500万円以下 45% 175万円
 3,000万円以下 50% 250万円
 3,000万円超 55% 400万円

 ­税額は〈課税価格×税率-控除額〉で算出します。

 基礎控除後の課税価格が4,890万円の場合だと、

 表の最下段が適用されますから、

 4,890万円×55%-400万円=22,895,000円の計算結果から、

 税額は2,289万5千円になります。

この速算表は一般的なものですが、直系尊属(祖父母、父母)から20歳以上の者への贈与は「特別贈与財産用」の表が適用されます。控除額が一般用に比べて高めに設定されています。たとえば上記の計算で400万円を適用した控除額が、640万円になります。

 基礎控除後の課税価格 税率 控除額(特別贈与財産用)
 200万円以下 10% -
 400万円以下 15% 10万円
 600万円以下 20% 30万円
 1000万円以下 30% 90万円
 1,500万円以下 40% 190万円
 3,000万円以下 45% 265万円
 4,500万円以下 50% 415万円
 4,500万円超 55% 640万円

 実際に計算すると

 4,890万円×55%-640万円=20,495,000円の計算結果から、

 税額は2,049万5千円になります。

 つまり贈与税は、一般の贈与よりも直系尊属から贈与された方が、税額は安くなるということです。

 次に土地の所有者の名義変更に伴う免許登録税は、贈与を受けた土地の不動産価格の2%がかかってきます。

 不動産価額が5,000万円だとすると、

 5,000万円×2%=100万円

 で、100万円の免許登録税がかかります。

 また不動産取得税は、土地の不動産価格の1.5%がかかってきます(一定の場合)。

 5,000万円×1.5%=75万円

 で、75万円の不動産取得税がかかります。

 

3.贈与税が軽減される各種の特例とは?

 

 贈与税には高い税率が適用されますが、これを軽減する方法はないのでしょうか。

 いくつか国の定めた特例制度がありますのでご紹介します。

 

3-1.教育資金の一括贈与の特例

  直系尊属(父母、祖父母など)が、30歳未満の方の教育資金に充てるために金融機関等に資金を預けた場合、1,500万円まで贈与税が非課税になる制度です。

気をつけないといけない点は、使用目的が厳格に教育資金に限られており、それ以外の目的で使用した場合は、贈与があったものと見なされて課税されてしまうことです。

また30歳を超えて教育資金にかかる契約が終了した時点で、もし残額があれば、これは贈与金と見なされて課税されます。このため贈与額の設定は慎重に検討する必要があります。

この制度は平成31年3月31日までに金融機関等に預けた場合に適用されます。

 

3-2.結婚・子育て資金の一括贈与の特例

 20歳以上50歳未満の者(受贈者)が、直系尊属(父母、祖父母など)から結婚、子育て資金に充てるために贈与された資金を金融機関等に預けた場合、1,000万円までが非課税になる制度です。

 受贈者が50歳に達した時点で、もし残額があれば、その金額は贈与税の対象になります。

 この制度は平成31年3月31日までに金融機関等に預けた場合に適用されます。

 

3-3.配偶者控除なら2,000万円まで非課税で贈与できる

 婚姻期間が20年を超えた夫婦であれば、居住用不動産又は居住用不動産を取得するために資金を贈与された場合、基礎控除年間110万円のほかに最高2,000万円まで控除されます。

ただし自分が住むための居住用不動産であり、贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与を受けた者が実際に住み、その後も引き続き居住を続ける見込みであることが条件です。

 

4.贈与税を抑える方法は?

 

 贈与税の税率はかなり高いものであることが分かりましたが、贈与税を少しでも抑えられる方法はないのでしょうか。

 国が定めた特例制度がありますのでご紹介しましょう。

 

4-1.贈与税は相続時精算課税制度で節税

 相続時精算課税制度は、贈与を受けた際に本来かかるはずの贈与税を先送りにして、贈与者が亡くなった時点で相続税として納める制度です。贈与を受けた額が2,500万円以下であればこの制度が適用できます。

贈与した者が亡くなった時点で、相続財産と贈与財産の合算額が相続税の対象になります。

 

4-2.相続時精算課税制度のメリット・デメリット

 相続時精算制度のメリットは、緊急に土地や資金を要する際に2,500万円以内であれば、贈与税が非課税になるという点です。ただし、将来確実に相続税の対象になりますから、相続財産と贈与金の合算額が相続税の非課税枠を超える場合は、しっかりした資金計画をたてておく必要があります。逆に、合算額が非課税枠の範囲で収まるのであれば、非常に有効な制度といえるでしょう。

 デメリットは、いったんこの制度を適用すると、贈与者が亡くなるまで自動継続され、基礎控除年間110万円の贈与が適用されなくなる点です。 

 基礎控除年間110万円は、相続税の対象もなりませんから、どちらを選択するか慎重に判断をしなくてはいけません。

 

4-3.住宅取得等資金贈与の特例により節税できる範囲

 住宅取得等資金贈与の特例は、父母、祖父母からの贈与により自己居住用の住宅資金を取得した場合、一定の金額までは非課税になる制度です。

 ただし、この制度は住宅用家屋の「購入、新築、増改築」のための資金の贈与に適用されるものですから、今回のケースのように土地を譲り受けるだけでは適用されません。この土地に住宅を建て、その建設資金を親などから贈与された際に適用されます。

 非課税となる金額は、契約年度と家の仕様によって異なりますので以下の表に示します。

 また、新築等の対価に含まれる消費税等の税率が10%である場合は非課税金額がさらに高くなります。

 契約の締結日 省エネ住宅等 左以外の住宅
 平成32年 3月31日まで 1,200万円 700万円
 平成33年 3月31日まで 1,000万円 500万円
 平成33年12月31日まで 800万円 300万円

 

4-4.住宅取得等資金贈与の特例のメリット・デメリット

 住宅取得等資金贈与の特例のメリットは、年間110万円の非課税とは別枠で非課税となりますから、住宅資金を親から援助してもらう予定の方には非常に有効な節税方法といえます。これは、先に紹介した相続時精算課税制度とも別枠で適用されます。

 デメリットは、住宅ローン控除と併用できない点です。

  3,000,円万円のローンを組み、そのうち1,000万円を住宅取得等資金贈与の特例にした場合、残りの2,000万円が住宅ローン控除の対象になります。

 気をつけなくてはいけないのは、非課税だからといっても必ず申告が必要だということです。贈与税の申告期間は翌年の2月1日から3月15日までです。この期限を1日でも過ぎてしまったら、たちまち贈与税が適用されてしまいます。遡って特例の適用はされませんから、十分な注意が必要です。

 

5.まとめ

 

 土地の贈与にかかる税金について、贈与税を中心にご説明をしましたが、いかがだったでしょうか。

 土地の価格が高額になると税率も高くなるので、生前贈与を受ける場合は、いろいろと節税対策をしないといけないようですね。

 教育、結婚、子育て、住宅の新築に際して、資金を父母や祖父母から贈与してもらった場合は、非課税になる制度があります。該当される方は、ぜひもう一度記事に目を通してみてください。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

【税理士監修】土地(不動産)は、生前贈与すべき?相続の方がお得??

今持っている土地はいつの日か子どもに相続させることになる。しかし生前贈与したほうが結果的に相続するときよりも税金が節税できるかもしれないと聞いたという方がいらっしゃるかもしれません。

今回は、土地を生前に相続する方法やメリットデメリットなどについてのお話です。

 

1.土地(不動産)は生前贈与か相続どちらがお得なの?

 

親から子に土地(不動産)を譲り渡す方法には、死亡する前に贈与の形で譲る生前贈与と、死後に譲る相続とがあります。

相続税と贈与税を比べた場合、税率は相続税の方が低く設定されていますので、一般的には相続のほうが税金としては有利と言われていますが、計画的に財産を譲り渡したり各種

特例を活用することで、贈与を積極的に行ったほうが相続税と贈与税の合計額では節税効果を期待できるケースもあります。

 

2.土地(不動産)を生前贈与する時と相続する時の違い

 

生前贈与は、贈与者が生存中に行う贈与という法律行為です。贈与税の対象となる人は、贈与される財産を受け取った人です。

贈与を行うと、贈与を受けた者に贈与税が課税される場合があります。贈与税の手続時期は、贈与の翌年の2月1日から3月15日の間です。

 

一方、相続は、被相続人の死後に行われるもので、対象となる者、すなわち相続人は、遺言によって相続人とされた者や、法律上相続人となる者(法定相続人)です。相続が行われると、相続人に相続税が課税される場合があります。相続税の手続時期は、被相続人の死後10か月以内です。

 

贈与税と相続税は相続税法という同じ法律で規定が設けられています。

 

3.土地(不動産)を死後相続する時の流れ

 

土地(不動産)を相続するときには、遺言書の確認と相続人の確定が必要です。

遺言書がなく、相続人が複数いる場合には、不動産をどのように分割するのか協議を行わなければいけません。不動産は預金のように単純に分割することができないため、相続人間でどのような方法で分割するかが問題となります。

 

不動産を分割する方法としては、現物分割、代償分割、共有、換価分割があります。相続人同士の話し合いによって不動産の分割を含めた遺産分割の方法が決まったら、遺産分割協議書を作成します。

現物分割、代償分割、換価分割の場合は、できるだけ速やかに相続人への相続登記を行ってください。共有の場合は自ずと相続人が所有者となるので必ずしも相続登記を行う必要はなく、売却する場合などに相続者全員の同意と印鑑証明書などの書類が必要となります。ただし将来のトラブルを避けるため、共有者全員の相続登記を行うことをおすすめします。

相続登記を行うには、法務局に対し、登記申請書と遺言書、遺産分割協議書などの必要書類を提出し、登録免許税を納付します。登録免許税は不動産の評価額の0.4%です。

 

4.土地(不動産)を死後相続するメリット・デメリット

 

相続税では3,000万円+相続人数×600万円の基礎控除が適用されます。

不動産の価額が高額でなく相続財産が基礎控除額以内の場合には、相続税がかかりませんので、手間がかかる生前贈与を選択するメリットは少なく相続手続きを行うほうがメリットが多いといえます。

一方、預金や株式などを含めた相続財産が基礎控除額を超える場合には、生前贈与に関する各種特例を活用することにより節税が可能になりますので、生前贈与を活用することも検討しましょう。

 

5.生前贈与とは

 

親から子へ、祖父母から孫へなど、個人が個人から財産をもらうことを生前贈与といいます。現金や不動産を譲り受けた場合はもちろん、自分が保険料を負担していない生命保険を受け取った場合や、債務を免除してもらったときも同様です。

 

6.土地(不動産)を生前贈与する方法

 

  6-1.土地(不動産)を生前贈与するときに発生する費用

贈与を受けた際には、贈与額が基礎控除額を超えた場合「贈与税」が課税されます。

贈与税率は、直系尊属(祖父母や父母など)から、20歳以上の者(子・孫など)に贈与されたときの「特別贈与財産用」の税率と、それ以外の「一般贈与財産用」の税率があり、特別贈与財産用の税率の方が低く設定されいます。

親族間の贈与であっても、兄弟間の贈与や、夫婦間の贈与、親から子の贈与で子が未成年の場合などは一般贈与財産用の税率が適用されますのでご注意ください。

 

不動産取得税という都道府県税も課せられます。なお。不動産取得税は、相続により不動産を取得するときには非課税です。
不動産取得税の支払い義務があるのは、不動産を譲り受ける人です。不動産取得税は不動産の評価額の3%(平成33年3月31日まで)ですので、不動産の評価額が1000万円なら30万円となります。

 

また、所有権の名義を変更する移転登記の費用も必要となります。

さらに、登録免許税がかかります。生前贈与で不動産の名義変更をするときの登録免許税は不動産の評価額の2%で、相続のときは0.4%です。登録免許税は不動産を譲り渡す人、譲り受ける人のどちらが支払っても構いません。

 

  6-2.土地(不動産)を生前贈与するときに必要な書類

生前贈与は贈与契約です。贈与契約は口約束でも成立しますが、所有権移転登記を行うためには贈与契約書の作成が必要です。

税務調査が入ったときに贈与があった時期や金額を証明するためにも、贈与契約書を作成することをお勧めします。

 

7.土地(不動産)を生前贈与するときは所有権移転登記を行う

 

生前贈与の場合は法務局で所有権移転登記を行わなければいけませんので、相続のときと同様に、登記申請のための書類が必要となります。

必要な書類は、登記申請書、贈与を称する書面(贈与契約書の原本)、不動産の登記済証または登記識別情報、贈与をした人の印鑑証明書、贈与を受けた人の住民票の写しなどです。

 

8.土地(不動産)を生前贈与するメリット・デメリット

 

贈与税よりも相続税の方が税率が低いので、一般的には相続のほう有利ですが、贈与税には「相続時精算課税制度」「居住用不動産贈与に関する配偶者控除」など各種特例があります。相続税の基礎控除額を超える見込みの方は、これらの特例を活用すれば相続税・贈与税全体で節税効果が見込めますので、生前贈与のメリットを生むことが可能になります。

 

節税効果以外、生前贈与の場合、自分が財産を譲り渡したい相手に財産が贈与されたことを見とどけられることもメリットの1つです。

特定の不動産を特定の相続人に相続させること自体は遺言書さえ作成すれば死後相続でも可能ですが、この場合、手続がなされるのはあくまで自分が死亡した後です。生前贈与であれば、自分の意思どおりに財産が譲り渡されたことを自分の目で確認することができます。

 

なお、生前贈与は一度成立してしまうと後で取り消すことはできません。したがって、贈与を行った後になって、自分の財産をほかの人に譲りたいと思っても取り消すことはできず、贈与を行ったあとで相続税法が改正されて死後相続の方が得になったとしても相続に切り替えることはできませんので注意が必要です。

 

9.土地(不動産)を生前贈与するときの節税対策

 

土地(不動産)を生前贈与するときの節税対策は次のようなものがあります。

 

「相続時精算課税制度」は、60歳以上の祖父母や父母から20歳以上の直系卑属(子や孫)へ贈与されるときに累計2500万円までであれば贈与税が非課税となる制度です。不動産も対象です。

 

夫婦間での生前贈与の場合は「夫婦間贈与の特例」を活用できます。

これは、婚姻期間が20年を越える夫婦の、夫から妻へ、または妻から夫へ居住用の不動産を贈与する場合、2000万円までが非課税となる制度です。

 

なお、暦年贈与は、1年あたり110万円までであれば贈与税が発生しません。したがって、贈与する財産を数年にわたって少額ずつ贈与していくことになりますが、不動産の場合は登記が必要となりますので、不動産を贈与する場合には不向きな制度です。

 

10.土地(不動産)を生前贈与するときの注意点

 

節税対策として土地(不動産)を生前贈与する場合、3年内加算という制度に注意が必要です。 これは、亡くなってしまった日から起算して過去3年間に生前贈与で譲り渡した財産は、死亡時の財産に加算して相続税を計算しなければいけないという制度です。この制度の対象とされてしまうと、せっかく生前贈与を行っても死後に相続した場合と同じ扱いになってしまいますので、注意が必要です。

なお、孫に贈与する場合は原則として3年内加算制度の対象にはなりません。子に相続した財産もいずれは孫に譲り渡されることになりますので、長期的にみれば、孫に生前贈与した方が有利な場合があります。

 

11.まとめ

 

今回お話してきたとおり、不動産を贈与したいとき節税効果を得るためにはいくつかの注意点があります。

譲り渡す財産の内容や財産を譲り渡す者と譲り受ける側の関係などにより、さまざまな制度や特例を利用することができます。どの方法がもっとも節税効果があるかは場合によって異なりますので、税理士などの専門家と相談することをお勧めします。

【司法書士監修】資産整理のために不動産を売却するときの注意点と最善の売却のタイミングを紹介

資産整理にはいろいろな場面がありますが、多くの不動産を所有している人が相続対策として売却することや、自己破産などの債務整理をするうえで仕方なく不動産を手放すことも資産整理に含まれます。

不動産は、売却するタイミングによって課税される税金に大きな差がでたり、売却時に注意するべき法的問題点などがあります。ご自身の希望に合った資産整理を行うためのポイントをご紹介します。

 

1.不動産の資産整理をする時の最善の売却のタイミングはいつなのか?

 

不動産の購入希望者は、1月から3月にかけての時期と9月に多くなるといわれています。

まず、1月から3月の時期に購入希望者が増える理由としては、入学や進級、入社などといった4月の年度替わりに合わせて、その少し前に転居を完了させたいと考える方が多いためです。この時期は年間を通じて最も不動産市場が活発になる時期です。

次に9月前後に購入希望者が多い理由としては、この時期も人事異動による転勤が多く行われる時期であり、転居に伴う不動産の購入需要が高まるためです。 

 

2.相続税対策として不動産を資産整理して売却する場合

 

相続により土地や建物を取得した場合、自分で住んだり、賃貸などで活用をする予定もないときには、維持費や固定資産税などがかかってしまうことを考えると、売却することも選択肢の一つになってきます。

ここで気をつけなければならないのが、不動産を売却するときには税金がかかるということです。節税対策をするかどうかによって、支払う税金の額が大きく変わってしまうこともあります。そこで、相続した不動産の売却にはどんな税金がかかるのか、節税できる方法などをまとめました。

 

2-1.譲渡所得課税

不動産を売却して利益(売却益)が出ると、「譲渡所得課税」の課税対象になり、所得税と住民税がかかります。譲渡所得にかかる税額は「売却(譲渡)価格」から「取得費」と「譲渡費用」を差し引いた売却益(譲渡所得)に税率をかけたものです。

相続した不動産の売却価格が取得費+譲渡費用よりも低い金額だった場合は譲渡所得が発生しないので、譲渡所得課税はかかりません。購入時よりも高い価格で売れて、取得費と譲渡費用を差し引いても利益がある場合は、所得税と住民税がかかることになります。

 

引用:国税庁HP(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_2.htm

 

2-2.相続税の取得費加算の特例

相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができる特例を「相続税の取得費加算の特例」と言います。

この制度を利用すると、取得費を多く設定することができますので、課税譲渡所得金額が低くなり譲渡所得税を節税することができます。

 

「相続税の取得費加算の特例」を使うためには、以下の要件を満たす必要があります。

①相続、遺贈などで不動産を取得していること

②取得した人に相続税が課税されていること

③ 不動産が、相続が発生したときから3年10か月以内に譲渡されていること 

 

参考:国税庁HP(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm)

 

3.投資目的の不動産を売却する場合 

 

譲渡所得課税は、自分がその不動産の所有者になってから売却した年の1月1日までの保有期間が5年超なのか5年以下なのかで税率が違ってきます。

この保有期間が5年を超えるものを「長期譲渡所得」といい、税率は所得税15%、住民税5%となります。保有期間5年以下で売却したものを「短期譲渡所得」といい、税率は、所得税30%、住民税9%となります。

支払う税金は、 課税譲渡所得金額×(所得税+住民税)となるため、長期譲渡取得のほうが支払う税金が安くなります。

 

ここで、注意しなければならないのが、相続した土地・建物を売却する場合、相続した人ではなく、被相続人がその不動産を取得した日からを保有期間となります。例えば、平成30年中に譲渡した場合は、その土地や建物の取得が平成24年12月31日以前であれば「長期譲渡所得」に、平成25年1月1日以後であれば「短期譲渡所得」になります。

 

引用:国税庁HP(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_2.htm

 

4.自己破産などの債務整理のために不動産を売却する時の任意売却と競売の違い

 

任意競売とは、借り入れをしている金融機関など債権者の同意を得て、一般市場で不動産を処分することをいいます。

競売とは、債務者が住宅ローンや借入金の返済が滞ってしまった際に、債権者が裁判所に申し立てることによって、担保として提供を受けていた不動産や債務者の財産を差し押さえ、裁判所の権限によって強制的に売却をし、その売却代金から支払いを受け、債権の回収に充てる手続きであり、その手続きは民事執行法により定められています。

競売手続きの流れとしては、債権者が裁判所へ申立をして、対象物件の評価が決定した後、入札に参加した買受申出人の中から最高額で落札した人へ不動産の権利を移転させます。 

任意競売は通常の売買契約と同様、売主と買主の契約によって成立するのに対して、競売は、裁判所主導で強制的に進みます。

 

5.不動産の資産整理を依頼する時は誰に相談するべき?

 

①税理士

先に述べたように、不動産を売却した際、売却益が出た場合には、譲渡取得課税がなされます。自分で税金の申告をすることもできますが、手続きが複雑であり、また書類の量も膨大になります。また場合によっては特例などを利用することによて節税を行うこともあります。

そのため、適切な申告をするためには、専門手知識が必要となるため、実際には税理士に相談する方がよいでしょう。

 

②司法書士

不動産を売却する場合は、不動産の名義変更が必須です。不動産の名義変更は法務局に自分で出向き、手続きをすることも可能です。しかし、必要書類の作成や提出などには、かなりの時間と手間、そして知識を要します。

そのため、日ごろから、不動産に関する事案を多く扱い、トラブル対処法や不動産に対する法律知識を十分に有している専門家である司法書士に任せる方が無難です。

登記費用などを含めてかかる費用は、一般的に弁護士に依頼するよりも高くありません。

 

③弁護士

法律職の最高位であり、裁判所で訴訟の当事者の代理人として法廷に出廷できます。税理士や司法書士に比べて費用は高くなりますが、不動産の資産整理に際してトラブルが発生し、訴訟に発展した場合は税理士や司法書士では対応できないことが多々あります。その場合には、やはり法律職の最高位である弁護士に依頼するのがよいでしょう。また、当初からトラブルが予想される場合なども、「トラブルの予防」として弁護士に相談することをおすすめします。

 

このように、資産整理を依頼するときには、その時々で相談するべき相手は変わってきます。まずは税理士と司法書士に相談し、訴訟等のトラブルが発生した場合、またはトラブルが予想される場合には弁護士に相談するのが一般的です。

 

6.資産整理のために不動産を売却するときの注意点

 

迅速に資産整理をするためには、その資産について権利関係が明確であり、トラブルがないことが重要です。以下で詳しく述べますが、境界線について争いがないことや、売却したい不動産の名義が自己の名義になっていることなどに注意しなければなりません。

 

7.資産整理しようとする不動産土地の境界線で争いがないこと

 

境界とは、法的には不動産登記された土地の地番と地番の境目のことを言いますが、一般的には自分の土地と他人の土地との境目(隣地境界)、ならびに道路との境目(道路境界)の意味として使います。

土地建物を売ろうとした際、隣人の建物や建物の付属物が、敷地境界線を越えていたり、樹木の枝葉が隣の家にはみ出している場合や地下に埋設された水道管や配水管、ガス管などが他の敷地を通っていたりする場合に問題となります。

他人の物を勝手に売ることが出来ないため、このような場合、取引自体が難しくなってきます。

 

境界トラブルの解決方法として以下をご紹介します。

①境界問題解決センターへの相談

境界がはっきりしていないのであれば、土地家屋調査士に正しい境界線を確定してもらい、その結果、隣がはみだして使っている部分を隣地の所有者に買ってもらうなどの解決方法が考えられます。しかし、当事者同士で話し合ってもまとまらないとか、そもそも話し合いができそうにない場合には、専門的な機関の助けを借りることになります。

全国の土地家屋調査士会の運営する境界問題相談センター(地域によって名称は異なります)という相談所が各地あり、境界や隣接地をめぐるトラブルについて、土地家屋調査士と弁護士に相談することができます。土地家屋調査士と弁護士が協力し、円満な形でトラブルが解決するようサポートしてくれます。

 

②筆界特定制度の利用

筆界特定制度とは、法務局の筆界特定登記官が、現地の土地の境界を特定する制度です。原則として、境界がどこなのかを示す境界標の設置までは行いませんが、公的な判断として境界の位置を明確にできるため、トラブルを回避、または解決することにつながりやすいといえます。

しかし、この結果に不満がある当事者は,後述する境界確定訴訟を提起することができるため終局的な解決にならない場合もあります。

 

③裁判(境界確定訴訟)

境界問題を最終的に解決したい場合は、裁判所に境界確定訴訟を提起することになります。

この場合、自分と隣接地の所有者双方が主張する境界を示した測量結果、境界確定した経緯などを示す証拠を提出し、最終的には裁判所が境界を確定する判断をします。

 

8.資産整理しようとする不動産の土地に登記されていること

 

登記簿にはその土地がどこにあり、誰が所有者で、その所有者は誰から土地を譲り受け、この土地はどのように利用されているのかなど、その土地に関する重要な情報が記されています。登記簿は法務局の管轄で、手数料を支払えば誰でも閲覧できます。そのため、登記簿を見るとその土地の経歴が分かるため、その土地を買いたいと思う者は安心して取引関係に入ることができます。

土地を売却すると土地の名義が買主に移りますが、このときに行う登記が「所有権移転登記」です。不動産登記は売主と、買主が共同で登記申請をするのが原則であり、所有権を問題なく移転できるように、売主は買主に協力義務があります。

未登記の不動産でも個人間で売買することは可能です。しかし、未登記の建物の売買はトラブル発生のリスクが高いため、なかなか買い手が見つかりません。ここで、発生しうるトラブルについて具体的に説明します。

 

未登記建物の所有者である売主Aから、買主Bが未登記建物を買い受けて、その後、その建物に住んでいたとします。BはAからその建物について所有権移転登記を受けていないため、この建物の所有者であることを公示されていません。この取引関係を知らない第三者からすれば、Bは、誰が建物を所有しているかわからない建物に住んでいる人になります。

仮にこの状況で元の所有者であるAが所有権保存の登記をA名義で行い、他の誰かに、再度この建物を売却したとします。当事者間で有効に成立した権利関係を第三者に主張するためには登記が必要となります。そのため、新たな買主に所有権移転登記をされてしまうと、既に住んでいるBは新しい所有者に自分が所有者であると主張することが出来ず、立ち退かなくてはなりません。

 

このように、買主にとって登記のされていない未登記建物を買うことは大変リスクを伴うため、よっぽどのことがない限り、買主は未登記不動産を買うことはありません。

よって、迅速な資産整理をするためにも、自己名義の登記があることが必要となります。

 

9.売却しようとする不動産・土地の相続人の了承を得ていること

 

遺言書がなく、また遺産分割協議が行われていない相続財産は、相続人全員の共有(民法第898条)状態となります。その財産を利用・処分等する際には、全員の同意(民法第251条)が必要となります。したがって、相続人が複数いる場合、相続財産を売却したい場合には、相続人全員の同意が必要となります。

具体的には、不動産を売却する際に不動産業者と媒介契約を結ぶには、

①相続人全員が署名捺印する

②相続人のうちの1人が代表者となり、他の相続人が代表者に不動産の売却とそのための媒介契約の締結を委任(印鑑証明書付委任状)する、という2通りの方法があります。

 

10.まとめ

 

資産整理による不動産の売却は、目的も多岐に渡ります。また、どのような目的売却するかによって、売却時期も方法も異なります。そして、売却する際に、法的にトラブルが発生しやすい点に注意しなければなりません。

また、売却益がある場合には税金がかかります。しっかりと納税しながらも、自己の財産を守ることも大切になってきます。資産整理の目的に合わせて専門家や業者に相談することにより、自分の希望に合った資産整理を達成することができるでしょう。

 

11.さいごに

 

不動産の資産整理について網羅的に述べてきましたが、「どの専門家に相談すれば良いのか?」ということについては、事例ごとに異なってくるため断定はできません。しかし、まずは誰かに相談することが大切です。

例えば、司法書士は税金の相談は専門外なので応じられませんが、税金の専門家である税理士を紹介することは可能です。税理士は不動産の名義変更登記の相談は専門外なので応じられませんが、登記の専門家である司法書士を紹介することは可能です。

税理士・司法書士・弁護士等の士業は、自身のお客様のニーズにできるだけお応えできるように他の士業と必ず繋がっています。一人で悩まずにまずは専門家にご相談ください。

【弁護士監修】任意後見と法定後見の違い。できることは違うの?制度的な違いは?

超高齢化社会となり、判断能力を補う制度として後見の制度が注目を浴びています。この後見制度は、任意後見と法定後見の2種類があり、違いもあります。本記事では任意後見と法定後見の違いについてみていきたいと思います。

 

1.任意後見と法定後見の違いとは

 

任意後見と法定後見の違いを一言で言ってしまうと、任意後見は、将来後見人となる人を自分で選んでおくという制度であるのに対して、法定後見は、判断能力が低下してしまったあとに裁判所が選任するという点が違いです。

 

つまり、

・自分で後見人を選ぶ=任意後見人 

・裁判所が後見人選ぶ=法定後見(人)

ということになります。

なお、任意後見人と法定後見で出来ることの違い(権限)は、次の項目で述べたいと思います。

超高齢化社会により、人生100年時代と言われ、体はいつまでも元気という時代になってきました。しかし、心、脳については、まだ医療の進歩は必ずしも十分ではなく、認知症をはじめとする判断能力の低下については、完全に止めることはできません。

こういった時代では、ご自身が生涯をかけて築いてきた財産について、信頼できる後見人に財産管理を委ねる必要性が出てきています。これが後見人の制度がいま注目されている理由です。

 

2.任意後見人と法定後見のできることは違うの?

 

任意後見人の場合には、自分が将来判断能力が衰えてしまった時に備えて、事前に後見人を選んでおくことができます。そのため、どのようなことを後見人に託すか、つまり、後見人の権限については任意後見契約で決めておくことになります。

例えば、「相続税対策のために資産運用をすること」などといった、いわば財産の積極的利用も委ねることができます。つまり、任意後見人ができることは、依頼者である「あなた次第」で決めることができます。

一方で、法定後見の場合には、できることは法律で決められています。

法定後見では、補助人、保佐人、(成年)後見人という3つがメニューとして用意されています。補助人、保佐人、後見人の順で権限は広くなっては行きますが、基本的には、財産の現状を維持するという活動のみができます。

上で挙げた任意後見人に託すことができるような「相続税対策のために資産運用をすること」などは法定後見の場合にはできません。つまり、法定後見人ができることは、あなたの財産の現状維持ということに限られることになります。

この点は、実務ではたいへん悩ましい問題となります。

例えば、このままであれば、将来、相続税の負担が大きくなることが見えているのに、相続税対策として現金を不動産に変えることなどは法定後見人はすることができません。指をくわえて見ている以外のことはできません。法定後見制度の問題点として実務家が指摘する問題点の1つです

 

3.任意後見人の制度とは?

 

任意後見の制度は、すでに述べたように、ご自身の判断能力が十分ある時点で、将来の認知症などに備えて自分で将来の後見人を選んでおくという制度です。
ここでは、任意後見の手続き等について簡単にまとめたいと思います。

任意後見人を選ぶには、任意後見契約という契約を結びます。これは、公証役場というところで公正証書という書類を作らなければなりません。
任意後見人は未成年者や破産者など一定の場合を除けば、誰でも任意後見人になることは法律上は可能です。ただ、実際には次にあげるように司法書士などの専門家に依頼することが一般的には良いと言えます。

 

4.任意後見人を依頼したい場合には?

 

任意後見人には、成人であれば基本的に誰でもなれますので、ご自身が信頼できる人であれば誰でも構いません。一般的には信頼できる身内に依頼をして任意後見契約を締結することが多いのが現状です。

信頼ができて身内で世話をしてくれそうな方がおられれば親族に任意後見契約をお願いするという方法も十分に「あり」です。

 

ただ、後見人には後見監督人という「お目付」のもとで財産管理や身上監護などの事務を行わなければならず、(自分自身のお仕事などがありながら)ずっと後見人を続けることは一般的に難しいというのが現実です。

そこで、専門家に任意後見の契約を依頼するという方法もあります。後見は司法書士、弁護士、社会福祉士などの士業が主に携わっています。これら専門家の事務所を訪れて、任意後見の依頼をするのもひとつの方法です。

 

5.法定後見人の制度とは?

 

任意後見に対して、法定後見人の制度もあります。

法定後見人の制度は先に書きましたように、判断能力が衰えてしまった方に対して、親族等の申し立てで裁判所が選ぶものです。

法定後見については、補助、保佐、後見という3つのメニューがあるということは、先述べさせていただきましたが、実際には後見の申立が極めて多くなっています。

 

6.法定後見人とは?

 

法定後見人には、親族や士業が選ばれます。

平成28年の最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況」というデータによると、親族が選ばれるケースが約28パーセント、士業が約71%となっています。

そして、士業の中では、司法書士が約9400件、弁護士が約8000件、社会福祉士が約3900件となっています。

 

法定後見人については、法律専門家の中では司法書士が特に力を入れています。

士業の法定後見人は、業務の適正を守るために、裁判所からの監督に加えて、任意団体(例えば司法書士であれば「リーガルサポート」という団体)を作ってダブルチェックを行っています。法定後見人は、本人の財産を守るということが仕事ですので、財産を積極的に利用するなどの行為は、法定後見人の権限を超える行為となり、認められません。

なお、法定後見とも任意後見とも違う後見制度として市民後見人という制度もあります。

これは、親族でも、弁護士や司法書士等資格者でもないものの、社会貢献のために地方公共団体の養成講座などを受けた人が後見人となるものです。

上記の「成年後見関係事件の概況」ですと、市民後見人は200件ほどの利用例があります。

 

7.まとめ

 

本文で述べた任意後見人や法定後見人の違いなどをまとめたいと思います。

まず、任意後見人は、自分自身の判断能力が十分なときに、将来に備えてあらかじめ後見人を選んでおくというものです。方式は公正証書で行わなければなりませんが、後見人に委ねる権限は自分自身で選ぶことが可能です。そのため、資産運用などを依頼するということもできます。

これに対して、法定後見人は、判断能力が低下してしまった後に、親族の申し立てなどにより裁判所が選任するものです。後見人の権限は法律で決められており、おおむね、現状の財産管理に限定されてしまっています。

平成30年現在では、後見の利用はおおむね20万人程度です。しかし、実際に後見が必要とされているという方はもっと多いとされています。

にもかかわらず、後見制度の利用が促進されないのは旧制度の差別意識が残っているということも大きいと思われます。つまり、後見制度は、かつては禁治産者(きんちさんしゃ)という制度で呼ばれており、「自分自身で財産を管理する能力をなくしてしまった」という一種の烙印であり、「戸籍が汚れる」などと言われたいへん嫌われていました。

この禁治産者制度は、2000年の法改正により、禁治産者制度は廃止され、「自己決定の尊重、ノーマライゼーション」という積極的、前向きな理念に変えられました。しかし、理念の浸透がまだまだ追いついておらず、抵抗感が強いということが後見利用を妨げている一因と思われます。

今日の超高齢化社会で、財産管理に汲汲とせず、安心して人生を楽しむためには専門家の後見人を選任して、財産管理に縛られる人生を卒業するということが気楽で楽しい時間を過ごすことができます。

後見制度を前向きに捉えて積極的に利用すること(特に自分で後見人を選ぶことが出来る任意後見)も考えてみるとよいでしょう。

 

8.事案

 

 実際、弁護士等の専門家が成年後見人に就任するケースは、被後見人の財産が、家族の一部により使い込まれている、ないし、使い込まれる可能性が高いといったものが考えられます。こういったケースも、成年後見人が就任すれば、財産の使い込みを回避することが可能です。

 

【弁護士監修】孫に財産を贈与する方法とは?節税対策はできるの?

お孫さんに財産を残したいと思ったことがあるのではないでしょうか。

 

通常、財産をお子さんやお孫さんに受継ぐには、相続によることが多いと思います。

祖父母が財産を直接孫に相続させたいと考えても、子どもが元気でいれば通常の形では相続させることはできません。

 

1.孫に財産を贈与する方法

 

それでは、どうすればいいのでしょうか。まず考えられるのが、お孫さんに財産を贈与することです。

 

民法では、「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」とされています。
例えば祖父や祖母が所有しているワンルームマンションを孫にあげようと意思表示をし、孫がそれを受諾すれば贈与は成立します。

贈与には贈与税がかかりますが、いろいろな節税策もあります。これらについては後ほど詳しく述べます。

 

2.養子縁組を行うことにより、孫に財産を相続することができる

 

贈与ではなくお孫さんと養子縁組をすることにより相続させる方法もあります。

 

民法によると、相続人となれるのは被相続人の配偶者と子です。

お孫さんのご両親、つまり、財産を残すお祖父様、お祖母様から見てのお子さんが相続人となり、お孫さんに直接財産を相続させることはできません。

 

この問題を解決して、お孫さんに直接相続をさせる方策の1つとして、お孫さんと養子縁組をする方法があります。

民法では、「養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。」とされていて、孫を養子にすれば配偶者や子と同じ相続人となることができます。

 

相続税の計算上は相続人に加算される養子の数は、原則として、被相続人に実の子供がいる場合は1人まで、被相続人に実の子供がいない場合は2人までと限度がありますのでご注意ください。

また、孫を養子にした場合、2割加算といって、法定相続分に対する相続税額に2割の加算がされるので注意が必要です。

 

なお、孫を養子にした場合には、孫は子と同じ割合による法定相続分となってしまうため、子に残したいと考える財産割合と孫に残したいと考える財産割合が異なる場合には、遺言書に相続割合を記しておくのがよいでしょう。特に不動産などの現物での分割が困難な財産が有る場合には、どのように分割するのか予め考えておかないと子と孫との間に対立が生じてしまうことにもなりかねません。

 

3.孫に財産を贈与する時の節税方法

 

  3-1.基本的に暦年贈与により年間110万円までは非課税

贈与税は1年間あたり110万まで非課税とされています。そのため、この非課税枠を活用すれば、毎年110万円までの贈与については非課税措置を受けることができます。

毎年、この非課税枠の範囲内で贈与をすることで、結果として大きな節税効果を期待することもできます。

ただし、非課税枠の贈与を認めてもらうためには、110万円の贈与であったことを立証できるだけの証拠をきちんと作成しておくことが大切になります。

 

なお、贈与を受ける孫1人に付き、1年で110万円が非課税ということです。

1人の孫が、お祖父様、お祖母様それぞれから110万円ずつ贈与を受けた場合は、贈与額は220万円となり課税されますのでご注意ください。

 

  3-2.孫へ教育資金として財産を贈与することにより非課税にできる

教育にはお金がかかるので、お孫さんの将来のことを考えると教育資金をサポートしてあげたいと思うかもしれません。

そのような場合、お孫さんが高校や大学に通う目的のために必要な資金を贈与する場合に、1500万円まで非課税措置を受けることができる「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」制度があります。

 

この制度を利用する際の注意点として、現時点では平成31年3月31日までに信託会社との間の教育資金管理契約に基づき信託の受益権を取得するなどの手続きが必要であること、教育資金目的で贈与した財産については、贈与を受けた孫が30歳に達したときに、それまで教育資金目的で利用した分についてのみ非課税措置を受けることができることなどです。詳しくは国税庁のHPでご確認ください。

 

  3-3.孫へ結婚子育て資金贈与として財産を贈与することで非課税にできる

お祖父様、お祖母様から、20歳以上50歳未満のお孫さんへ結婚・子育て資金を贈与した場合、受贈者1人あたり、1,000万円までの贈与税が非課税となる「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税」制度があります。

この制度も平成31年3月31日までの間に、信託会社との間で結婚・子育て資金管理契約を結ぶなど、一定の手続きが必要です。この制度は贈与を受けた孫が50歳に達したときに、それまで結婚子育て目的で利用した分についてのみ非課税措置を受けることができますのでご注意ください。

 

  3-4.住宅取得資金贈与の特例を利用する

住宅の取得は、人生で一番大きな買い物と言われるほど、とてもお金がかかるイベントです。そんな時に、お祖父様、お祖母様から、お孫さんの住宅の取得をサポートしてさしあげると、お孫さんも大変喜ばれることと思います。

 

「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」制度は、お孫さんが、住宅用家屋の新築、取得、改築のための金銭の贈与を受けて、それを家屋の新築、改築に利用した場合、一定額を贈与税の非課税とする制度です。平成28年1月1日~平成32年3月31日の期間については、省エネ等住宅で1,200万円その他の住宅で700万円が非課税となっています。その後は年数を経るにつれ、順次非課税とされる額が減額となり、平成33年12月31日をもって特例は終了します。

 

この制度の注意点として、平成33年12月31日までの間の制度であること、金銭の贈与の目的が、住宅用家屋の新築、取得、増改築に限定されていることです。そのほかにも特例を受けるためにはいくつかの条件がありますので、贈与をされる前に条件を満たしているかどうかをきちんと確認することが必要となります。

 

  3-5.相続時精算課税制度を利用する

相続時精算課税制度は、「原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。」
贈与財産の価額の合計額が2,500万円以内の場合、贈与税が非課税となり、2,500万円を超えても一律20%の税率で済みます。

また、相続が発生した場合、この贈与税の課税対象から外れた財産についても調整され相続時に精算されることから、相続税が非課税になれば払った贈与税が返ってきます。

先に紹介した住宅取得資金贈与の特例との違いは、住宅取得資金贈与の特例は贈与した財産が相続財産の対象外になるのに対し、相続時精算課税制度は、実際に相続が発生する時に相続税で調整する制度であり、最終的には相続財産の一部になるということです。
制度の適用を受けるためには、財産を譲り受けた者がこの制度を選択する旨の届出書を贈与税申告書に添付することが必要であり、かつ、この申告は期限内に行分ければならないので注意してください。申告期限後に行われた場合には、相続時精算課税制度を利用することはできません。

 

4.孫へ財産贈与を行うときに弁護士に相談するメリットデメリット

 

お孫さんへ財産贈与を行う時に弁護士に相談するメリットとしては、法律の専門家に相談することで、より適切な制度を利用できることです。

 

法律や制度は理解が難しいことが多く、また、理解をしたとしても、書類を作成したり実際に申告することはとても大変な作業です。

弁護士に相談することで、どの制度を利用するかの選択、その後の書類作成や申告まで依頼することができるのは、大きなメリットだと言えるでしょう。

 

弁護士に相談することのデメリットは、やはり費用がかかることです。

一般的に弁護士に何か依頼する際の費用は高額なイメージがあると思います。

弁護士費用は弁護士ごとに異なるため、依頼する前に依頼しようとしている弁護士の費用についても調べてみましょう。

 

5.弁護士に相談するときにかかる費用

 

弁護士に相談するときにかかる費用ですが、初回相談は無料であるケースもあります。

各弁護士ごとに料金設定が異なるため、ホームページなどで料金について調べてみてください。また、注意点としては、相談と、実際に行う業務とでかかる費用が異なることです。

そのため、相談時に、実際どのくらいの費用がトータルでかかるのかも確認をするようにしましょう。

 

弁護士の費用を高額に感じることもあるかもしれませんが、実際に贈与の特例によって受けられる節税効果も考慮した上で、依頼するかどうかを決めると良いでしょう。

 

6.まとめ

 

以上のように、お孫さんに財産を贈与する際には、様々な制度を利用することで節税をすることが可能です。

 

ただし、ご自身の状況やどんな目的でお孫さんに財産をあげるかによって、どの制度を利用するのが適切かは異なります。

そのため、お孫さんに財産を贈与することを考えている場合には、どの制度を利用するのがいいのか、一度法律の専門家に相談してみることもご検討ください。

【弁護士監修】生命保険の受取人になれる人とは?保険金を受け取った人にかかる税金は

「ずっと当たり前のように支払ってきたけれど、生命保険の仕組みってどうなっているのだろう」とお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

生命保険はとても身近な保険商品ですが、実は、法律、税務で難しい問題がたくさんあります。本記事では、生命保険について、法律や税務の知識をまとめていきたいと思います。

 

1.生命保険人の受取人になれる人は?家族以外もなれるの?

 

生命保険は、契約者の方が亡くなった後に、家族がお金で困らないようにするためのシステムです。そのため、生命保険の受取人となることが出来る人は、基本的に身近なご家族に限ります。

 

具体的には、生命保険の受取人となることができるのは、基本的に以下の(1)と(2)の人です。

 

(1)配偶者(夫から見て妻、妻から見て夫)と、

(2)二親等の血族(子、孫、親、祖父母、兄弟姉妹)までに限ります。

ただし、二親等の血族がおられない場合に、三親等の血族(甥、姪など)を受取人として認めてくれるケースもあります。

 

やや難しい問題となるのが、内縁関係にある方の場合です。市役所に婚姻届けは提出していないけれど、ずっと同居されているような関係を内縁といいます。

 

内縁関係の場合には、

(1)お互い独身である。

(2)一定以上の期間、同居していて生計が一緒である。

この2つの条件が満たされれば、生命保険の受取人になることができる「場合がある」ということになります。

内縁関係の方が生命保険の受取人となれるかは、一概には言えませんので、保険会社の担当者の方としっかりと話をして、受取人となることが可能かどうかをしっかりと相談されてみてください。

 

いずれにしても、ポイントとなる点としては、生命保険の受取人は、身近な人に限られるということです。

 

2.保険金受取人はいつでも変更できるの?

 

保険金の受取人の変更は、いつでもできます。
受取人を変えるということは、生命保険契約の内容の変更ですが、しっかりと話をすれば契約に応じてくれないということはまず考えられません。
ただ、多少手続きが面倒なことになったり、費用がかかるなどの点は承知しておく必要はあります。

 

3.保険金受取人を変更するための手続き方法

 

保険金の受取人を変更するためには、

(1)変更のための書類を書くという手続き

(2) 公的書類を集めるという手続き

が必要になります。

担当者の人から話を聞いて、書類の記入と、必要な公的書類の収集をして手続きを進めましょう。

 

4.生命保険の受取人が死亡していた場合は?誰が受取人になれるの?

 

人生は何があるかわかりませんので、生命保険金の受取人としていた人の方が先になくなってしまうということもありえます。保険会社はこういったケースも想定していますので、生命保険金の受取人の方が先に亡くなった場合には、基本的には、保険契約書にかかれている「約款」(やっかん)のルールに従うことになります。

多くの場合には、受取人の変更の手続きをとることになります。ただ、万が一、保険契約の約款に何もルールがなかった場合には、保険法第46条という法律の条文によって処理されることになります。

保険法第46条

(保険金受取人の死亡)

保険金受取人が保険事故の発生前に死亡したときは、その相続人の全員が保険金受取人となる。

つまり、亡くなった受取人の相続人全員で分けることになります。

この場合の按分の割合は、いわゆる法定相続分で分けるのではなく、全員平等となるのが裁判所の考え方です(最高裁判所 平成5年9月7日判決)。

 

5.生命保険の受取人が税金を支払う場合は?種類は?

 

次に、将来、生命保険の受取人の方が保険金を受け取った時の税金はどうなるのでしょうか。

 

理屈上は、

(1)相続税がかかるパターン(契約者=被保険者、受取人=相続人のケース)

(2)所得税・住民税がかかるパターン(契約者≠被保険者、契約者=受取人のケース)

(3)贈与税がかかるパターン(契約者≠被保険者、契約者≠受取人)

がありえます。

 

どの税金がかかるかというのは、契約者と被保険者と受取人がそれぞれ誰かという組み合わせによって異なってきて、やや複雑になっています。

では、かかる税金の額の基本計算を見てみます。

まず、相続税がかかる場合には、保険金の額-(500万円×法定相続人の数)=課税される金額になります。

ただし、この場合には、他の遺産額もあわせてさらに計算をして相続税がかかるかの計算が必要になりますので、生命保険金だけでは課税されるかどうかまではわかりません。

例えば、土地家屋があるか、預金はいくらか、負債はあるかなどによって相続税がかかるかは異なってきます。

計算が複雑になりますので、税理士へ相談すべきケースです。

次に、所得税、住民税がかかる場合は、(死亡保険金額+配当金-払込保険料総額-特別控除50万円)×1/2で税金がかかります。これは、いわゆる一時所得となるケースです。

さらに、贈与税の場合には、保険金額―110万円(贈与税の基礎控除額)以上の額について、税金がかかります。

相続税と贈与税は、税率が高く、その上相続税は税金の計算が極めて難しいものとなっています。相続税、贈与税がかかりそうな場合には、税理士に相談されて、節税対策に取りかかりましょう。

 

6.生命保険は特別受益であるのか?

 

ここからは、少し法律的に込み入った内容となります。民法には特別受益という制度があります。非常に読みにくい条文ですが、民法第903条には「特別受益(とくべつじゅえき)」といって、以下のようなルールがあります。(第1項のみ)

 

(特別受益者の相続分)

「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。」

特別受益というのは、例えば、2人の娘さんがいる場合に、一方の娘さんだけに、結婚費用を出してあげたというようなケースをいいます。このような「特別ボーナス」をあげるということは、法律的には「相続分の前渡し」といわれ、生前に相続分をあげたと考えられており、相続の場面で、相続分が少なくなります。

生命保険金が特別受益になるかどうか(つまり、生命保険金を受け取った相続人は相続分が少なくなるか)については、よほど特別な事情がない限りは、特別受益にならず、相続分には影響しないとされています。

この問題点は法律的には平成10年代から様々な裁判例がでていて、法律的には興味深い問題点ですが、あまり考えなくとも大丈夫と言えます。

 

7.生命保険は相続財産であるのか?

 

生命保険は相続財産(遺産)には含まれません。生命保険は、保険料支払いの対価としてもらうことができるものであって、遺産とは別のものであると考えられているためです。

 

だだし、生命保険金がかなり高額な場合で、相続財産が低額な場合、すなわち、相続財産が500万円しかないのに、一部の相続人が,3000万円の生命保険金を受領しているなど、保険金受取人である相続人と他の共同相続人との間の不公平が、是認できないほど著しいと評価できる特段の事情がある場合には、生命保険金は特別受益に準じて持ち戻しの対象となる場合があります。これは,様々な事情を総合的に考慮して決まることなので,割合的な問題だけで決まるわけではありませんが,もし,そのような事案に遭遇したら,持ち戻しを主張してみるのが良いでしょう。

 

8.生命保険受取人と遺産相続の関係は分けて考える必要がある

 

上の7の内容とつながりますが、生命保険の受取人は、保険料支払いの対価として保険金を受け取りますので、保険の受取と遺産相続のについて民法が決めている相続のルールとは基本的には切り離して考えましょう。

例えば、預貯金が1000万円あって、受取人が受け取る保険金が500万円であったとしたら、遺産は1000万円として相続の関係を考える必要があります。

実は、弁護士や司法書士が勉強をしてきた、純粋な法律についてのルールと、保険のルールは、若干違う面がかなりあります。

そのため、法律手続き(遺産分割や登記など)は弁護士や司法書士が詳しいのですが、生命保険のルールについては保険会社の方が詳しいということがよくあります。(もちろん、生命保険についても大変詳しい弁護士、司法書士もいますが)

実際、多くの弁護士・司法書士は保険会社の人などとお互いにネットワークを作り、お互いの得意分野を補っています。詳しいことは専門家に任せるとしても、純粋な法律問題と保険は若干違うという意識を持たれると相続に関する法律や保険の知識ががわかりやすくなります。

 

9.まとめ

 

本文で述べさせていただいたことのポイントまとめていきたいと思います。

生命保険の受取人は、身近な人に限ります(妻、夫、子、孫、親、祖父母など)。内縁関係の場合にはケースバイケースとなります。

また、生命保険については相続税、所得税、贈与税といった税金がかかることがありますが、ケースごとに大変複雑となりますので、この点は税理士事務所を訪ねることが重要です。

 

生命保険は目に見える形で遺族に残せる「プレゼント」です。しっかりと節税をして、将来、家族が安心して生活できるようにしてあげてください。